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第112話 「聖地へ」2027年8月。
夏の甲子園。
組み合わせ抽選会。
全国49代表の主将が集まる。
柳城高校主将・中村翔太も、その一人だった。
抽選の結果。
一回戦の相手は、北北海道代表・旭川大北高校。
堅い守備が持ち味の好チームだった。
抽選会場を出ると、氏原記者が待っていた。
「中村君。」
「初戦の相手が決まりましたね。」
中村は笑顔で答える。
「どこと当たっても同じです。」
「柳城高校らしい野球をするだけです。」
氏原記者は笑顔でメモを取った。
「さすが福間監督の主将ですね。」
甲子園練習。
柳城高校の選手たちは、初めて見る大観衆のスタンドに圧倒されていた。
「広い…。」
「テレビで見るより大きい。」
一年生たちは思わず声を上げる。
福間監督は静かに言った。
「甲子園は特別な場所ではありません。」
「野球をする場所です。」
「グラウンドの大きさも、塁間も、マウンドも同じです。」
「いつもどおりプレーしてください。」
その一言で、部員たちの表情が和らいだ。
一回戦当日。
朝から快晴。
アルプススタンドには柳城高校の応援団。
吹奏楽部。
チアリーダー。
保護者。
卒業生。
塁と史陽、舞も応援席に座っていた。
プレーボール。
初回。
柳城高校が先制。
送りバント。
盗塁。
スクイズ。
わずか三球で一点を奪う。
福間監督らしい野球だった。
先発・山本は安定した投球。
七回まで無失点。
八回。
二点を追加。
3対0。
九回。
最後の打者を三振。
ゲームセット。
柳城高校。
3対0。
甲子園初戦突破。
試合後。
アルプススタンドへ深く一礼する選手たち。
大きな拍手が送られる。
インタビュー。
主将・中村が答える。
「今日勝てたのは、ベンチも応援席も一つになれたからです。」
「でも、僕たちの目標は一回戦突破ではありません。」
「日本一です。」
その言葉に。
アルプススタンドからさらに大きな拍手が起こった。
二回戦。
相手は四国代表・高松商業高校。
序盤から接戦。
一対一。
八回。
柳城高校。
二死二塁。
代打がセンター前へ運ぶ。
二塁走者がホームイン。
2対1。
九回裏。
相手の最後の打者。
打球はライトへの大飛球。
スタンドがどよめく。
ライトがフェンス際でジャンプ。
捕球。
ゲームセット。
柳城高校。
二回戦突破。
ベスト16。
試合後。
宿舎へ戻るバス。
選手たちは疲れ切って眠っていた。
啓介は静かに窓の外を見る。
「先生。」
福間監督は前を向いたまま答える。
「はい。」
「あと三つですね。」
福間監督は少しだけ笑った。
「違います。」
啓介も笑う。
「そうでした。」
「次の一試合ですね。」
福間監督は頷いた。
「それだけです。」
柳城高校。
二回戦突破。
福間監督最後の夏は。
まだ終わらない。
第112話 終
コメント
1件
福間監督の「甲子園は特別な場所ではありません。野球をする場所です」という言葉に、じんと来ました。あの大舞台で選手たちの緊張をほぐす、信頼と落ち着きが伝わってきますね。啓介さんとの「あと三つ」「次の一試合」のやりとりも、二人の距離感と哲学が詰まっていて好きです。一つひとつのプレーが丁寧に描かれていて、柳城高校の野球そのものが見えるようでした。まだまだ続く夏、応援したくなります🌷
パンチングマシーンニキ
103
shima7a
139
#前世
shima7a
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33