テラーノベル
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涼は困った顔で、空いたベッドと准の顔を交互に見た。
「うーん、迷います。それはセーフなんですかね。ギリギリアウトだったら、俺殺されます」
「誰にだよ。お前ってほんと変なこと言うよな」
「ま、まぁ……お気持ちは嬉しいんですけど、やっぱりそれは……前から申し上げてるように、准さんはもっと警戒心を持たなきゃだめですよ」
そう言いながら、涼は自分の首元を抑えた。多分、また何か色々考えてるんだろう。
「俺をあまり信用しないでください。俺は貴方が思ってるような人間じゃない」
「はいはい、分かったから。一緒に寝るの? 寝ないの?」
「寝ます!!」
あれほど迷う素振りを見せていたくせに、いざ尋ねるとかなり元気な声が返ってきた。この即断の違いは何なのか。
「じゃ、早く寝ようぜ。あともう三時間しか寝れないよ、俺」
ということで、涼を半ば強制的に横にし、准は彼に枕替わりのクッションをひとつ手渡した。同じ布団に包まってる。限りなく近い距離で、温もりを感じた。
「ん……」
ちょっとでも動いたら振動が伝わってしまう。呼吸だって聞こえる。下手したら心臓の音さえ聴こえるような気がしているのは……飲み過ぎたせいだ、きっと。
ふと横を見ると、涼も目を開けて何故かカチンコチンになっていた。微動だにしないから、逆に違和感だ。
「……眠れない? お前さっきまで寝てたもんな」
「あっ……いえ、あと六百秒ぐらいじっとしてれば寝れると思います!」
十分か。何か分からないけど緊張してんな。
「准さんこそ、疲れてるでしょう。寝ないんですか?」
涼はこっちに寝返りを打つ。すると真正面に向き合って、顔がすごい近くにある。こんな風に誰かと寄り添うのはいつぶりかな。
「ふあー、もちろん、気ぃ抜いたら一瞬で寝れるよ。……でも」
布団から片手を出して、彼の柔い頬に触れる。
「ちょっと思い出してさ。お前、さっき泣いてただろ」
「え、はい……」
「今は大丈夫?」
気付けば、まるで子どもをあやすように涼の頭を撫でていた。深い意味なんてないけれど。昔、不安にしてる誰かにこうやったことが……あった、ような。
「一緒に寝れば、怖い夢なんか見ないから」
大丈夫。
その手は下へと落ちるように、やがて彼の目元をなぞっていく。
「だから泣くなよ」
「……っ」
涼は、瞳の色がはっきり分かるぐらい目を見張った。
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