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1時間目が終わった休み時間、やっと話しかけることに成功した。
「えっと、あの…」
話しかけることには成功したが、その後を知らない。会話をどうやって始めればいいのか。いつもの奏茉達との会話を思い出してみる。が、ほとんど私は聞き役に回っているので話し初めとかよく覚えていない。
「アイラって名前」
雰囲気を察してくれたのか、ただの気まぐれか、転校生の方から会話を始めてくれた。
「ジャパニーズには珍しいよね!」
「あ、うん。そうなんだよね」
「なんか、意味とかあるの?」
首を傾げながら聞いてくる転校生。その質問に首を傾げた。
「意味って、聞いてどうするの?」
私の質問に質問で返した会話に転校生が目を丸くする。ただでさえ大きい目なのにこぼれ落ちそうだ。
そんなことを思っているうちに、私ははッとした。名前の意味を聞くことになんらかの意味を持たせている小学生がいるはずない。ただ純粋な気持ちで聞いただけだろうに、なんでそこまで私は追求してしまうんだ。私から友達が減っていく原因だ。
奏茉や空茉は私のこの返しを何回も受けてきた。空茉はともかく、奏茉はいつもなんとなく!で流してくれていた。この子はそうもいかない。どうするか、なんでもないと笑って誤魔化すか。それともこの場から、逃げてしまうか。
「ダッドがね、教えてくれたの。日本人の名前には意味があるんだよって。海外だとそんなの珍しいからさ」
頭の中の思考を、よく通る声で切り裂いてくれた。初めての感覚だった。私の質問にちゃんと答えてくれるその、会話って感じが。
「そうなんだ。えっと、私の相羅って字はね、漢字を見てるの」
「カンジ!ワタシ大好きカンジ!」
必ず相槌を打ってくれることに少し安心しながら、わかりやすい日本語で喋ってあげる。
「まず相。互いにとか組の中でちゃんと向き合ってって意味を持ってるの。そして羅」
「ディフィカルトなカンジ!」
「これは薄い織物、薄物って言う意味があるの。この二つを合わせて、相羅。お母さん達はね、薄い織物みたいな関係でも互いに向き合える。そんな、寄り添える子になって欲しいって言う意味を込めたの」
「へぇー!やっぱり良いね!ジャパニーズ」
転校生の言葉に私は頷く。
こうやって自分の口から出すと、やはり良い名前をもらった。最初はノリでつけたみたいな名前だと思って、これを欠点としか見ていないかったが、私の1番大切なものでもあるのかもしれない。
「アイちゃん」
まさかのあだ名にびっくりする。私は今まで相羅としか呼ばれた事がないから。
「私のことはキャシーって呼んで?」
「うん。キャシー」
なんだか、むず痒い空気に2人で笑う。女友達、良いかもしれない。
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