コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私
にはもう何も残されていない……。そう思っていた。だが、この世にはまだ私を必要としてくれる者がいるようだ……。
それは、私にとって大きな救いとなるに違いない……。
君よ、君の愛はどこにあるのか? 君は私を愛していると言ったはずだ! ならばなぜ私を見捨てるのだ? なぜ私を助けようとしない? 私を裏切ったその手で、今度は私を救うつもりなのか? 君が私を救ってくれると本気で信じていたわけじゃないさ……。
しかし、それでも私は君を信じたかった……。
だがそれももはや叶わぬ夢となってしまったようだ……。
ならばいっそこのまま死んでしまおうか? それとも君に復讐してやろうか? あぁ、わかってる。
こんなことをしても意味がないということぐらいわかっていた。それでもやめられなかったのだ。そうしなければ自分が自分でなくなってしまうような気がしてならなかったから。
だから僕は今日もまたこの行為を繰り返す。もうすっかり慣れてしまったせいか特に抵抗もなく手に力がこもりナイフが深く突き刺さっていく。その瞬間だけは少しだけ嫌なことを忘れられる気がした。
やがて赤黒い液体が流れ出て床を汚していく。まるで僕の心の中を表しているかのようにそれは広がっていった。
僕はそれを見てまた笑ってしまった。
ああ、なんて醜いんだろうか! 僕の中にあるどす黒くて穢らしいものが全て流れ出てきているみたいじゃないか!! そうだよ、僕は汚れているんだよ。君みたいな綺麗な人間とは違うんだ。だから放っておいてくれればよかったのにどうして君は近づいてくるんだ? これ以上僕を苦しめるのはやめてくれないかなぁ。ほら見てごらんよこの手にあるものを。真っ黒に染まっちゃってるじゃないか。君の白くて美しい手が台無しだよ。まったくこれじゃあ触ることだってできないね。
それになんだい? 今にも泣き出しそうな顔をしているけどどうかしたのかい? まさか僕を心配してるんじゃないだろうね。冗談じゃないよ。そういう偽善的な態度が一番嫌いなんだよね。僕に構わないでくれと言ったはずだろ。それなのにまだわからないのか。
仕方ない。ここまで言っても理解しようとしないのなら教えてあげよう。僕はね君たち人間のことが憎くてしょうがないんだよ。特に女なんて本当に目障りさ。僕のことを誰よりも一番愛してくれるはずの女の子が僕以外の人間に夢中になる光景を見せつけられる度に僕はこの世の全てを破壊し尽くしたい衝動に駆られたよ。だから何度も思った。今すぐ彼女を殺してしまえばどんなに楽だろうかと。だけど同時にこうも思うんだ。彼女の死を見た瞬間僕はきっと絶望して生きる気力を無くしてしまうだろうと。それじゃあダメなんだ。彼女を殺せばその瞬間に彼女は永久に失われるけど、その代わりに僕の心に永遠に彼女が残ることになる。それはそれで悪くはないかもしれないけれど、やっぱり彼女と過ごした日々の記憶がある限り僕は生き続けなければならないと思うわけだよ。だってそうだろ?彼女が死んでしまったらもう二度と会うことができないじゃないか。仮に奇跡的に再会できたとしてもその時既に僕たちは別々の道を歩んでいるはずだ。つまり彼女は記憶の中の存在になって、思い出の中だけの存在になってしまうということだよ。そう考えただけでゾッとするよね。それだけは何としてでも避けたいところだ。結局僕は死ぬこともできず、彼女に殺されることもなく生きていかなくちゃならないわけだ。これはこれで結構大変なことだと思うんだけどどうかな?ところで君はどうだい?もし愛する人が突然目の前に現れたとしたらさ、君ならどうするかな?もちろん殺すなんて選択肢はまず出てこないだろうね。そうなると当然一緒に暮らし始めるんじゃないかな?まぁ、あくまで仮定の話だけどね。そもそも本当にそんな状況になるのかさえ怪しいものだし。例えば、彼女の方が先に死んじゃうとかそういう可能性の方が高いような気もするよ。だってほら、よく言うだろ?人はいつか必ず死んでしまうって。だとしたら今生きているこの時が一番大切なはずなのに