テラーノベル
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消防車のサイレンが、遠くに聞こえる。
クールキッドは、テレビを見つめたまま動かない。
——「見させればいい」
その言葉だけが、頭の中で反響していた。
「……もっと」
小さく、呟く。
その瞬間だった。
部屋の空気が変わる。
「……?」
目覚まし時計が、カチ、と音を立てて止まる。
そして——逆に回り始める。
「え……」
壁のデジタル時計。
数字が、戻っていく。
18:41 → 18:40 → 18:39
ライトが、ぱちっ、と瞬く。
一度。
二度。
三度。
「……なにこれ」
クールキッドの声が、少しだけ揺れる。
家電が一斉に唸る。
電子レンジの中で、何も入っていないのに火花が散る。
パチン。
エアコンが開く。
閉じる。
また開く。
「……っ」
クールキッドが一歩後ずさる。
手に持っていたタブレット。
カエルが無限に増えていく。
テレビ画面。
ノイズが走る中に、まだNoliがいる。
「いいね」
Noliの声。
「ちゃんと“反応”してる」
クールキッドの喉が動く。
「……これ、ぼく?」
問いかけるように。
Noliは首をかしげる。
「そうだよ」
「君の“思ったこと”が、少し漏れてるだけ」
静かに。
でも確実に、深く。
「すごいよ」
褒めているのに。
どこか、誘導する声。
「じゃあ次は」
静かに。
甘く。
「“止めてみようか”」
クールキッドの目が、揺れる。
「……なにを」
Noliは、にやっと笑う。
「お兄ちゃん」
心臓が跳ねる。
「やめろ」
低く、鋭い声。
セブン。
いつの間にか、背後に立っている。
クールキッドが振り返る。
「……パパ」
セブンは、迷わない。
デスクに歩み寄る。
引き出しを乱暴に開けて、
デバイスを取り出す。
キーボードを叩く。
速い。
迷いがない。
画面に走るコマンド。
——久しく触れていなかったそれ。
「……それ」
クールキッドの声が、わずかに震える。
セブンは答えない。
ただ、打つ。
「やめて」
小さな声。
でも。
セブンは止まらない。
「やめてよ」
強くなる。
テレビ画面の奥から、笑い声。
「——へえ」
Noli。
「まだ持ってたんだ、c00lgui」
「懐かしいね、それ」
セブンの指が止まることはない。
最後のキーを叩く。
「遮断する」
短く、冷たく。
「ここまでだ」
一瞬。
画面が、白く弾ける。
音が、消える。
ノイズが、切れる。
Noliの気配が、消える。
さっきまで異常だった家電は、
静かになる。
——静寂。
完全な、遮断。
同時に。
「——っ!!」
クールキッドが、息を詰まらせる。
膝が、崩れる。
「……っ、やだ……」
小さく、でもはっきり。
「やだ……!」
セブンが振り向く。
すぐに駆け寄る。
「クールキッド」
セブンは膝をつく。
強く、抱きしめる。
「もう大丈夫だ」
低く、優しく。
「全部、切った」
でも。
クールキッドの反応は——違う。
「……ちがう」
かすれた声。
セブンの服を、強く掴む。
「……くらい」
呼吸が、浅い。
「なにも、ない」
震えている。
「……こわい」
セブンの腕の中で、
小さく縮こまる。
「……でられない」
その言葉に、
セブンの表情が、固まる。
あめ猫
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