テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
昨夜の熱情を物語るように、身体の節々に心地よい倦怠感が残っている。
目を覚ますと、隣にいるはずの瞬くんの姿がなく
キッチンから香ばしいコーヒーとトーストの香りが漂ってきた。
「……おはよう、瞬くん」
彼のTシャツを借りて、ふらふらとリビングへ向かう。
そこには、エプロンをつけた彼が、手際よく目玉焼きを焼いている背中があった。
「おはようございます、凛さんって、えっ?その格好…っ」
振り返った瞬くんの視線が、私の細い足や、ぶかぶかの袖口に注がれる。
私は恥ずかしくなってエプロンの紐に手を回し、彼の背中に顔を押し当てた。
「…なによ?あなたが昨夜、私のパジャマをあんなにしたせいでしょう」
「あはは、すみません。……でも、そんなに無防備に近づいたら、朝食のメニューが変更になっちゃいますよ」
彼は笑いながら、私をくるりと正面に向け、キッチンのカウンターとの間に閉じ込めた。
焼きたてのパンの匂いよりも、彼のシトラスの香りが鼻腔をくすぐる。
「…ねえ、凛さん。これ、昨日の『お返し』です」
「お返し……?んっ、」
彼が私の首筋に顔を寄せ、吸い付くように唇を押し当てた。
チリッとした微かな痛みのあと、熱い痺れが走る。
「……っ、待って、瞬くん! 今日、会社……」
「わかってますよ。だから、髪で隠れるギリギリのラインにしておきました……でも、鏡を見るたびに俺のこと、思い出してくださいね?」
鏡を覗き込むと、そこには淡い赤紫色の、鮮明な「印」が刻まれていた。
隠しているようで、実は彼にしか分からない独占の証明。
「……意地悪ね、本当に」
「ひどいな。溺愛してるだけなのに」
彼は満足げに笑うと、私の額に軽いキスを落とし、お皿をテーブルに運んでいく。
かつて一人で食べていた、味気ない朝食。
今は、目の前に愛する人がいて、首筋には彼が刻んだ熱が残っている。
その「重さ」が、今はたまらなく愛おしくて
私は隠しきれない笑みを浮かべながら、彼が淹れてくれたコーヒーに口をつけた。
おまる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!