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縁en
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#YJ
みー
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さざなみ

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前中後の3話予定。
学パロ(高校生)snjn 前編
昼休みが始まる鐘が鳴った。4限目に使っていた教科書やノートを引き出しに押し込んで、スマホのメッセージアプリで「今日居るね」というメッセージに対して「今から向かう!」と送る。急ぎ足である場所へ向かった。いつもの待ち合わせの場所。この時間があるから学校が楽しいようなものだった。
「仁人!こっち!」
「ごめん、おまたせっ」
「大丈夫、俺も来たばっか」
立ち入り禁止のロープを慣れたように潜り抜けた先に屋上へと続く踊り場があり、薄暗いそこは屋上の扉から光が差し込んでいた。
「あー体育サッカーかったるかったー」
「勇斗、ゴール決めてたね」
「えっ!なんでわかんの!」
「ふふっ、教室から見えてたよ」
「まじ?恥っず」
踊り場に見つからないように2人並んで座り込んでお弁当を広げていた。とはいっても、彼、2つ学年が上の3年生佐野勇斗は購買で買ったパンを頬張っていた。
「仁人えらいなー相変わらずお弁当ちゃんと毎日自分で作って」
「簡単なものだけどね、今度教えようか?」
「いや〜料理はなぁ…」
苦手そうなのが表情から見て丸わかりでくすくす笑ってしまう。こんなにかっこいいのに、苦手なものやっぱりあるんだ。また新しい一面を知ることができた。そんな憧れでもあった彼とまさか友達になれるなんて思ってもいなかった。つい半年前までは。
そもそもの最初の出会いを勇斗はきっと明確には覚えてはいないだろう。彼にとってはきっとたいしたことではない。でも自分にとってはとても大きいことだった。
あれは半年前、入学して数日後のある日、課題をやるのに必要な教科書を忘れてしまい、取りに教室へ戻って行った時のことだった。
もう夕方過ぎで、当然誰も薄暗い教室にはいなかった。少し怖くて早足になる。
さっさと帰ろうと教科書をカバンにしまい、急いで教室を出た。
「…ッうわ、」
「……!?」
ドンッと体に衝撃。誰かにぶつかった。
ドサッと派手に廊下に転んでしまう。
カバンの中身もとっ散らかってしまった。まさか教室から出た先の廊下にこの時間に誰かが居るだなんて想像していなかった。
「……っい、った…」
「わ、わり!急に出てくるもんだから、避けきれなくって…」
「…いえ!…確認しなかった俺が悪いんで…」
転んだ体制のまま散らばった自分のものたちを急いで拾う。
「大丈夫か?」
ふと差し出された大きい手。
顔を上げる。はじめて彼と視線が合った。吸い込まれそうなほどの綺麗な瞳だった。
「派手にぶちまけたなぁ」
くしゃりと笑った、その表情。
「(ーーーー…ぁ、)」
この瞬間、恋に落ちた。
※
「ーー無い」
あの人に一目惚れした日から数日後。
誰もいない放課後の教室。
探し物をしていた。
あったはずの生徒手帳が無い。
ブレザーやズボンのポッケ、カバンの中も引き出しの中もくまなく探した。
「…最悪だ」
入学したその年に生徒手帳を紛失だなんて印象悪過ぎる。もう探す気力も起きなくて不貞腐れて帰ろうとしたその時だった。
「おーいたいた、吉田仁人くん」
ガラッとドアを開ける音がした。前の入り口から現れたのは先日ぶつかってしまった人だった。
実はあの日、名前を聞き出せずにそのまま別れてしまい名前を知れないでいた。名前すら聞けないでいる情けない自分に腹が立っていたが、とんだ急展開。
「これ。この前拾いそびれていたやつ」
「あ…」
渡されたのは探していたものだった。
「あ、ありがとうございます!探していたので、助かりました…」
「いいよ敬語なんて」
じゃあなって軽く手を振りながら去ろうとする彼。この機会を逃したら、今度はいつ校内で見かけるのかわからない。
ぎゅっと受け取った生徒手帳を持つ手に力が入る。名前を聞きたい。勇気を出せ。
「…っあの、」
「ん?」
「名前、聞いてもいいですか?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
こくん、と首を縦に振る。
「佐野勇斗、3年」
「さのはやと…さん」
「勇斗って呼んでね♪」
「そんなっ、先輩を呼び捨てなんて…」
「あはは、真面目だねー仁人は」
名前、呼んでくれた。
どきどき…鼓動が激しくなる。
喉が詰まって呼吸が上手くできない。
苦しい。
彼がポケットからスマホを取り出した。
「これも何かの縁だし連絡先、交換しよっか」
なにか困ったことあったら連絡ちょうだいね、と言ってくれた。
連絡先を交換した後、この後部活があると言うので彼は行ってしまった。
へにゃ…と体の力が抜けてその場に座り込んでしまった。
顔が熱を持ってることに気づく。
手が少し汗ばんでいて、緊張していたことがわかる。
「はやと…」
どうしようもなく、好きになっている。
※
あれから特に進展はなかった。
あの日の夜、メッセージで「吉田です。よろしくお願いします。」と送れば「全然タメでいいよ、よろしくね」とメッセージとクセのあるスタンプが送られてきて、なんて返事をしたらいいかわからず、結局そのままになってしまった。
そこから連絡がくることもなかった。
窓際の席から見える澄んだ青空の下、グラウンドでは3年生の男子が体育の授業でサッカーをしていた。なぜ3年生だとわかったかというと、勇斗がいたからだ。
素早い動きでパスを出したり、時にはゴールを決めたり、一生懸命やってる姿がとてもかっこよかった。授業に集中しなくちゃと思いつつ、横目でつい勇斗の姿を追ってしまう。ノートの端っこに彼の名前を書いたなんていうのは自分だけの秘密。
昼休み。友達という友達はいなかったのでいつもひとりでお弁当を食べていた。お弁当を広げようとした時、スマホが震える。確認するとなんと勇斗からメッセージがきていた。
『よかったら飯一緒に食べない?』
「……え?」
なんとお誘いのメッセージだった。
※
「おーい、仁人、こっちだよ」
ひっそりとした声で呼ばれる。
ひょこっと顔を見せてくれた勇斗はちょいちょいと手招きしてくれた。
「ごめんなさい、お待たせしちゃって…」
「いいって、気にすんな」
「ここ、初めてきました」
「みんな真面目だからさー立ち入り禁止とか書いてあるところには来ないんだよ」
漫画やドラマのように屋上へ出入りは鍵が掛かっててできない。なのでその手前の電気がつかない踊り場は階段が上手く死角になっていて、勇斗のお気に入りの場所らしい。
ふたりで並んで座り込む。
距離が近くて、ドキドキする。
「仁人がはじめてだよ、教えたの」
「…なんで…?」
「ん〜仁人だからかな」
「………?」
「あはは、そんなきょとん顔するなよ」
飯食おうぜ、と勇斗は購買で買ったであろうビニール袋から惣菜パン数個出してくる。自分は毎朝作ってるお弁当を出せば勇斗から驚きの声。
「いつも弁当なの?」
「はい、毎朝自分で…」
「はぁー?えらいな、主夫じゃん」
「そんなことない…」
褒められるのはどうもくすぐったい気持ちになって嬉しい反面、ちょっと苦手。
でもにやけているのがわかる。
「かわいい」
「……えっ」
「仁人、もっと笑えばいいのに」
この場所が薄暗くてよかった。
そうじゃなきゃ、きっと真っ赤になっているこの顔が勇斗にバレていたと思う。
この日を境に、週に何回かはこの場所で会うようになった。ふたりだけの秘密。
前編 終
コメント
1件
あおいです、読ませていただきました🌷 「この瞬間、恋に落ちた」——この一文、すごく好きです。夕方の薄暗い教室、ぶつかった衝撃、差し出された手。全てが一瞬の出来事なのに、仁人くんの心の中ではあの瞬間が永遠に止まってる感じがしました。生徒手帳を届けに来てくれた勇斗くんの「仁人って呼んでね♪」が、なんというか…距離感が絶妙でドキドキしました。ふたりだけの秘密の踊り場、もっと読みたいです😊