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「Hey!! Good morning だぜBrother!! Hey!! Wake up!!
Hey!! Good morning だぜBrother!! Hey!! Wake up!!」
独特なアラームで目を覚ます居酒屋「命頂幸(しょく)」の店長、神羽(じんう)。
「んん〜…。なんだよぉ〜…」
スマホに手を伸ばす。時間を確認する。お昼の12時半。
「まだ昼じゃんかぁ〜あぁ〜…」
しかし、アラームのタイトル「面接日」という文字が画面に表示されていて
「おぉ。そっかそっか。今日面接日だ」
と思い出す。
「危ない危ない。だからアラームかけてたのか」
普段ならアラームなどかけない。気ままな時間に起きて
お昼ご飯を居酒屋の新しいメニューにできないか。などの点を考えながら作り
試行錯誤する時間が好きだったりするのである。
「今日はテキトーに作っちゃいますか」
と言いつつもネットでレシピをいろいろと調べ
割と時間をかけてお昼を作って食べ、服を着替えてお店に向かった。
鍵を開けて中に入り、店内のライトをつける。
まだお昼で、雨も降っていなければ、曇ってもいないお日様さんさん陽気とはいえ
お店には窓もなく、陽の光が差し込むといえば出入り口のすりガラスくらい。
しかしそんなところから差し込む陽の光などでは店内は暗いまま。
なのでお昼であろうが朝であろうが店内のライトは必須でなのである。
「面接の方が来たらここに座ってもらって、オレがこっちに座って。あ、その前に水か。お茶か?
で、履歴書もらって。ま、ぶっちゃけそんな気にしないけど。で、いろいろ話して。かな」
と1人でうろちょろ動きながらシミュレーションする神羽。
何度かシミュレーションしていると開きっぱなしにしていた出入り口のところに
入ろうか、入らまいかと悩んでいる女性の姿が見えた。
「お」
気づいてはいたが、あえて声をかけず神羽も気持ちを整える。すると意を決めたのか
「あ。すいません。本日面接…の者なのですが」
とスーツ姿の女性が恐る恐る入ってきた。
「あぁ!どうも!あ、どうぞ。こちらに」
神羽はシミュレーション通りに女性を席に案内する。
「あ。すいません」
「あ、座っちゃっててください。お水かお茶、どっちがいいですか?」
「あ、すいません。じゃあお茶を、お願いします」
「はい!」
神羽はグラスにお茶を入れて席へと持っていく。すると座っていた女性が立ち上がる。
「ありがとうございます」
「あ、いえいえ。座ってください」
改めて言うと女性が
「失礼します」
と言って座った。神羽も座る。
「えぇ〜。じゃあ。よろしくお願いします」
神羽が頭を下げる。
「あ、よろしくお願いします。本日はお時間を割いていただき、ありがとうございます」
と頭を下げる女性。
堅っ
と思う神羽。
「いえいえ。まあ、全然そんな。あの力抜いてもらって。そんなかしこまんなくていいので」
「あ。はい。…あ、これ。履歴書なんですけど」
女性がクリアファイルから履歴書を出す。
「あ。すいません。頂戴します」
受け取る。そしてザッっと眺める。
「金城崩(かなしろほう) 夏芽(なつめ)さん。珍しいお名前ですね。苗字が」
「あ。はい。そうですね。よく言われます」
「あ。えぇ〜。あ、20歳(ハタチ)!?若ぁ〜」
「あ。はい」
「沖縄県蛇茂(へびしげみ)?高校?」
「あ、じゃんもって読むんです」
「蛇茂(じゃんも)。へぇ〜。あ、ていうか沖縄?」
「はい。沖縄県出身です」
「へぇ〜」
と言った後、右斜め上を見て
沖縄県出身か。沖縄の料理とかいいかもな
と思い
「あ、いいかも」
と呟く。さらに履歴書を見進める。
「あ、大学在学中なんですね」
「はい」
「なーるーほーどー」
神羽は履歴書の左を見終え、右に移る。備考欄。
音楽を聴くのが好き。ほお。うちにバンドマンいますからねぇ〜。
ぎおちんとは話合うかもなぁ〜。20歳(ハタチ)ねぇ〜。
梨入須(ないず)と歳近いけど…人見知りの梨入須と仲良くなれるかどうか
と思うものの、面接の話が出たときに、すでに採用する前提で心を決めてはいた。
「音楽好きなんですね」
「あ、はい。結構知ってるほうだと思います」
「ちなみに好きなアーティストさんは?」
「そーですねぇ〜…。うぅ〜ん。…」
「好きなアーティストが多すぎて決められない感じですか」
「そ う で す ね。アイドルだとWESICKとかMVPとかRIZZとかWithlife、※fictions※。
あとA childish adultとLIGHTING RIGHTSとか※祭乃華※とかその姉妹グループ、♫風ノ音♫とか。
あとはそうですね。Zzzzz夢の中zzzzZとかRing-win-ringとかIKYKYとかA phantom treeとかGoalsとか。
バンドとかだったらFACTsとか1 sturdy arrowsは有名ですよね?
あとここで活躍しつつもグループにも所属してる感じだとAWESOME OOPARTSとか
SPECULOとか来世から仕事します!とかTrue Kingとか」
「すごい。めっちゃ知ってるじゃないですか」
「いえいえ。あ、最近だとreplicestsっていうMyPipeで人気が爆発したグループというか
個人でも活動してるチーム?みたいなのがいるんですけど」
「はいはいはい!知ってます!ドラマの主題歌担当してた」
「それです!基本的に個人個人で活動してるんですけど
たまにreplicestsのチャンネルで歌ってみたでコラボしてたりとか
個々のファンはもちろん、replicests自体のファンも歓喜するんですよね」
「なるほどぉ〜。うちの従業員にも音楽好きっていうかぁ〜…がいるので、話は合うかもです」
「あ、そうなんですね」
「バイトは週どれくらいをご希望ですか?」
「そうですね。週3ほど入れればと思っております」
「週3ですね」
履歴書に黒ボールペンでメモしていく。
「ご希望の曜日なんてあります?一応うちは個人経営になるんで
週7やってるので、ある程度ご希望通りにできるとは思うんですが」
「一応前期の講義的には、えぇ〜…月、火、木をお願いしたいのですが」
「月、火、木ですねぇ〜」
黒ボールペンで履歴書にメモしていく。
「そうだ。普段料理ってされます?」
「あ、はい。一応。そんなに手の込んだものはできませんけど」
「沖縄ならではのものって作ったりします?」
「一応。簡単なのは作りますね」
「たとえば教えてもらっていいです?」
「まあ、本土でも有名だと思うんですけどゴーヤーチャンプルーとか」
「おぉ。なるほど。やっぱ発音違うんですね。発音というかイントネーションかな?」
「そ うですかね」
「チャンプルーのとこが」
「あ、そうなんですね」
「ゴーヤは買って、ま、当たり前ですけど、買って和えてって感じですか?」
「あ、いや、まあ。あ、でも実はゴーヤーは苦手で」
「え?」
「いや、こっちの方(本土の人間)にはゴーヤーチャンプルーのほうが伝わりやすいかと思いまして」
「ほお」
「本当はソーミンチャンプルーをよく作るんです」
「ソーミンチャンプルー?初めて聞いた」
履歴書にメモする神羽。
「ですよね」
「ソーミン?チャンプルーってどんなんなんですか?」
「そうめんを使った…なんていうんだろう。
そうめん版のゴーヤーチャンプルーみたいなやつです」
「おぉ。はあ、なるほど?ソーミンがそうめんなんだ?なるほどなるほど。美味しそうですね」
「美味しいです」
ここまでは完璧に近い。そろそろ最終試験とぉ〜…参ろうか?
と変なカッコつけ方を心の中でする神羽。
「めちゃくちゃ関係ないんですけど」
「はい」
「ドリンキングバードって知ってます?」
「ドリンキングバード?…うぅ〜ん。すいません。聞き覚えはないです。どんなのですか?」
はい!合格!
と心の中で、あくまで心の中で夏芽を指指す神羽。
「なんか鳥の…オブジェ?で水飲んでる風の…」
と言いながらスマホで検索して画像を見せる。
「こんなやつです」
「あぁ!なんか見たことあるかもです」
「お!マジっすか。いや、常連さんが」
と少しばかり常連さんの話をした。
「すいません。ちょっと脱線してしまって」
「いえいえ全然。楽しそうだなって思いました」
「じゃ、ま、面接はこんな感じで」
「はい。ありがとうございました」
立ち上がる夏芽。
これが念押しの最後
と思っていると
「すいません。お茶ありがとうございました。
グラス、どうしたらいいでしょうか。流しに置きに行ったほうが」
と夏芽はグラスを持ち立ち上がる。
「合格!」
つい口をついて出た。
「え?」
「合格です。ぜひうちでバイトしてください」
「え。もう合格ですか?」
「はい。もう素晴らしい!人間性が抜群!バッツグーン!です」
「人間性?」
「はい。いや、うちの常連さんの奥樽家(オタルゲ)さんの紹介だったじゃないですか?」
「そうですね。紹介というか、おすすめしていただきました」
「奥樽家さん本人がいい人だから、紹介してくださるバイトの方もきっといい人だろうなと思ってたんですけど
でも、前も常連さん本人はいい人なんだけど「うちの息子バイトで雇ってくれない?」って言われて
面接したんですけどね?息子さんは全っっ然いい子じゃなくて。
あ、すいません。あのドリンキングバードの話は試させてもらったんです」
しっかり頭を下げて謝る神羽。
「え?試す?あ、いえ。あの、謝らないで、ください」
「いや、うちの、特に常連さんは四、五、六十代の方が多くて
まあ、全然知らなくてもいいんですけど、こう、なんていうんですかね。
話を弾ませるというか、気持ちよくお酒を飲んで、料理食べてもらうためにも
知らないです。ジェネギャですね。で終わらせちゃダメなんですよ。
最近のテレビであるじゃないですか?○○世代VS○○世代みたいな。
そこで若いしか取り柄のないタレントとかモデル崩れが「えぇ〜、知らなぁ〜い。ウケるぅ〜」とか
バカなリアクションしてるじゃないですか?」
「あぁ。ありますね」
「あれじゃダメだし、礼儀もなってない。
そう。それこそ常連さんの息子がそうでね。「いや、知らんす」で終わり。
で、グラスも片付ける素振りもなくて、常連さんの息子さんだろうが、容赦なく不合格。
でも金城崩(かなしろほう)さんは、もう、バッチリ!ぜひうちで働いてください」
「あ、いえいえ。いいんですか?」
「もちろん!よろしくお願いします」
と神羽が頭を下げる。
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします」
夏芽も頭を下げる。
「じゃ、すいません。LIME教えてもらってもいいです?」
「あ、はい」
2人ともスマホを出して連絡先を交換する。
「改めまして。天鳥(あまどり) 神羽(じんう)です。ここの店長?をさせてもらってます」
「こちらこそよろしくお願いします」
「あ、一応店長ですけど、24歳なんで、そんなに店長!って感じにしなくて全然いいので。
いずれは友達感覚で接してもらえたらと思ってます」
「え。あ、24歳なんですね。すごい。お若くして自分のお店を」
「そうですね。恵まれてましたね」
ということで面接は終わり。夏芽を見送る。
「では、シフトはLIMEで確認とかいろいろさせていただきますので
よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、これからよろしくお願いします」
「では、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
夏芽が一礼してお店を出ていく。神羽がカラガラカラ。と引き戸を閉める。
「ふぅ〜…。緊張したぁ〜!…でもいい子だったな。一緒に働くの楽しみだな」
ということで居酒屋「天神鳥の羽」に新人が入ることが決定した。