「何だこいつ…」百鬼が不安そうに呟いた。
黒鎧は動きもなく、特別部隊を見下ろすだけでその場に立っていた。しかし、存在だけで空気が圧し掛かるような感覚だった。
「こいつ、今までの奴らとはまるで違う…」透が言葉を漏らした。
白川は冷静だったが、その表情には一瞬の警戒が見えた。「時間がない。全力で行くぞ。」
「待て、白川!」夏目が止めようとするが、白川は既に前に踏み出していた。
黒鎧はゆっくりと巨大な剣を振り上げた。風が切り裂かれる音が辺りに響き、白川の拳が黒鎧に向かって振り下ろされた。
しかし、白川は黒鎧の鎧に触れた瞬間、信じられないほど反発された。白川が初めて防御を取らされ、激しく叩きつけられた。
「白川が…!」百鬼が驚愕した表情で叫ぶ。
「今までにないほどの力…」透が呟く。
白川が立ち上がり、歯を食いしばって睨む。「ただのじゃねぇな…」
「ここは俺たちがやるしかない。」夏目が静かに言った。
「無理するな、夏目。」透が止めようとするが、神楽坂は微笑んでみせた。
「誰かが時間を稼がなきゃならないんだ。俺がやる。」夏目は自らの刀を構え、黒鎧の前に立ちはだかった。
「無駄だ!」白川が叫ぶが、夏目は動じなかった。
黒鎧の剣が再び振り下ろされる。それをかわし、必死に反撃を試みるが、黒鎧の防御は硬く、刀は通じなかった。
「お前の力はここまでか?」黒鎧が冷たく呟き、次の一撃を準備する。
瞬間的にその動きを見切り、全力で黒鎧に突っ込む。しかし、その瞬間、黒鎧の剣が貫いた。
「夏目!」透が叫びながら駆け寄るが、神楽坂は倒れながらも微笑んでいた。
「すまない、皆…俺にはここまでしかできなかった。」夏目は苦しげな呼吸をしながらも、その顔には後悔の色はなかった。
「何を言っているんだ!お前はまだ…!」透が必死に手を伸ばすが、その目はもう閉じられた。
「…!」百鬼も叫ぶが、神楽坂の体は動かない。
黒鎧は無言でその場に立ち、再び剣を構えた。死を前にして、特別部隊は衝撃を受け、動けなかった。
「このままでは…全滅だ…」百鬼が震えながら言った。
「くそ…あの野郎…」白川が歯を食いしばって立ち上がるが、死が彼にも大きな影を落としていた。
「俺たちが…お前の仇を討つ。」透が静かに呟き、涙を拭った。
「もう無駄な死は許さない…」百鬼も拳を握りしめた。
特別部隊は、仲間を失い、敗北を経験した。だが、それは彼らを弱くするのではなく、新たな覚悟を与えるきっかけとなった。
夏目の死がもたらした衝撃は大きかったが、それ以上に彼の犠牲が次の戦いへの炎を燃え上がらせた。
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