今月もまた、深澤は阿部の部屋にいた。
日曜の夜、ちょっと遅めの時間。
いつも連絡は深澤から。
LINEに「空いてる?」とだけ送れば、それで成立する関係。
服を脱がされる手際はいつも通り。
唇が重なり、舌が絡み、
阿部の指は、深澤の身体のどこがどう反応するかを、正確に理解している。
「……っ、阿部、……そこ、やだ……っ、っ、ん……!」
「やなのに、こんなになってるの、変だね」
ニヤリと笑いながら、阿部は深澤の中をゆっくりと撫でる。
心地いい温度と、悪気のない声。
深澤は何も言い返せない。
快感だけが残る。
そのまま、一度、二度と果てて、息を整えているときだった。
阿部がふと、ベッドに腰かけながら、言った。
「……来月も、来るの?」
「は? なに急に」
「いや、別に。来てもいいし、来なくてもいいし。俺はどっちでも」
その言い方が、深澤の胸をざらつかせた。
(“俺はどっちでも”って……なんだよ)
文句じゃない。でも、優しさでもない。
ただ、割り切られた一線を感じた。
深澤はシーツを掴んだまま、小さく息を吐く。
「……じゃあ、俺が行きたいなら、また来るわ」
「うん。そうして」
いつも通りの夜。
いつも通りの会話。
でも、心の奥が少しだけ軋んでいることに、深澤自身が一番気づいていた。
⸻
🌙後日―
「今月も結局来たんだね」
玄関で笑う阿部に、深澤は黙っていた。
「……別に。他に予定もねーし。暇だし」
「ふうん。まぁいいけど。」
阿部が口元だけで笑う。
からかわれてるのに、深澤は怒れない。
なぜなら本当は、“触れてほしくて来た”のだから。
その夜もまた、深澤は何度も阿部に抱かれた。
どれだけ感じても、何回果てても、
満たされるのは身体だけ。
朝、ベッドの中。
深澤がぽつりと呟いた。
「なあ……阿部ちゃんってさ」
「うん?」
「誰でも、こんなふうにすんの?」
阿部は、答えなかった。
でも、答えないことが答えだと深澤はわかっていた。
(……俺、もうとっくに終わってんな)
月に一度の関係。
それで満たされると思ってたのに、
いまじゃ、“来月まで待てる気がしない”。
深澤は、気づかないふりをしながら
阿部のぬくもりに、今日もすがっていた。
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