テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第9章
人は、同じ力を違う理由で使う
第46話:模倣者(イミテイター)
最初の報告は、地方都市だった。
「街の一角が“溶けた”そうです」
ギルドの受付嬢の声が、震えている。
建物と人間。
物質と感情。
境界が曖昧になり、再構成されていた。
「融合使用者の痕跡は?」
健が問う。
「……あります。
しかも――」
一瞬、言い淀ってから続けた。
「健さんと、
“似すぎている”」
健の背中を、冷たいものが走った。
(来たな……)
第47話:人が力を欲しがる理由
現場は、静まり返っていた。
破壊は抑えられている。
だが、それは無秩序に壊された後の静けさだった。
「これは……
世界に喧嘩売ってる使い方だ」
健は、歪みの残滓を見つめる。
融合は、荒い。
だが、確かに“狙って”いる。
「制御されていない。
けど――」
エリナが言う。
「理論は、あなたの能力を
研究した形跡がある」
「俺、実験材料になった覚えないんだけど」
「本人が知らない研究ほど、
厄介なものはないわ」
健は苦笑した。
第48話:人工融合体
その時――
瓦礫の影から、何かが動いた。
人の形。
だが、どこか歪んでいる。
「……人間?」
声をかけた瞬間、
“それ”は走った。
速い。
異様に。
「待て!」
健が追う。
だが次の瞬間、
人工融合体が振り返り、腕を振るった。
――空気が、切断された。
健は、紙一重でかわす。
(融合の“再現”……
でも、雑だ)
だが――
力そのものは、本物だった。
第49話:同じ力、違う覚悟
「なんで……邪魔するんだよ!」
人工融合体が、叫ぶ。
声は、若かった。
健と、そう変わらない。
「俺は……
この力で、世界を変える!」
健は、立ち止まった。
「変えて、どうする?」
「選ばれた奴だけが、
壊れない世界にする!」
健は、静かに答える。
「それ、もう壊れてるぞ」
人工融合体の動きが、止まる。
「お前は……
何も分かってない!」
次の瞬間、
暴走的な融合反応。
健は、拳を構え――
そして、下ろした。
第50話:壊さない勝利
健は、融合を使わなかった。
代わりに、
“干渉点”だけを見抜く。
一歩。
もう一歩。
「お前の融合は――
“恐怖”が核だ」
人工融合体の瞳が、揺れる。
「怖いんだろ。
この世界が」
健は、手を伸ばした。
「俺もだ」
触れた瞬間、
歪みが解けていく。
人工融合体は、崩れ落ちた。
戦闘は、終わった。
第51話:選ばれなかった人間
彼の名は、ユウトだった。
元・研究者。
世界の歪みに魅せられ、
独自に融合理論を構築した。
「俺は……
世界に必要とされなかった」
健は、首を振る。
「違う」
「必要とされたくて、
壊そうとしただけだ」
ユウトは、泣いていた。
「お前は……
なんで耐えられるんだよ……」
健は、少し考えてから言った。
「逃げ場があったからかな」
「仲間とか、
笑ってツッコんでくれる奴とか」
「あと――」
拳を見つめる。
「壊れないって、
決めたから」
第52話:世界の誤算
観測層。
「人工融合、失敗」
「対象《野山 健》
人間側への影響、想定以上」
監査官たちの演算が、乱れる。
「……誤算だ」
「彼は、
“力の象徴”ではない」
「“選択の象徴”だ」
ノクスは、沈黙していた。
(この存在は……
消すべきか、残すべきか)
世界は、まだ答えを出せていない。
第53話:次の敵は、正義を名乗る
王都への帰路。
健は、夕焼けを見ていた。
(人は、力を欲しがる)
(理由は……
みんな、違う)
エリナが言う。
「次は、
国家が動くわ」
「正義の名の下で」
健は、苦笑する。
「一番、面倒なやつだ」
拳を、軽く握る。
「でも――
逃げない」
人が使う融合。
正義が使う力。
次に壊れるのは、
世界か、価値観か。
第9章・了
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!