目標【酔ってネクタイを緩めれなくて彼に緩めて貰う】
丁度11時を過ぎた頃……
「お前飲み過ぎw」
金曜の夜に居酒屋で会社の飲み会を断れず、そのままお酒に飲まれて二次会もグダグダになっている。
「……だってぇ、お前何処まで歩いたん?」
「は?意味わかんねぇコイツww」
今日は同期が近くの席に座って常に会話してくれるから、つい楽しくて酒弱いのに飲み過ぎた。
「さすがに酔いすぎだろww」
「先輩が飲ませ過ぎるからですよぉ?」
「だって酔ってる方が愛嬌あって可愛いじゃんね?」
フラフラしながら先輩がやって来て、俺の肩に手を置くと、にへらと笑って俺のことを可愛いと何度も口にする。
「……先輩も酔ってる?」
「アホぉ!俺が酔うわけねぇだろ!」
「ぜってぇ酔ってるわww」
賑やかで騒がしい会話を聞いていると、ふと彼氏のことを思い出してスマホを取り出す。
「んんぅ~」
ポチポチ……
「おっ、誰に連絡すんの?お前酔ってるしLINEより電話のが良いんじゃね?」
確かに文章が変になるだろうし、電話の方が分かるだろう……
「でんわ……電話」
プルルルル……
いつもは何度電話しても中々仕事で出れない彼氏だけど、今日の彼氏はワンコールで出た。
『はい、もしもし……どうした?』
愛しい彼氏の声が聞こえて、無意識に気持ちが上向きになる。
「あっ、やっほぉ」
『今日は随分遅いな?飲み会?』
「そぉ、当たり!あんねぇ……んとねぇ……何言おうとしたっけ、?」
声を聞けたことに嬉しくて舞い上がりすぎて、何を話そうとしたか忘れてしまった。
「お前相変わらずアホだなぁ……w」
「アホじゃねぇし!…今日は遅くなるよぉ」
とりあえず遅くなることだけ伝えて電話を切ろうとすると、急に同期の光平が手を掴んだ。
「ぁ、もしかしてシェアハウス?いいね……俺送ってこうか?」
「んーん、付き合ってんの」
何も考えずにふわふわした頭のまま答えた。
「……ぇ、マジ?男もいけんの?」
「んん~?とりあえずぅ……じゃあねぇ」
『は?おい、!』
ピッ……
「んぅ~……」
声を聞けた嬉しさの余韻と、コントロール出来ない酔った身体で、光平の膝の上にポスッと倒れた。
「おい、乗っかってくんなよ、w」
「やぁだ…」
今日は何だか甘えたい気分だ。……酒のせいかな……だよな?
「……じゃあ……まだここいる?」
「やぁだ……んぅ」
「だよね……おいで……すいません!ちょっと抜けます!!」
光平が他の同期や先輩に声をかける。相変わらずしっかりしてんなぁ……
「おっ、酔っぱらいの看病よろ~!」
「ざけんなww……んじゃまぁ、立てるか?」
「ん…うん、うん、立てる…… 」
「おっけ、手こっち回して」
ガシッ……ギュッ
「んん、ありがとぉ」
「一旦外出るか……」
何だろう……光平も酔ってるみたいだ……俺も酔ってるし、クラクラしてるから見間違いかもだけど、顔が赤い気がする。
ガラガラ……パタン
「ちょっとこっちの方来てよ」
「ん、……眠い」
「大丈夫……気持ちいいだけだからさ」
「……んぅ~~……はぁ」
俺は光平から離れて伸びをすると、裏路地のような狭い場所におぼつかない足取りで入っていった。
「お前……さぁ、他の彼氏いるんなら準備出来てるよな?……ちょっと使わせてよ」
カチャカチャ……
急にベルトを外される気がして、不快感が襲って来た。
「……ん、やぁだぁ!……んん”!」
「ちょ、おい、暴れんな!」
ドカッ……
「いたぁ」
「ぁ、ごめっ!」
急に殴られたかと思ったら、大好きな彼氏の声が聞こえたような気がした。
『遥斗!………………あ”?』
「はぁ……めんどくさ……しゃあねぇ」
光平は頭をぐしゃぐしゃ撫で回して俺を見た後、そのまま彼の方へ歩いて行った。
「ぁ、ぇ、??」
「…コイツ~……結構誰でも良いらしいですよ?……じゃあ」
ポンッ……
「狙ってんの…俺だけじゃないんで…ボソッ」
『お前っ!』
「遥斗!バイバァ~イ」
いつもの明るい声に戻った光平は俺にブンブン手を振ると、そのまま皆のとこに戻って行った。
「ばぃばぁい~……どぉしたの?……何してんのぉ?」
彼が俯いて拳を握っていたから心配になって、声をかけた。
『……帰ろ』
彼の声は冷たくて何だか怖かった。
「やぁだ……怒ってるのぉ?……んん”!」
グイッ……
彼に引っ張られる。
『…はぁ……頼むから家に帰ろ?』
「ん~……分かったぁ、おんぶしてぇ」
あんまり怒ったことない彼が、怒ってるかもしれないと不安になりながらも、ちょっとだけ甘えてみた。
『はい、肩貸すから……早く行くぞ』
「……ハァイ」
彼は意外と怒ってないのかもしれない。彼が途中で繋いでくれた手は優しくて暖かかった。
さすがに人前では手を繋がないけど、誰も居なくなるとスキンシップが多くなるところも、彼の好きなところの一つだ。
『ただいま。』
「ただいまぁ~!帰って来たぞぉ……」
『ほら靴、脱いで』
帰って早々床にご挨拶する。冷たくて酔った身体には気持ちがいい。
「床がきもちぃねぇ~……冷たぁ」
『脱がすよ?……足動かさないで』
「やぁ~……えっちぃ……」
上目遣いで彼を見つめると、彼は俯いておもむろに大きめのため息を付 いた。
『……。はぁ~~~!』
何だかつまらなくて我が儘を言ってしまう。
「律~……首苦しい、取って」
『首、ネクタイ?』
「そぉ~……だめ?」
『はぁ……』
シュルッ……シュルッ
『どう?まだ苦しい?』
彼は首を傾げて覗き込んでくる。
……もうちょっとだけ……
「くるしくない~ありがと……あとこれも」
首元のボタンを指差す。苦しい原因はこれでもあるからね……!
『ふぅ~……』
プチ……プチ
「ふぁ~……ありがとぉ……」
『はいよ、なぁ……いや』
眠くてあくびをすると、彼が何かを言いたそうな顔をしていた。
「んー? 」
『水持ってくる』
「んー……うっ」
『ぇ、吐きそう?これ……袋』
「うっそぉ!あははwww」
彼は何も言わずに奥に入っていって、戻ってくると水を渡してきた。
……んだよぉ……ジョークじゃんね?
『……水』
「ん!……ゴクゴク……はぁ」
『垂れてる』
彼が近付いてきて唇に触れたので、いつものかと聞き返す。
「ん?ちゅぅ?」
『……』
「なんでせんの!……やぁだ~!」
何も言わずに固まっているのが気に食わない。
『今日は着替えて寝ような』
あまりに冷たい態度に腹も立つけど、ワケわからん不安が募って彼に質問した。
「……嫌いになったん、?」
『……』
彼はずっと何も言わずに俺を腕を引っ張って、寝室の方に連れていく。
「んぇ、?どこ行くのぉ?……引っ張るの痛い……怒るのぉ?あははw」
ドサッ
急に天井が見えて彼が上に乗っかってる。
『……ふぅ~』
「ぇ、?何?えっちぃのぉ?……ははww」
ガッ……
「んぶっ……??」
彼が急に手で俺の口を塞いだ。
『アイツ誰?……付き合ってること知ってるよね?……危機感ねぇの?』
パッ……
「ぷはぁ……苦しいよ、もぉ!」
睨むような目つきのまま俺を質問責めにする。
『んね、聞いてんの?』
「今日のそうちゃんやぁだ……もぉ寝る!」
『は”ぁ……』
シュルシュル……ギュッ!
俺が顔を背けて寝ようとすると、腕を持ち上げられて離れなくなった。
「んへぇ?……縛ってんのぉ?なんでぇ?」
『お前明日休み取ってるよな?……マジで立てんようにするけど……良いよな?』
狼みたいにギラギラさせている目に、キュンとして目が離せなくなった。
「……へんたぁい//」
『お前が悪い……』
ちゅっ
『今日は寝かせんつもりだけど……もし途中で飛んでも起こすかんな?』
今日はどんだけ泣いても鳴いても、助けてくれなそうだ。
翌日……どこもかしこも痛すぎる。
休み取っといて良かった……
『水取ってきた』
「昨日……ごめん…、な?」
『あぁ……覚えてんの?』
「ごめん」
『次あんだけ煽ったらマジでブチ♡♡すからな?……それと他の奴と何か関係持ったら…怒るじゃすまねぇからな?(圧)』
「はい、ごめんなさい……」
今日は彼とお家でイチャイチャしようと思います。
大変申し訳ありませんでした。