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オルマナの記事は、取材を受けてから程なくして世に放たれた。

事前に確認していたため、その内容は知っている。しかし、紙面に載っているのを見ると私の心も少し踊ってしまう。


「よく書けているね。まあ、多少の脚色はあるみたいだけれど……」

「それは仕方ないことよ。私の事情を赤裸々に話してしまうと、快く思わない人がいるもの」

「ふむ、その辺りに気を遣うことが、ジャーナリズムとして正しいかというと、微妙な所であると思うけれどね?」

「それはそうかもしれないけれど、あの子に危害が及んだりしたら駄目でしょう?」

「ああ、僕も君の判断に同意していないという訳ではないよ。ただ、もどかしいと思っているだけさ。糾弾できるなら、糾弾したいからね」


ギルバートは、エルシエット伯爵家の私への扱いについてひどく憤っていた。

その気持ちに関しては、嬉しく思う。そして私も、彼と気持ちは同じだ。糾弾できるものなら、糾弾したい。

だが、そういう訳にはいかないのが現状だ。エルシエット伯爵家と全面的にやり合えば、被害を受けるのは恐らくこちらだ。流石に、貴族に勝てる訳がない。


「そういえば、夫人はこの記事のことをご存知なのかい?」

「もちろん、一番に知らせたわよ。喜んでくださっていたわ」

「ふむ、それは良かったね」

「ええ、でも彼女もエルシエット伯爵家の扱いに関しては不満かもしれないわね……」


私の伯母様――ランバット伯爵夫人は、今でも私に大変よくしてくれている。お母様に向けられなかった愛を向けているのか、それは溺愛とさえいえるものだ。

そんな彼女は、エルシエット伯爵家への憎しみを深めているような気がした。私を愛せば愛す程に、その憎しみは深くなっているのかもしれない。


「でも、伯母様様には迷惑をかけたくないし、エルシエット伯爵家についてはもう触れないつもりよ」

「……この記事は、エルシエット伯爵家の面々の目に入るのだろうか?」

「まあ、入らないということはないでしょうね。でも、あちらも私に興味なんてないだろうし、無視するだけなのではないかしら?」

「それが一番いいだろうか」

「ええ、そうだと思うわ。まあ悪くは書いていないし、多分そうなると思っているのだけれど……」


記事について心配だったのは、エルシエット伯爵家のことだった。

この素晴らしい記事を見て、彼らが何かをしてくるかもしれない。その可能性だけが怖い所だ。

しかし、きっと大丈夫だろう。特に悪く書かれていない以上、彼らも何かしようなんて思わないはずだ。もう私は、遠い地にいる訳だし。




◇◇◇




「……まさか、こんな手紙が届くなんてね?」

「恐れてしまったことが、起こってしまったということか……」

「ええ、近況報告なんて生易しいものではないでしょうね……」


私の元に、エルシエット伯爵家からの手紙が届いた。

その手紙の封筒を見ながら、私はギルバートと話していた。当然のことながら、二人とも気分は重い。この手紙は、届かいないと思っていたものだからだ。

両親や妹が、叱咤激励の言葉を綴っているとは思えない。十中八九、余計なことが書いてあると考えていいだろう。


「まあ、読んでみるしかないけれど…………これは?」

「……どうかしたのかい?」

「ああいえ、いきなり予想外の内容で……」


そう思って手紙を読んだ私は、文面の綺麗さに驚くことになった。

冒頭から私に対する罵倒の言葉が綴られていると思ったが、そこには丁寧な前置きが記されている。

定型文のようなものではあるが、そんなものが書いてあるなんて想像もしていなかった。私が出て行ってから大分経っているので、エルシエット伯爵家の面々も何か心境の変化でもあったということだろうか。


「……ああ」

「アルシエラ?」

「ギルバート、読んでみて。一瞬血迷ったことを考えてしまったけれど、やっぱり人というものはそう簡単に変わらないみたい」

「ほう……ああ、なるほど、これは確かに良い手紙ではないな」


手紙を見て、ギルバートは目を丸めていた。

それは、当然のことだろう。手紙の内容は非常に不快なものであるが、私も驚いている。その手紙は、普通に考えるとまず送られてくるはずがないものなのだ。


「驚いたな。まさか貴族がお金の無心なんて……」

「ええ、そうなのよ。なんというか、エルシエット伯爵家はお金に困っているみたいね? 一体何があったのかしら?」

「伯爵は浪費家だったのかい?」

「いいえ、そういう訳ではなかったと思うけれど」


手紙には、金の無心が綴られていた。

恐らく私が成功しているという記事を見て、金づるになるとでも思ったのだろう。なんとも、みっともないものである。

ただ、エルシエット伯爵家が私に頼らざるを得ない程にお金を失う理由がわからない。一体あの家で、何が起こったというのだろうか。


「調べてみる必要があるだろうか?」

「そうね……よくわからないけれど、相手が仕掛けてきた以上、こちらも動いた方がいいのでしょうね?」

「よし、それなら僕の方から各所に聞いてみるよ。何人か辿れば、きっと情報は手に入るだろう」

「ええ、お願いするわ」


私の言葉に、ギルバートはゆっくりと頷いてくれた。

本当にこの夫は頼りになる。私はそんなことを思うのだった。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

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