コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
◻︎農家の後継問題?
「こんにちは!未希さん、います?」
「いらっしゃい。上がって。樹君もいらっしゃい」
「はぁ、重たかった。もうすぐお昼寝の時間だから、うとうとしてて。寝かせてもらってもいいですか?」
部屋のすみに翔太が使っていたマットを敷いた。
捨てなくてよかった、貧乏性もたまには役に立つ。
「可愛いね、この子、ニシちゃんに似てるね」
「そうですか?私から見ると半々かなと。それよりも、ちょっと聞いてくださいよ」
「お義母さんとうまくいってないの?」
「うーん、いい人なんですよ、ただね、樹はやっとできた孫だから、もう可愛がり方がハンパなくて。一日中樹にべったりなんです。最近じゃあ、ミルクもいらないから、朝起きてから夜まで、下手すると夜寝る時も樹を連れてっちゃうんです。今日は、ママ友に会うからって強引に連れてきましたけど」
家は、結婚と同時に敷地内に建ててもらったようで、それはうらやましい。
「それはいいことじゃないの?自分の時間ができるし」
「もう、いっそのこと仕事をしようかなと思ったけど。お義母さんたらなんて言ったと思います?」
「さぁ?」
「樹のことは心配いらないから、あなたは畑に出てね、だって」
「畑?そういえば貴君、田畑がたくさんあるとかいってたかも?貴君と一緒にやれとか?」
「違いますよ、あの人は田畑のことには一切、手も口も出さないんです。休みはバイクでツーリングか車をいじってるかで。そんなんでどうして私だけが農作業しなきゃいけないの?って思っちゃう」
ニシちゃんはまだ30を少し過ぎたくらいだったか?
それでも浅黒く日焼けしているのは、多少なりとも農作業をしてるってことだろう。
「でも、やってるんでしょ?いい色に灼けてるもん」
「農作業はそんなに嫌いじゃないから。でも、土地が広過ぎて終わらねーって感じ。毎日、家事と畑仕事でヘトヘトになっちゃう。でも、家に帰れば樹がいるからって頑張ってるんだけど、お義母さんがずっとくっついてるから…」
「あら、よっぽど孫が可愛いのね。悪いことじゃないけど」
「悪い人じゃないけど、度を越すとストレスでしかないんです。あの人に話しても、そんなのほっとけばいいしか言わないし…」
あーぁと、大きなため息がニシちゃんから聞こえた。
「貴君とはうまくいってる?」
単純に、ニシちゃんの夫婦のこととして質問している自分がいた。
こんな質問をしながら、気持ちがざわついたりもせず、貴君に対しては、本当にただの同僚になったんだと思った。
「うーーーん、すごく好きで結婚したわけじゃないから、あ、これはお互いにそうだから、いいんだけど。それでも、暮らしてたらもっと好きになるとかあると思ってたんだけど…」
「けど?」
「時々、私がずっと片想いしてるような錯覚に陥ってしまうみたいな?私が好きって言えば答えてはくれるけど、あの人から強く求められたりしたことないです。でもまぁ、それはそれでいいかな?と。別に浮気してる感じもないので」
___貴君は、やっぱり誰かを好きになるということがないのかな?
「貴君は、車が恋人ってとこあるもんね」
「ですね、時々それでイラッとするけど。そっちもなんかいい方法ないですかね?」
___お義母さんのこと、農作業のこと、貴君のこと…か。
しばらく考える。
「あっ!これいけるかも?」
「なにか考えがあるんですか?」
「ニシちゃんは、行動力あるからね、できると思う」
そうやって、私のある思いつきを話してみた。
「なるほど!それ前向きに検討してみます」
「じゃあ、私は知り合いに連絡して教えてもらってみるね」
「お願いします」
ふぇーんとぐずりだした樹。
よしよしと駆け寄るニシちゃんは、しっかりお母さんしてると思う。
…にしても貴君は、いつまで子どものままなんだろう?
ニシちゃんは、出産に子育てに、家事に農作業とやってるのに。
「あ、そうそう!私がアドバイスしたことは内緒ね」
「その方が面白いですよね?だから、ここに来ることは、お義母さんにもあの人にも言ってないんです」
___なんだか、ワクワクしてきたぞ
ニシちゃんたちが帰ってから、私は洋子さんに連絡した。
ぴこん🎶
《私に聞きたいこと?》
〈というか、ご主人に、かな?〉
《あー、いいよ、また近いうちに一緒にお邪魔するね》
〈ありがとう!それにしても、仲良いんだね?〉
《仲良くしなきゃいけない、という縛りみたいなものがないから反対に仲良くできるみたいよ、うちらは》
〈あー、それならうちも同じだわ〉
多分…
若い頃は、夫婦がお互いに男と女として相手を求めていた。
でも今は、男とか女とか関係なく、居心地のいい相手としてお互いを見ている…そんな気がする。
___洋子さんも、私も、恵まれた離婚なんだな…
それは、幸せなことだと思った。