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◻︎農家の後継問題?


「こんにちは!未希さん、います?」

「いらっしゃい。上がって。樹君もいらっしゃい」

「はぁ、重たかった。もうすぐお昼寝の時間だから、うとうとしてて。寝かせてもらってもいいですか?」


部屋のすみに翔太が使っていたマットを敷いた。

捨てなくてよかった、貧乏性もたまには役に立つ。


「可愛いね、この子、ニシちゃんに似てるね」

「そうですか?私から見ると半々かなと。それよりも、ちょっと聞いてくださいよ」

「お義母さんとうまくいってないの?」

「うーん、いい人なんですよ、ただね、樹はやっとできた孫だから、もう可愛がり方がハンパなくて。一日中樹にべったりなんです。最近じゃあ、ミルクもいらないから、朝起きてから夜まで、下手すると夜寝る時も樹を連れてっちゃうんです。今日は、ママ友に会うからって強引に連れてきましたけど」


家は、結婚と同時に敷地内に建ててもらったようで、それはうらやましい。


「それはいいことじゃないの?自分の時間ができるし」

「もう、いっそのこと仕事をしようかなと思ったけど。お義母さんたらなんて言ったと思います?」

「さぁ?」

「樹のことは心配いらないから、あなたは畑に出てね、だって」

「畑?そういえば貴君、田畑がたくさんあるとかいってたかも?貴君と一緒にやれとか?」

「違いますよ、あの人は田畑のことには一切、手も口も出さないんです。休みはバイクでツーリングか車をいじってるかで。そんなんでどうして私だけが農作業しなきゃいけないの?って思っちゃう」


ニシちゃんはまだ30を少し過ぎたくらいだったか?

それでも浅黒く日焼けしているのは、多少なりとも農作業をしてるってことだろう。


「でも、やってるんでしょ?いい色に灼けてるもん」

「農作業はそんなに嫌いじゃないから。でも、土地が広過ぎて終わらねーって感じ。毎日、家事と畑仕事でヘトヘトになっちゃう。でも、家に帰れば樹がいるからって頑張ってるんだけど、お義母さんがずっとくっついてるから…」

「あら、よっぽど孫が可愛いのね。悪いことじゃないけど」

「悪い人じゃないけど、度を越すとストレスでしかないんです。あの人に話しても、そんなのほっとけばいいしか言わないし…」


あーぁと、大きなため息がニシちゃんから聞こえた。


「貴君とはうまくいってる?」


単純に、ニシちゃんの夫婦のこととして質問している自分がいた。

こんな質問をしながら、気持ちがざわついたりもせず、貴君に対しては、本当にただの同僚になったんだと思った。


「うーーーん、すごく好きで結婚したわけじゃないから、あ、これはお互いにそうだから、いいんだけど。それでも、暮らしてたらもっと好きになるとかあると思ってたんだけど…」

「けど?」

「時々、私がずっと片想いしてるような錯覚に陥ってしまうみたいな?私が好きって言えば答えてはくれるけど、あの人から強く求められたりしたことないです。でもまぁ、それはそれでいいかな?と。別に浮気してる感じもないので」


___貴君は、やっぱり誰かを好きになるということがないのかな?


「貴君は、車が恋人ってとこあるもんね」

「ですね、時々それでイラッとするけど。そっちもなんかいい方法ないですかね?」


___お義母さんのこと、農作業のこと、貴君のこと…か。


しばらく考える。


「あっ!これいけるかも?」

「なにか考えがあるんですか?」

「ニシちゃんは、行動力あるからね、できると思う」


そうやって、私のある思いつきを話してみた。



「なるほど!それ前向きに検討してみます」

「じゃあ、私は知り合いに連絡して教えてもらってみるね」

「お願いします」


ふぇーんとぐずりだした樹。

よしよしと駆け寄るニシちゃんは、しっかりお母さんしてると思う。

…にしても貴君は、いつまで子どものままなんだろう?

ニシちゃんは、出産に子育てに、家事に農作業とやってるのに。


「あ、そうそう!私がアドバイスしたことは内緒ね」

「その方が面白いですよね?だから、ここに来ることは、お義母さんにもあの人にも言ってないんです」


___なんだか、ワクワクしてきたぞ



ニシちゃんたちが帰ってから、私は洋子さんに連絡した。


ぴこん🎶

《私に聞きたいこと?》

〈というか、ご主人に、かな?〉

《あー、いいよ、また近いうちに一緒にお邪魔するね》

〈ありがとう!それにしても、仲良いんだね?〉

《仲良くしなきゃいけない、という縛りみたいなものがないから反対に仲良くできるみたいよ、うちらは》

〈あー、それならうちも同じだわ〉




多分…

若い頃は、夫婦がお互いに男と女として相手を求めていた。

でも今は、男とか女とか関係なく、居心地のいい相手としてお互いを見ている…そんな気がする。


___洋子さんも、私も、恵まれた離婚なんだな…


それは、幸せなことだと思った。



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