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MOMO🩲
ひな
104
けだま15号🍓🐾໊
6,356
夕鳴
128
光が消える。
静かに。
少しずつ。
白い世界が。
夜へ戻っていく。
川が戻る。
舟が戻る。
風が戻る。
だが。
誰も動かなかった。
その場に。
一人の少女が立っていた。
黒い髪。
白い着物。
雪のように白い肌。
そして。
静かな笑顔。
旅僧は。
その姿を見つめていた。
見覚えがある。
けれど。
今までとは違う。
霧の向こうにいた影ではない。
記憶の中だけにいた少女でもない。
今。
目の前に。
確かにいる。
旅僧の唇が。
震える。
「……桔梗」
初めて。
その名を口にした。
少女が。
振り返る。
そして。
「うん」
それだけだった。
旅僧の目から。
涙が落ちる。
「私は桔梗」
小さく。
自分に言い聞かせるように。
「二十四番目」
一歩。
川岸へ近付く。
「最後の封印」
そして。
「最初の封印者」
旅僧は。
何も言えなかった。
なぜ。
こんなにも。
胸が苦しいのか。
会ったことなど。
ほとんどないはずなのに。
それでも。
涙が止まらなかった。
桔梗は。
そんな旅僧を見て。
少し困ったように笑った。
「泣かないで」
「……何故です」
「分からないけど」
桔梗は。
少しだけ首を傾げる。
「私まで泣きそうになるから」
その言葉に。
旅僧は。
余計に泣いた。
お師さんが。
小さく鼻を鳴らす。
「変わってねえな」
桔梗が振り返る。
「お師さんも」
「……そうか?」
「うん」
少し笑う。
「怖い顔」
「余計なこと言うな」
鐘撞きが。
小さく笑った。
墓守も。
僅かに口元を緩める。
ほんの一瞬。
張り詰めていた空気が。
昔に戻ったようだった。
そして。
桔梗が。
佐衛門を見る。
「遅い」
「知るか」
「忘れたくせに」
「忘れさせられた」
「言い訳」
「事実だ」
桔梗が。
少し笑った。
「変わらないね」
「お前もな」
「……そうかな」
「そうだ」
桔梗は。
じっと佐衛門を見る。
その目が。
少しだけ潤んだ。
「本当に」
小さな声。
「変わらない」
佐衛門は。
何も言わない。
ただ。
桔梗を見る。
昔は。
もっと近くにいた。
隣にいた。
笑っていた。
泣いていた。
それを。
今になって。
少しずつ思い出している。
だが。
まだ全部ではない。
桔梗は。
それ以上を求めなかった。
「時間がない」
空を見上げる。
空の向こう。
巨大な存在が。
姿を現していく。
無数の腕。
巨大な目。
開く口。
それだけではない。
その奥に。
さらに何かがある。
見ようとすると。
目が痛む。
旅僧は。
思わず目を逸らした。
あれは。
怪物ではない。
少なくとも。
自分が知っている妖ではない。
もっと。
古い。
名前すら。
付けられる前から。
そこにあったような。
そんな何かだった。
桔梗が。
ぽつりと言う。
「忘却」
佐衛門が見る。
「……あれが?」
桔梗は頷く。
「名前を奪う」
一つ。
「記憶を奪う」
また一つ。
「大切だったものを」
桔梗は。
空を見上げた。
「最初から無かったことにする」
巨大な目が。
ゆっくり。
桔梗を見る。
『桔梗』
低い声。
『まだいたか』
桔梗は。
静かに笑った。
「まだいる」
一歩。
佐衛門の前へ出る。
「お前が消えるまで」
巨大な目が。
細くなる。
『消えるのは』
『お前だ』
桔梗は。
首を振る。
「違うよ」
静かな声。
「私はもう」
一瞬。
佐衛門を見る。
「何度も消えてる」
佐衛門の目が。
僅かに揺れる。
「でも」
桔梗は。
笑った。
「今度は」
佐衛門を見る。
「忘れないよ」
コメント
1件
ああ、すごく好きな回でした……「桔梗」。一行ずつ区切られた文章が、涙がひと粒ずつ落ちていくみたいで、胸がぎゅっとなりました。特に「私はもう、何度も消えてる」のあとの「今度は忘れないよ」には、もう完全にやられましたね。静かな強さと、諦めない意志が同時に伝わってきて。大好きなエピソードです🌷