テラーノベル
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24
午後の授業を知らせるチャイムが鳴ったので、気まずい沈黙を終えて教室に戻る。
日に日に体育祭ムードが高まっていくことがわかる。汗臭い匂い、黒板の右端には≪体育祭まであと十四日≫とカラフルに描いてある。
俺が席につくと同時に数学の教師が教壇に立った。教科書の一九〇ページという言葉をきっかけに、机に伏せて目を閉じる。朝練のせいで眠くて仕方ない。渉の隣で寝ればよかった。いや、あいつの隣で寝るなんてこれから無理かもしれない。
「二週間かぁ……」
居眠りに入ると、五限から六限の間まで一気に時間を飛ばしてしまった。大翔の「リレーの顔合わせいくぞ~」という目ざまし時計に起こされ、急いで体操着に着替えて校庭まで走る。
それぞれの応援団長がまとめる係になって、選手たちを呼びよせる。大翔は校舎側近くのサッカーゴールの下で皆を集めた。その中にはもちろん渉もいるわけで、自然に隣へやってきた。
学校の碧いジャージ。中には白い半そでシャツ。彼はジャージ下の裾を太股までまくっている。俺もというか、男子のほとんどはそういう格好だ。
「鳴海さん。なんか顔赤いけど、どうしたの?」
渉が俺の顔を覗き込んでくるので、「別に」と顔を逸らした。
隣に立っているだけで、動悸が速くなっていくのがわかる。昼休みのキスが脳裏をよぎっては、股間に熱が集まりそうになった。その場で足踏みをしなければならないほど。
大翔にウルサイと注意されながら、リレーの説明を受ける。
「いちおう、リレーは男女別々。一人が走る距離は100m。最初女子が競った後に、途中から男子にバトンが渡される。順番は男女それぞれで決めて行こう。女子は三年の中でリーダー決めて、それで決めていってくれないか?」
彼の提案に、三年の女子一人が名乗りを上げた。たしか、ダンス部の部長だった気がする。男子は大翔が順番を組んでいくことになり、男子二十六人の100m走のタイムを見ていく。驚いたのは一番が渉のタイムで、二番目に俺のタイムが並んでいたことだ。大翔は上から数えて六番目。
「へぇ、さすが逃げ足だけは速いことあるなぁ」
「うるせぇ!」
「それじゃ、アンカーは渉にしよう。そんで、バトンを渡す役は鳴海でいいな」
「えっ……」
「なんだよ?」
「いや……いやいや、なんでもない!」
渉にバトン渡すとか、冗談じゃないというのが正直な気持ち。だってそうだろ。バトン渡すときに触っちゃったらどうすんだよ……ムラムラするに決まってる。
しかし俺の思惑をよそに、彼が適当にメンバーの配置を決めていく。走ってから微調整を加えていくということで、試し走りをすることになった。
一番手は大翔で、本当に軽くという感じで走り始める。校庭中心にある楕円のレース線が半分でちょうど100mだから、半円で左右に15人ずつ分かれてバトンの順番を待つ。
渉に触れなければいいのだ、それでいい。難しく考えることはないと、考えているうちに順番がまわってくる。俺の前の走者は、二年生で一番足の速い奴。バトンを受取り、本気半分で足を進める。
視界の端に白髪が映って、足が自然と速くなる。パブロフの犬かと思いながら、渉が直前まで来た時。バトンを持っていた左手を相手の右手に伸ばす。
「渉!」
右手がバトンを掴んだその指先が、俺の指先に触れた。その瞬間、体をぞくっとした熱が駆け巡った。
「うわぁっ!」
相手がバトンを完全に握る前に、俺が手を離した。そのため、バトンが土の上に転がる。
渉が疑問の眼差しを向けながらそれを拾うと、ゴールするために走って行ってしまった。残された俺は顔が赤いことを悟られないように、口元を右手で覆って大翔達のいる反対側のバトンパスの場所に移動する。
「鳴海、お前なにしてんだよ~」
「わりぃ……」
走り終わってから皆大翔の前に集まると、小言を喰らった。すると、隣に渉がやってきてバトンを返す。
「さっきから顔、赤い。もしかしたら具合悪いのかも。ね?」
「あぁ……」
そうじゃないんだよなぁ……。俺は後頭部をかきながら、大翔に言った。
「あのさ。渉の前っていうの、誰かと交換してもらってもいいかな?」
「はぁ、なんで?お前たち、コンビネーションばっちりじゃん」
「いや、なんか渉だとやりにくい……正直」
「なんだそれ?まぁ、いっつも一緒にいて、リレーでも一緒じゃな。それじゃ、一年の坂口と交代するか」
それから走った様子をみて、俺以外のメンバーの配置を変えていく大翔。じっと見つめてくる視線に気付いて、横を向く。渉の不機嫌そうな顔に、なんだよといって相手からさり気なく一歩退いた。
「俺なんかした?」
「え……なんかって、何もしてないだろ?」
「だよね……怒ってる?」
「いやいや、気のせい気のせい。たぶん、疲れてんだよ……」
納得しきれない彼が口を開く前に、大翔の解散の号令がかかる。
コメント
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おお~、体育祭練習回、めっちゃ甘酸っぺえし照れるわ!🔥 バトン渡すときの「触ったらどうすんだよ…ムラムラする」とか、鳴海くんの自意識過剰すぎるだろって思わず笑ったけど、実際に指先触れただけで「うわぁっ!」って手離すとこ、めちゃくちゃ青春の焦りって感じでグッときた。渉くんが不機嫌そうな顔して「俺なんかした?」って聞くシーンも切ないし、二人の距離感がたまらん。次の話、どうなるんだろうな~!