テラーノベル
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向こうの方から激しい物音がしてきたものだから起きてしまった。
遠くの方から咆哮が聞こえる。
登子 流華「千年ちゃん!起きてたんだね」
石原 千年「流華ちゃん…一体何が起きてるの…?」
登子 流華「私にも分からない」
ゴンゴンゴン、とドアが音を鳴らす。次郎君と、子糸の心配する声がドア越しから聞こえる。
私はそれに応えるように、ドアを開ける。
丙森 子糸「流華おねーちゃん!」
赤羽 次郎「大きな音したけど、平気だったか?」
登子流華「私たちは何ともない。けど、奥の方からだよね?」
ドゴーーーン!!!!
丙森 子糸「うわっ!」
登子 流華「まただ!」
石原 千年「音がする奥の方って確か、受付とか、玄関辺りだよね?」
赤羽 次郎「ああ、確かな」
困惑する私たち。当然、何が何だか、私たちには知る余地もなかったのだ。これからどうしたら良いのか。脳の整理が出来ていない。
困惑中の私たちの前に、近藤さんが大急ぎでやって来た。
登子 流華「近藤さん!」
赤羽 次郎「お、お久しぶりです…!」
近藤 真希美「あなた達に新たにお仕事!!お客さんの避難を要請するよ!!お願いできるね?!」
赤羽 次郎「ああ、はい!!」
石原 千年「もちろんです…」
近藤 真希美「私は外のお客さんを避難させるから!あなた達はこの旅館内から玄関までお願い!じゃあ、、ま、任せたよ!!」
近藤さんは息を切らしながらそう私たちに告げて、向こうへ行ってしまった。
石原 千年「近藤さん…」
赤羽 次郎「よーし!俺らの仕事が回って来た!!これは今までのよりとても大事な仕事だ!」
石原 千年「命預かってるような者だからね」
登子 流華「私は子糸と一緒に行動するよ」
赤羽 次郎「おう!じゃあ、早速行くぞ!!えいえい、」
みんな「「「「お〜!」」」」
私は、二人の後を追うような形で、駆け足で現場へ向かう。その際に、離れないように、子糸の手を繋ぎながら走っているが、転ばないか半ば心配だった。
至る場所が壊れていて、崩壊寸前のところもある程であった。
中には、頭から血が流れていて、その旅客を救助する従業員もいたり、脚が瓦礫で押し潰され、身動きが取れない者までいた。
取り敢えず私たちは、まだ動くことが出来る旅客から玄関まで送ることにした。
そんなところに、ガシャーン!!と大きな音が玄関で聞こえた。
またしても旅客達の悲鳴と混乱している声が聞こえる。
赤羽 次郎「なあ、みんな。これって…」
登子 流華「玄関が…」
なんと、大きな瓦礫が玄関の前に落ちた。それは、常人じゃ乗り越えて行けるような大きさをしていない。
赤羽 次郎「どこかに………あ!!」
すると、次郎君は玄関の奥の角の方に潜って行けるようなある程度大きい穴があった。
赤羽 次郎「ここに案内しよう!」
石原 千年「皆さん!!こちらですよ〜!…ッはぁ……」
こんなんじゃ駄目だよね…!もっと声張らなきゃ!張らなきゃ…だけど、私は元からあまり声が出せるようなタイプじゃない。駄目だって分かってるけど。
石原 千年「玄関、、こちらでーすぅ〜〜〜ッ!!!!」
私は、大きく手を振り続けて、どこへ逃げれば良いのか戸惑っている数人を玄関の近くへ声を掛けた。ようやく、こちらに気が付いてくれた。お客さんたちは私の方まで来る。私は、ここを潜れば出られると言い、何とか、出すことが出来た。今ので疲れてしまう、他の二人は私の倍ぐらい動いてるのに。ほんとすごいな。
そんな姿を見ると、私まで頑張らなきゃ、ってなるから心の内でも引っ張ってくれまでしてくれているような、そんな気がしてさ。……負けられないね…!
よし、これで大方終わったかな?二人も終わってそうだし、他の従業員さんのヘルプに入らなくても良さそう。
丙森 子糸「流華おねーちゃんすごい!ぼくもなにかできない?」
登子 流華「子糸の仕事かぁ。そーだね、子糸のお仕事は、私から離れないこと!!手、話さないでね!!離す時は私の方から離すから!」
丙森 子糸「りょーかい!」
赤羽 次郎「流華の方は?大丈夫?」
登子 流華「私たちの方は今終わったところ」
石原 千年「…はぁはぁ、お、終わったよ、!」
赤羽 次郎「ははっ、千年はあまりこういうの慣れてないからな…でもよくやったぞ!」
石原 千年「は、はぁ、あ、ありがとう…」
登子 流華「これで旅客はもういないよね?」
赤羽 次郎「うん。奥の方も隅々見てったから大丈夫だと思う」
石原 千年「じゃあ、後は外の援助だね。……」
その他の従業員さんは皆、穴の方へ出て、外側の旅客の誘導へ向かった。
登子 流華「私たちも行かなきゃね!って…!」
また地面が揺れる。だが、今回の揺れは今までとは何か違うような…。待って、天井から物凄い音しない?上からコンクリートの破片が散らばり落ちてくる。
いち早く天井に気がついた私は、繋いでいたその手を離して、次郎君に子糸を託した。
登子 流華「次郎君!!子糸を!!」
赤羽 次郎「流華!?」
手を離し離れる頃には既に、天井が崩壊し、私のちょうど真上に降りかかってくる直前だった。
間一髪で誰も瓦礫に押し潰されることなかったが、大きな瓦礫が行手を塞ぎ、押し除けられそうにない。
石原 千年「流華ちゃん!?」
赤羽 次郎「流華!!」
丙森 子糸「流華おねーちゃん!!」
塞がれているが、声だけはくぐもって聞こえる。
登子 流華「この旅館が倒壊するのも時間の問題かもしれない!その前にみんなは逃げて!!私は大丈夫!どこか抜け出せれそうなところ探すから!!それより、みんなは旅客の安全を第一に!!」
私は、倒壊する前に抜け出せれそうな場所がないか、必死に探す。焦っていて、とても冷静じゃいられない。もしかしたら、このまま押し潰されて死んでしまうんじゃないかっていう不安がのしかかるばかりだった。
赤羽 次郎「流華〜!!聞こえないな…」
石原 千年「探しに行ったんだよ、きっと。私たちは流華ちゃんに託された頼み事、応えながら待ってようよ!ほら急ぐよ!」
千年は俺たちより早く行ってしまった。
赤羽 次郎「千年…」
あいつの雰囲気、熱があったな…。俺も頑張ろう。
赤羽 次郎「おら、子糸。絶対離れるなよ!」
丙森 子糸「わかった!」
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