テラーノベル
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第11話
あれから、数日後。
黒猫は、まだ外に出れるような体じゃない。
貧血が酷い。傷は全て治ってる。
私だけでも授業に出ろって、言われて教室にいるけど……私が七歳って事も、黒猫のあの姿もバレてたらしい。
でも、私はただ単に、無謀な所に突っ込んできた、人殺しって印象だとよ。
……ルイスっ……嫌っ。
また、あの光景が瞼の裏に広がった。
血にまみれた、私が……守れなかった、命の恩人。
逝ってしまったら、もう会うことは無い。
ずるいよっ。一方的に何か言おうって魂胆。
「ハンナ。大丈夫?」
そうな話しかけてきたのは、マリアだった。
「うん。大丈夫だよ」
「ならいいんだけど……包帯の巻き具合が尋常じゃないから……」
あぁ……、と私は自分の腕に目をやった。包帯グルグル巻き。
……何とか足は黒猫の力で治ったけど……腕の切り傷に毒が入っちゃって……中々治らない所。
「おいっ! ハンナっ!」
そう言ったのは、同じクラスの……名前が何だか忘れた青い瞳の男の子だった。髪はサラサラのキャラメル色。
その男の子はそのまま続けて「お前の、使い魔が廊下で息絶え絶えで、血まみれだぞ」と指を指しながら言った。
私はハッとして、指が指された方向を向いた。
……黒猫の魔力が弱々しく唸っている。
「ッ……!」
私は衝動的に、剣を片手に駆け出していた。
黒猫っ……!
私は、階段を駆け上がって黒猫の元へ向かった。
「黒猫っ!!」
確かに、血まみれ。だけど、黒猫の血ではない。
いや、混じってるけど……
悪寒が走った。
ココは、私の部屋の隣。否、ミヒャエルさんの部屋の前。
「ミヒャエルがっ……誘拐っ……」
黒猫は、私の姿を見たや否や、傷ついた内臓を気にする事なく、息絶え絶えになりながら喋った。
……う、嘘。
「ねぇっ! 大丈夫?」
マリアが走って来た。
「あ、う、うぅん。でも、これは私の問題」
私は笑顔を貼り付けた。
……殺されるかもっ……
例え、教皇様が許したとて、世間が許さないはず。
どうすれば……
「……黒猫。預かるよ。行ってきて」
「え?」
呆けた声が私の口から飛び出た。
どこにも行き所がないままの迷子になってしまっている。
「私、こう見えて、医療オタクなんだよ」
マリアは、魔法石を取り出して、魔力を流した。
すると、黒猫の苦しそうな表情は消え、すやすやと寝始めた。
「だからさ、行ってきて」
私は、また笑顔を貼り付けた。
「うん。ありがとう」
私は、立ち上がって魔法――笛でミヒャエルさんの事を追った。
笛を誰が吹いているのかは、マリアを除いて誰も知ったこっちゃないだろう。
✵
「ッ……!」
グワングワンとする視界だけど、荷馬車にでも乗っているくらいガタガタ揺れ、袋詰めをされて何も見えない。
くそっ……
色々な術を使ったけど……無意味だった。
腹に拳が食い込むような攻撃をされてから、腹筋に力が入らない。
「斬り伏せるっ!!!」
そんなハンナの幻聴が聞こえてきた。
そうか。このまま……
と思いかけた時、荷馬車の動きが止まった。
「ミヒャエルさんっ! 動かないでっ!」
「え?」
そう言った直後、袋が粉砕された。
えぇ?
え?
「は?」
「ふふっ。ふふふっ。ふふははっ。ハハハハハ」
俺を捕らえた男が笑い始めた。
二十代中盤くらいに見えるこの男。
フードを被っていて、全然顔が見えない。
でも、フードの隙間からブロンド髪が見え隠れしている。
「なぁに? そんな弱々で笑えるのか……それも、ここまでね」
ハンナは不敵に笑った。
「はぁ?」
「まぁ、私を殺してから笑えって事」
「お前さんは、確かに強いな。だけど、『清水の賢者』って呼ばれてるんだ」
け、賢者っ!!!
賢者とは、国が認めたり、人々が勝手に呼び始める、強者にしか与えられない称号だ。
何百年と歴史がある。
最初は……確か、『笛吹の賢者』だっけな。
……百年前の話だ。
エルフや、長命じゃないとその当時の事を知らない。その時は、全員がとても強くて、『黒影』だっけな。そんなのを楽々倒せてたらしい。
……ハンナ。百年前と同レベルまで達してたのか。
「はぁ〜……賢者ってさ、そんなに凄い称号だっけ? 私の先生は賢者じゃないけど、お前のような強さだったら、お前は〇・一秒も経たずに息は絶えてる」
「あはは。怖いこと言うね」
そう、その男が言うと、ハンナは後ろに回って剣を振った。
男はギリギリで防いだけど、余裕は無いだろう。
ハンナは、防がれた事に意外な顔をしていた。
でも、体をグルンと回して、回し蹴りをした。見事お腹に命中。
「ウ、ゴッ……!」
鮮血が色々な所から出てパチャッと、音がした。吐血した分の血だ。
ハンナは、欠けた剣を片手に大きなため息を吐いた。
コメント
1件
「清水の賢者」って称号が出てきたとき、ゾクッとしました。百年前の賢者の話も気になるし、ハンナがそこまで達してるって設定、めちゃくちゃ熱いです。黒猫が血まみれで息絶え絶えなのに「行ってこい」って送り出すマリアも、一瞬で好きになりました。そしてハンナの「笑顔を貼り付ける」強がり、毎回胸が締め付けられます。戦闘シーンのキレも相変わらず良くて、あっという間の一話でした。次が待ち遠しいです。
上野文
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橘靖竜
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ライラ🔮🌸🌙
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柊遊馬
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