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第10章
正義は、融合を許すか
第54話:国家融合管理局
その通達は、王都全域に貼り出された。
【布告】
融合現象の多発に伴い、
王国は《融合管理局》を設立する。
すべての融合使用者は、
登録・管理・監督の対象とする。
「……来たな」
健は、紙を見つめたまま呟いた。
「思ったより、早かったな」
リュシアが苦々しく言う。
エリナは、視線を逸らさない。
「国家は、
“制御できない力”を嫌う」
「だから、
制御するフリをする」
健は、深く息を吐いた。
(管理、ね……)
第55話:正義の顔
管理局本部は、
王城の外郭に新設されていた。
白い石造り。
清潔で、無機質。
迎えたのは、
軍服姿の男だった。
「融合管理官、
カシム・ヴァレンです」
柔らかい笑み。
だが、目は冷たい。
「あなたが――
野山 健ですね」
「はい。
高校生です」
「それは存じています」
カシムは、書類を差し出した。
「協力していただければ、
あなたは“英雄”です」
健は、眉をひそめる。
「しなければ?」
「――危険人物です」
第56話:管理という名の檻
説明は、丁寧だった。
登録。
使用制限。
出動命令。
監視。
「安全のためです」
カシムは、何度もそう言った。
「誰の?」
健の問いに、
一瞬だけ間が空いた。
「――国民の」
健は、机に手を置く。
「俺が守りたいのも、
国民です」
「なら、同じでしょう?」
健は、首を振った。
「違う」
「俺は、
命令で守らない」
部屋の空気が、冷えた。
第57話:正義は選別する
数日後。
融合管理局主導の、
討伐作戦が行われた。
人工融合反応を起こした
スラム区画。
健は、現場に向かう途中で、
異変に気づいた。
(……包囲の仕方が、
救出じゃない)
中にいたのは、
怯えた人々だった。
「待て!
まだ生きてる!」
健の叫びは、
号令にかき消される。
「危険対象、排除!」
魔法と剣が、降り注いだ。
健は、咄嗟に前に出る。
「やめろ!!」
融合を――使わずに。
盾になる。
数人は、助かった。
だが――
全員ではない。
第58話:英雄失格
その夜。
健は、管理局に呼び出された。
「命令違反です」
カシムの声は、冷たい。
「民間人を守っただけだ」
「命令に背いた」
「それが、
正義なら――」
健は、言葉を切る。
「俺は、英雄じゃなくていい」
沈黙。
カシムは、書類に印を押す。
「――ならば」
顔を上げる。
「あなたは、
国家非公認融合使用者です」
実質的な、追放だった。
第59話:守れない正義
管理局の外。
リュシアが、歯を食いしばる。
「ふざけるな……!」
「まあ、予想通り」
健は、苦笑した。
エリナが、静かに言う。
「これで、
あなたは“国家の外”になった」
「でも――」
視線を上げる。
「だからこそ、
守れる場所もある」
健は、拳を開く。
「正義が選別するなら」
「俺は、
選ばれなかった側を守る」
第60話:宣戦布告
同時刻。
融合管理局、最上階。
「対象《野山 健》
危険度、再評価」
「放置は、
不安定要因です」
カシムは、窓の外を見下ろす。
「……彼は」
小さく、呟く。
「国家の敵になる」
部下が、尋ねる。
「排除を?」
カシムは、首を横に振る。
「いいえ」
微笑む。
「“正義”として、
捕らえる」
第61話:均衡の外側へ
夜。
健は、王都の外に立っていた。
背後には、
少数だが確かな仲間。
(ここからは……
国じゃない)
(世界と、
人の間)
健は、静かに言う。
「俺は、
管理されない」
「でも――」
一歩、踏み出す。
「逃げもしない」
国家が正義を名乗った時、
均衡は、完全に壊れた。
次に始まるのは、
世界ではなく――
人間同士の戦争だ。
第10章・了