バーボンこと安室透こと降谷零は困惑していた
普通の人でも困惑すると思うし多分パニックになると思う
降谷は自分の頬をつねってみた。普通に痛かった
目を擦ってみる。自分が見えているものに変化はない
いつも冷静でトリプルフェイスを可能にするほど優秀な降谷でも流石にこの光景を見て困惑するのも無理はない
何故なら…
「やーっと着いた!此処が異世界ね!まったくこのラミリス様を置いていくなんて!」
手のひらサイズの金髪の妖精?が目の前にいたからだ
このようなカオスな状態になる数分前…
「あぁ~疲れた~」
降谷は疲れていた
バーボンとしての組織の活動、安室としてのポアロのアルバイト、そして本職である降谷としての公安の仕事
ブラック企業もビックリなほど忙しかった
ちょうどその日は公安のほうの仕事で警察庁からの帰りに事件は起こった
廃ビルの壁からゲートのような魔法陣が浮かび上がってそこから金髪の妖精が出てきた
降谷は忙しすぎてついに頭がイカれたのかと思った
降谷がその場に固まっているとようやく降谷に気づいた妖精が慌てだした
「げっ!人間?!うっそ見られた?!」
「よ…妖精…?」
「妖精じゃないわよ!精霊よ!ひれ伏せるがいい!我は迷宮妖精ラビリンスの魔王ラミリスである!!」
決まった…!とドヤ顔するラミリスという精霊と違い、降谷の頭の中は?がたくさん浮かび上がっていた
(は?迷宮妖精?魔王?ラビリンス?ついに耳もイカれたか…?いやでも目の前に精霊のような非現実的な存在がいることに変わりはない…。ロボットと言っても動きがなめらかすぎるし魔法陣について説明もできない…)
降谷はとにかく疲れていたので目の前にいるのが精霊だとあっさり信じたのだ
もう一度言おう、とにかく疲れている。徹夜テンションにもう入っているのだ
「えっと、ラミリスさん?異世界って?」
「ふん!あたしは今機嫌がいいから教えてあげるわ!」
ラミリスの話は非現実のオンパレードのような内容だった
魔法とか魔物とか勇者とかダンジョンとか聖騎士とか
まさにゲームの世界みたいだった
(この話が本当ならラミリスの姿にも説明がつく…)
ラミリスを観察してみる
金色の神々しい三つ編みの髪、背中から生えた羽、エルフを思わせる尖った耳、黒い丈の短いワンピース
ファンタジーだ
そのようなことを思っていると
ぐぅぅぅ~
ラミリスからマヌケな音が聞こえた
「お腹すいたわ~。ねぇあんた、なんか美味しいもん持ってない?」
「持ってないですね。よかったらうちに来ますか?」
「いいの?!やった!やった!」
ラミリスが飛び回る
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「美味しい美味しい!」
ラミリスはおにぎりを食べていた
よっぽど美味しかったのか目が輝いていた
(このおにぎりはどこに消えていくのだろう…)
降谷は思った
おにぎり一つがラミリスのとても小さなお腹にどんどん消えて言っているのである
おにぎりは何処へ…
そんなこんなで考えているとラミリスが完食したようだ
「はぁー美味しかった!!テンペストのも美味しいけどおにぎりっていうのも美味しいわね!!」
満腹になって満足したようだ
俺はもう眠いうとうとしてきた
「ありがとね!もうあたしは出かけるからちょっとだけいいものあげるね!じゃあね~!」
そう言いラミリスは窓から出ていった
「いいもの…?まぁとりあえず寝よ」
コトン…
チュンチュン…
鳥の鳴き声で目覚める
「ふあぁぁ…よく寝た…今日は、午後からポアロか」
ベットから降りてリビングに向かう
(あれだけ疲れていたのに体が軽いし楽だな~)
睡眠時間は決して長くないのに体が軽くなっていた
「ん?」
テーブルの上に何かが置いてあった
「これは…ブレスレット?」
テーブルの上にあったのはブレスレットだった
金色と青色の混ざった不思議な色の石が繋がっていた
何故かそれを本能的に身につけようと思った
身につけると初めて身につけたにもかかわらずしっくりした
(鶴の恩返しならず…精霊の恩返し、か…)
ポアロにて
「安室さんそのブレスレットどうしたんですか?」
梓が質問してきた
「ああこれですか?ちょっと人助けをしたところお礼で貰ったんですよ」
「へー」
(まぁ“人”助けじゃないですけどね…)
実は4徹だった降谷さん
とにかく疲れていた。なのでラミリスのこと割とすぐ受け入れていた。後日、公安の仕事でミスをし、敵に銃を撃たれたが何もなかった。代わりに身代わりにでもなったかのようにブレスレットが粉々に砕けていた。
ちなみにその砕けた石はお守り袋に入れてある。最近いいことがたくさん起こる
うっかり見られたラミリスさん
やっべ見られた!と思ったけど焦りより空腹が勝った。降谷さん特製のおにぎりが美味しすぎて気分が最高になった。疲れていたにも関わらずおにぎりを作ってくれたお礼に自分の魔力をちょっと込めたブレスレットをあげた。
見た目は弱そうでも精霊女王であり魔王であるのでブレスレットの性能は抜群。砕けても性能は少し下がるが保てるのでお守り袋に入れて身につけていたのは正解だった
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