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ドク…ドク…と、俺の心臓が
鼓動を強めていくのを感じる。
理由はこの時はまだわからなかった。
桜の蕾が膨らみ始めた、
高校1年生の3月頃のこと。
俺は蒼ちゃんと2人で、静まり返った
教室に残っていた。
「ごめんねッ、書くの忘れててさ〜ッ!」
すぐ終わらせるから、と
蒼ちゃんはペンを一生懸命動かしている。
今日蒼ちゃんは日直だから、
日誌を書かないといけない。が、
それを忘れていたらしく、今に至る。
机を1つ挟んで向かい合わせに
座っていたから、蒼ちゃんの綺麗な顔が
よく見える。
真っ白で透き通った肌は、
俺の目線を捕まえて離そうとしなかった。
「ここって何書けばいいんだっけ?」
「…ん、どれどれ?」
そう言って、俺は日誌を覗き込んだ。
すると必然的に、蒼ちゃんの顔と
俺の顔との距離が一気に近くなる。
このままキスできるんじゃないか。
なんて、やましいことを考えてしまう。
そして俺の心臓の鼓動はますます
大きくなっていくばかりだった。
「…ここは〜…、何か行事があれば書く
だけだから、書かなくていいよ〜!」
「あ〜ッ!なるほど、ありがとッ!」
ふにゃっと笑う君。
そして、暖かい光がその笑顔を照らす。
その光景は何よりも美しかった。
何もかもが愛おしかった。
気がつけば俺は、蒼ちゃんの手を
ぎゅっと握っていた。
そしてつい口走ってしまった…、
「好き…。」
自分でも訳が分からなかった。
好き…?自分は男で、蒼ちゃんも男。
本当に俺は蒼ちゃんが好きなの?
だけど、蒼ちゃんを見ていると
胸がきゅぅっとなって…、
ずっとこのまま一緒にいたいって
思うのは確かだった。
俺…、蒼ちゃんのこと好きなんだな。
この時、初めてこの感情を理解した。
「えッ…えっと…、どういうこと…?
それって…恋愛的に好きってこと…だよね?」
蒼ちゃんが俺よりも動揺していることは、
その様子を見てすぐにわかった。
少し頬を赤らめて、言葉も辿々しい。
「…うん。」
俺はただこくりと頷いた。
あぁ、俺…、告白したんだな。
そんな実感が今頃になって湧いてきた。
それと同時に、耳が燃えるように熱くなる。
「…じゃあ、付き合う?」
蒼ちゃんは笑ってそう言った。
この日、俺達は秘密の恋を始めた。
NEXT ♡200
前回予想以上に早く♡100近く行ったので
今回は少し多めで…!
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