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二年間も体育祭をサボってきたので、体育祭の練習量というものを舐めていた。朝練から始まって、昼休みもやるクラスがあったり。体育の時間は全てそれに当てられ、放課後練習なんてのもあったりする。
俺達三年生の種目は三つ。クラス対抗リレー、借り物競走、大縄跳び。それからクラスで紅白別に二人選出されて参加する、紅白対抗リレーという種目もある。ちなみに、応援団なんかもあるわけで。俺がそんなものに参加するわけもないのに、大翔が応援団長になったものだから無理やり引きこまれた。悪魔め。
渉の参加種目を聞いてみたら、一年生はクラス対抗リレー、騎馬戦、玉入れという三つ。そして、俺と同じ紅白対抗リレー。どのような手を使ったのかわからないが、≪紅組≫になって大翔率いる紅組応援団に入団してきた。
授業をさぼってばかりで、俺としか絡まない不良常習犯の渉が応援団に入ったことは、女子たちの間で大きな話題となった。だから紅組応援団の女子率が異常に多くなったことは、こいつが原因としかいえない。しかも、大翔の独断で副団長にされた。
「お前、なんで応援団に入ったんだよ?」
応援団の顔見せの帰り道。その理由を訊ねてみた。するとしれっとした顔で、「あんたと一緒にいられる時間が増えるだろ」という回答を頂いた。
二人でのいつもの帰り道、そんなことを言われて嬉しくないわけがない。照れ笑いを浮かべていれば、手を繋がれた。握り返してみると、相手もさらに強く握ってくれた。それでも、胸の奥にある期限への不安は消えない。
あと数カ月しかいられない、自分で自分の手の甲に爪を立てた。俺の感情なので、渉には関係ない。
体育祭の準備や練習が本格的になり始めると、さらに色々なことが決まりだした。
大翔と俺は紅白のリレーの選手に選ばれ、渉も選ばれたとメールが来たのはついさっき。朝練が始まり出してから彼の家に泊まることができなくなったので、会えない間はメールでのやりとりとなっている。
そうして放課後の応援団の練習後、一緒に帰る。だが、帰りの間しか傍にいられない。疲れすぎて寝たくて堪らないし、一日中の汗とかで風呂にも入りたい。
選手として選ばれたとメールが来たのを見て、これでまた一緒にいられる時間が増えたと嬉しく思った。その反面、会ってもキスぐらいしかできないわけだし、余計苦しむだけだと枕に向かって呻き声を漏らした。
性欲も抱かれたい気持ちもある。けれど、体に力が入らない。たった一日でも休めばいいじゃないかという話だが、それよりも体育祭の練習がしたいという気持ちと疲れにかき消される。しかも渉の方は副団長だからこそ、疲れることも多いだろう。無表情でありながら、ため息が多くなっているのがその証拠だ。
今日の放課後、紅組リレーの顔見せがあると大翔からいわれて頷いておく。
昼休みのチャイムが鳴ったので、急いで階段をかけあがり屋上へ向かう。体育祭が始まってから、弁当を作る時間も体力もないので、二人して買い弁になっている。バッグには自分の分のコンビニ弁当しか入っていない。
屋上の扉を勢いよく開けると、渉の方が先にきていた。煙草を吸わずに、仰向けになって目を閉じている。寝息をたてている男の前髪を、秋風がさらった。
俺が相手の隣に腰を下ろして、起きない様子に「なんだよ……」とケチを漏らした。
渉の薄い色をした唇に視線をやって、誰もいない屋上を見渡す。それから、そっと唇を重ねようとして……やめておく。今したら止まらなくなりそうだし、こいつだって疲れて寝てるんだから邪魔をしたら悪い。
近づけた顔をはなそうとしたとき、顎を掴まれる。何事と思うよりも先に、俺の唇に渉の唇が押しつけられた。
「ふっ、んむっ、んあぁっ……はぁっ……」
接吻を浴びせてくる彼が身を起こして、俺を圧倒するように体重をこちらにかけてきた。相手の頭に手をまわして、角度を斜めにしてさらに舌を奥で絡ませ合う。
「んんっ、んぁっ……」
押し倒されて、しばらくの間二人でキスだけを交わした。以前だったら腰を押しつけて来たのに、今日はそれがない。
紅白の組み分けが行われてから早くも一週間が過ぎたが、七日間もキスしかしていなかったことに驚きを隠せず。さらに強く相手を抱きしめた。
一週間に最低でも三回はする。押さえられない熱に導かれて、性欲と愛情が混ざり合ったセックスばかりしている。なのに、一週間もお預けとか……ありえねぇ。
「渉……なぁ、しようぜ……」
自分から誘いの言葉を吐くのは初めてではないが、五本の指で数える程度しかない。彼の方が求めてきて止まないからだ。それに甘えているといったらまさに言葉通りだが、俺だってしたいと思っている。ある意味、渉からの誘いは羞恥に口ごもる自分のためを思ってのことだろう。
その言葉に彼は頷くと思っていた。しかし首を振って「悪い、疲れているから……」と俺の額に口付けた。相手は身を起してあぐらで座ると、あくびをしながら校庭の方に視線をやった。
「昼飯食おうよ……」
「あぁ……うん……」
自分のバッグからコンビニ弁当を出す。渉も購買で買ったパンを出して食べ始めた。コンビニ弁当は冷たくて、味付けが合わない。
視線を向かいの相手にやれば、相手も俺を見つめていた。
「鳴海さんの弁当が食いたい……」
「仕方ないだろ、疲れてんだよ」
「まぁね。忙しいから終わるまで、いろいろ我慢だろ……」
「え!」
「なに?」
「いや……いやいや、なんでもない!」
色々ってセックスもお預けってことかよ!と口にしようとして、喉元で留まらせた。
体育祭まであと二週間近くある。それまで我慢できるのか不安で仕方なかったが、渉の普段より青白い顔に気付いてそれ以上何も言えなかった。
俺が我儘をいって紅組にさせて、応援団にまで入れてしまったのだ。毎日二人してくたくたになって帰るのに、それでセックスもしようとかいえるわけがない……。
「今日、紅白リレーの顔合わせって知ってるか?」
「あ、そうなの?」
「てか、紅白リレーの練習も増えたら、俺達疲労死すんじゃねぇ?」
「……そうだね」
話を盛り上げようと俺から話題をふってみるが、渉は曖昧に受け答えするだけ。味気ない飯がさらに味気ないものになる。一緒にいるはずなのに、一人で飯を食っているようだ。
隣をみれば、既にあんパンとメロンパンを完食して一服している。その姿に何故か申し訳ない気分になった。
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コメント
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みぅです🤍🥀 体育祭の練習、めっちゃ忙しそう…! 渉、副団長になってまで一緒にいる時間増やそうとしてるとこ、もう執着の塊って感じで大好きだよ。 でも疲れで♡♡♡もお預けって、あの二人には結構キツイよね…キスで済ませる場面、切なくて胸がぎゅってなった。 「あと数カ月」って期限の不安がずっとあって、それでも一緒にいたくて無理しちゃう感じが、もう…。この焦れったい距離感、たまらないです。続きがすごく気になる…!