テラーノベル
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「う……う〜ん……」
明け方の薄暗い部屋の中、視界がゆっくりと広がる。ぼーっとした意識が少しずつはっきりしてくるにつれ、視界も同様にはっきりとしてくる。
目の前には、上からこちらを覗き込んでいるアルテアの姿があった。
「大丈夫ですか……?」
ゆっくりと首を動かして周りを見渡す。
「……ここは?」
視線があったルシオが答える。
「オシスの宿だよ」
「オシスの……宿……」
意識は戻ってもまだ混乱しているのだろう。ひとまず、意識が戻ったことに安堵の息を吐きながら、アルテアは目覚めたばかりのエラリスの額に手を当てながら困ったように笑った。
「エラリスさん。短い期間で立て続けに精霊達との契約をしたせいですかね……ライナさんと契約をした後、魔変症で倒れてしまったんです」
「……魔変症」
「症状がかなり重く、数日寝込んでいたんですよ」
アルテアの話を聞いて、エラリスの記憶がゆっくりと戻ってくる。
(ライナと契約をした後……確かフィニスにもたれかかって……)
「ニティアとフィニスの2人が静波の葉を採ってきてくれたんですよ」
静波の葉。子供の頃に軽い魔変症を患った際、母親によく処方された薬草である為、その効果についてはエラリスもよく知っていた。
「あれ?」
身体も少しずつ動かせるようになり、首を左右に振る。
「フィニスとニティアは?」
静波の葉のお礼を言おうと部屋の中を見渡すも、2人の姿が見当たらない。
「真夜中に静波の葉を持ってきてくれ、今はお二人とも隣の部屋で寝ていますよ」
「そっか……」
「エラリスさんも、ゆっくり休んでください。ルシオさんも、ここは大丈夫ですから、寝てくださいね」
優しく2人に睡眠を促すアルテア。ルシオは大きく背伸びをする。
「それじゃお言葉に甘えますかね。アルテアも、眠くなったら声かけてくれよな。いつでも変わるから」
「はい、ありがとうございます」
そう言うと、ルシオはゆっくりと部屋を後にしていった。
「エラリスさんも」
「うん……ありがとう」
もう一度ゆっくりと瞼を閉じるエラリス。まだ少し重い身体全身の力を抜くと、すぐに意識が遠のいていった。
意識が完全に途切れる間際、ふと部屋の中を漂っている静波の葉の匂いを感じたエラリス。次の瞬間には深い眠りへと落ちていた。
⸻
「もう大丈夫なの?」
数日後の朝、エラリスの部屋を訪ねたニティアとフィニス。そこには、すでに着替えを済ませ、大きく伸びをした後、人差し指から小さな旋風を発生させるエラリスがいた。
「うん。もう大丈夫。2人とも、静波の葉をありがとう」
そう言い、ベッドの脇の机に置かれている、静波の葉を煎じたお茶に目を配るエラリス。
その様子を見て、フィニスとニティアは視線を合わせ、ふっと笑い合った。
「もう無理はするなよ?」
「ほんとよ。心配したんだから」
「心配かけてごめん」
そこへ、身支度をしたルシオ。そして、顔を洗ってきたアルテアも部屋に入ってきた。
「お、エラリス復活って感じだな!」
「皆様、おはようございます」
「みんなおはよう」
「おはよ」
「お〜、おはよ(ぐ〜〜〜〜)」
フィニスの声が何かの音でかき消された。皆がその音のした方に視線を送る。その視線の先はもちろん……
「お腹すいた」
エラリスのお腹であった。吹き出して笑うアルテアとニティア。ルシオも苦笑いをしているなか、フィニスが口を開いた。
「昨日おばちゃんがオアシスから戻ってきたらしいし、飯食いに行こうぜ!」
「いく!!」
エラリスの反応に再び笑いに包まれる部屋。しばらく続いた笑い声が落ち着いた後、5人は宿を出て、リヴ達の店へ向かうのであった。
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花月夜れん
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コメント
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エラリス、目覚めてよかったですね……! 静波の葉を採ってきてくれたニティアとフィニスの優しさがじんわり沁みました。最後の「お腹すいた」で一気に笑顔になる5人の空気が愛おしくて、思わず一緒にほっこりしました。月白さんの心理描写の細やかさ、今回も素敵でした🌷