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悠真の風邪も落ち着き、学校へ行けるようになったタイミングでようやく真彩は病院で検査を受け、妊娠二ヶ月目に入っている事が分かった。
「姉さん、改めておめでとうっス!」
「ありがとう、朔太郎くん」
病院の送迎を担当していた朔太郎は車に戻ってきた真彩から結果を聞いて自分の事のように喜んでいる。
喜ばしい事なのに、相変わらずどこか浮かない表情の真彩をずっと気にしていた彼は、
「姉さん……聞いてもいいっスか?」
「え? 何?」
「……俺の勘違いならそれでいいんスけど……もしかして、子供が出来た事、あんまり嬉しくない……とか?」
真彩に限ってそんなはずはないと思いつつも、やはりどうしても理由が気になっていた朔太郎は聞かずにはいられなくて問い掛けると、
「ううん、勿論嬉しいよ。だって、大好きな理仁さんとの子供だもの」
嬉しくないという事はハッキリ否定するけれど、
「……でもね、不安な事があるの」
それとは別に何か悩みがあるようで、それを話すかどうか真彩は躊躇っている。
「……あの、俺で良ければ話してください! 役に立てるかどうかは分からないけど……一人で抱え込んでても身体に障りますし、言って楽になる事も、あると思うんスよね!」
そんな彼女の不安を少しでも取り除けないかと考えた朔太郎は、自分で良ければ相談して欲しい事を告げると、
「……そう、だよね……。それじゃあ、話、聞いてもらってもいいかな?」
少し考えた後、真彩は朔太郎に今思っている胸の内を相談する事を決めた。
「……私ね、いつかは理仁さんとの子供が欲しいって思ってはいたんだけど、いざこうなると、やっぱりどうしても素直に喜べないの」
「それは、どうしてなんスか?」
「……悠真の事が、気掛かりなの」
「悠真の?」
「うん。今はまだ難しい事は分からないだろうから弟か妹が出来たら純粋に喜ぶと思う。けど、成長していくうちに、疎外感を感じたりしないかが心配なの」
「あー、そうか。再婚とかで兄弟が出来ると、そういう風に感じる子供も少なからずいるかもしれないっスもんね……」
「理仁さんはきっと分け隔てなく接してくれるから、そう感じる事はないかもしれないけど、やっぱり、いざ子供が出来たってなると、その事ばかり考えちゃって、素直に喜べなくなっちゃったの」
「そうだったんスね。でも、俺は大丈夫だと思いますよ。姉さんと理仁さんの愛情を受けて育つんだから、疎外感なんて感じないと思う」
「朔太郎くん……」
「それと、やっぱり不安に思ってるなら、それを理仁さんにも話すのが一番良いと思います。俺だと話聞くだけになっちゃうけど、理仁さんなら、姉さんの不安を全て取り除いてくれると思うから」
「……そう、だよね。ありがとう、朔太郎くんに聞いてもらえて少し心が軽くなった。理仁さんが帰って来たら、話してみるね」
「いえ、役に立てたなら良かったっス! それじゃあ買い物して帰りましょうか」
「そうだね」
ずっと一人で考え込んでいた真彩は朔太郎に話した事で少しだけ胸のつかえが取れて心が軽くなり、仕事で地方へ出ている理仁が帰宅したらきちんと話をしよう決心出来たのだけど、真彩を悩ませる出来事はここから更に増える事になるのを、この時はまだ誰も知る由がなかった。