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闇夜に溶け込む屋上。
冷たい風が吹き荒れ、圭吾の体を切り裂くように吹きつける。
彼はひとり、崩れそうな心を必死に繋ぎ止めていた。
「志乃も、美月も……なぜ俺を裏切った?」
拳を強く握りしめるが、痛みは消えない。
胸の中で燻るのは、愛と裏切りの狭間に生まれた憎悪と悲しみ。
鏡の中の自分――影の圭吾が静かに、しかし冷酷に囁く。
《お前は弱い。人を信じて痛みを受けるのは愚かだ。
力でねじ伏せろ。お前が守るべきものなど、もう無いのだろう?》
その声は魅惑的で、彼の心を確実に蝕んでいく。
圭吾の中の光は揺れ、暗闇に飲み込まれそうになる。
「違う……俺はまだ、諦めない!」
瞳に浮かぶ涙を必死に押さえつけて、
「俺は……俺は君たちを失いたくない。
たとえ裏切られても、俺の心はまだ君たちのそばにある!」
その言葉に、自分自身も驚くほどの力が宿る。
だが影の囁きは止まらない。
《お前は弱者だ。強くなれ。
そうすれば裏切りも恐れない。
誰もお前を傷つけられなくなる。》
圭吾は唇を噛み締める。
「強くなりたい……でも、それは孤独になることか?」
苦悩の果てに、彼は空を見上げる。
「闇を抱えながらも、光を掴むことはできるのか?
俺は……本当に変われるのか?」
胸の奥で燃え上がる想いと、影の冷たい誘惑。
揺れ動く魂の戦い。
それでも、圭吾は歩みを止めない。
「答えはまだ、俺の中にある――」
そう呟き、彼は夜の闇へと一歩を踏み出した。