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今となってはもう、その兄さんもいないのだが……。
ーーガタンッ
突然、体に伝わった大きな振動が乱雑に俺を夢から現実へと呼び覚ます。
目の前が黒で覆われていた。
驚いていると、頭上から声が聞こえた。
「ん?おはよう」
声のする方を見ずとも、この声が主炎の物である事はすぐに分かった。
最悪だ。
敵の腕の中でうたた寝など、言語両断。
寝ている隙に何をされたのだろう。
最悪の場合ばかりを考えてしまい、血の気が一気に引いた。
「おはようございます。申し訳、ございません」
至って冷静を装いつつも、俺が寝た。と言う事実によって怒られる可能性を考えてしまい、咄嗟に謝罪の言葉が出てくる。
主炎は何も言わなかった。
ただ、少しだけ視線を俺からずらして、下を見た。
その無表情の瞳の奥で、何を考え、何を思っているのか、初めて会った時から何一つわからない。
彼の温もりが、優しさが、心に染みた。
俺の体調が一切良くない事を知っていてか、主炎は一向に俺を歩かせようとしない。
そのまま俺共々、元いた場所とは比べ物にならない程大きな家へと入った。