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上野文
9,610
都築七美
278
てく
1,872
「そうやって、言っていただけると嬉しいです。蛇珀様はずるいですから」
「ず、ずるい? 俺がか?」
「はい。だって蛇珀様は私の気持ちを読めますけど、私は蛇珀様の気持ちを読めませんから。いつもいいなぁ、でもちょっとずるいなぁって思っていたんです」
少し拗ねたようにふっくらとした唇を尖らせるいろりに、蛇珀は「ずるい」と言われているにも関わらず可愛いという感情しか湧いてこなかった。
「わ、悪いな。なんつうか、その……思ったことを口に出すのが苦手なんだよ……これからは気をつける」
「……ふ、ふふ」
「……いろり?」
「冗談です。蛇珀様が私が来たことにも気づかず考え事をされていたので、少し意地悪をしてしまいました」
普段穏やかないろりの悪戯っぽい笑みの破壊力は凄まじかった。
「蛇珀様はそのままでいいです。私が、口に出されなくても、蛇珀様の気持ちを汲めるようになればいいだけですから」
なぜこの娘はここまで受け止める器が広いのだろうと、蛇珀は未だ毎日のように驚かされていた。