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「それじゃ…。」
みんな、みんなおしまいだ。
怪物は、人を喰らった。
敵も、
先生も、
友人も、
知らない人も
「…はぁ。でもなぁ、こいつらは喰えないや。」
唯一喰わなかった
華澄、
佳奈、
愛美、
慶次、
智晴、
樹を抱き、走った。
血まみれの学園に、
振り返りもせずこの惨状に怪物はなにも思わなかった。
「くくく…がぁーはっはっはっはっは!!!!」
そう、なにも―。
「…あ?」
目が、目が、あたたかい
「…あれ」
これはなんだ、あ…
「涙?なみだ?ナミダ?何で…何で…何で…」
咆哮、慟哭、怪物の叫びが木霊した。
二度とは戻れぬ快楽を手に入れた怪物は
「がははははははは!!」
人々を喰らいつつ、死のうとした。
だが、怪物は死なない、怪物は死ねない。
生贄と呼ばれた6人も一向に目を覚まさない。
怪物は1疋(1匹)と6人で自殺も計った
6人も怪物も死ねない。
死なないどころか目すら覚まさない。
怪物は6人に綺麗な装束を着させ
なんにもない荒廃した世界で暮らし始めた。
怪物は手始めに動物園を破壊した。
次に水族館や爬虫類店の生き物を放った。
どうにか6人を目覚めさせようと
色々なことを試した人間界の蘇生、
祈り、手術、そして四つ目の黒魔法により
(…生き返った…のか。)
だが、この6人は既に人の形から逸脱して
不完全な怪物になってしまった。
怪物は喜んだ、
怪物は仲間が増えて嬉しかった。
人語を話せるのも入れば、
ひたすらに何かを言っている奴も居るし
足が増えたやつも、
目がひとつになったものも…。
「へぇ、でも君は『ほぼ』完全体だね」
無言になった華澄は、
狼とサーバルと人間の融合体になった。
「…………。」
「僕と似ていて、とても嬉しいよ」
「………!!」
『造られた怪物』
の華澄は僕の首へと噛み付き、
体を引っ掻いた。
「あはは、何だ、甘えたがりか。」
「お前は僕と同じく、
この世界では神に等しい」
「そして僕には君がいる…
だからこんな風にしたんじゃないか。」
華澄はそのまま抱きつき、
産声のような声を漏らし眠った。
「…!!」
「だから、怯える必要は無いさ」
「…ギ、ギザ」
『智晴だった怪物』
が睨みつけてきた。
「おいおい、大丈夫か?」
「ゴンナ…ゴド、ユルザ、レナ…イ」
「なんだよ、誰が決めたんだよそんなもの。」
「………!!」
「この周辺には僕ら以外もう誰もいないんだ」
「悠久に近しい時を過ごそうじゃないか、
楽しくね。」
それからその6人は僕を殺そうと
何度か挑んできた。
引っ掻き、喰らい、時には撲殺。
でも僕は死なない。
僕より怪物らしい怪物は居ないから。
「食事をしよう。そこの肉を持ってくるよ。」
それもどうせ意味が無いのも知らずに―。
怪物は、すぐそこまで来ている。
例えば、君の隣にいる人間は
本当に人間かどうかなんてわからないだろう。
もしかしたら、
僕みたいな怪物かもしれない
いいや、そう成ってしまうのかもしれない。
それでも、君は怪物は居ないと信じるか。
ただ、これだけは言わせて欲しい
「僕は、僕らは、『怪物』さ。」
僕らは怪物なんだ、そんな心は必要ない。
大切なものは大切に
それ以外は全て喰らって血肉に帰す。
それが『怪物』だ。
「やぁ、君の名前は?」
「僕は―」
静岡の人口低下に伴い、
次の拠点は東京になった。
「怪物に、興味はないかい?」
怪物達は、
今も仲間を作ろうと
夢も、この世界も飄々と漂っている。