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ごめんねみんなそして短い
(……あれ、冬弥……?)
ふかふかの布団の中で目を閉じ、寝たふりをしながら、オレは薄目を開けてそっと隣の様子を伺った。
てっきり、オレを安心させるためにいつもの優しい顔で添い寝してくれてると思ってたのに、視界に飛び込んできたあいつの横顔に、オレは息が止まりそうになった。
冬弥は、煌々と明るい天井の照明を、親の仇でも見るかのような鋭い目つきで睨みつけている。
その綺麗な眉間には深くシワが刻まれていて、見たこともないくらい冷たくて怪訝な顔をしていた。
(何考えてんだ……? やっぱり、オレのこと面倒だって怒ってんのか……?)
さっき「強がらなくていい」って言ってくれたのに、本当はこんな壊れちまったオレの世話をするのが、心の底から嫌になっちまったんだろうか。
そう思った瞬間、せっかく落ち着きかけていた心臓が、またドクドクと嫌な音を立てて冷たく跳ね上がり始めた。
冬弥が静かにスマホを取り出し、手元の画面をじっと見つめているのが見えた。
その液晶の薄暗い光に照らされたあいつの目は、まるで見知らぬ氷のように冷たくて、禍々しいほどの静かな怒りを孕んでいる。
オレは息を殺したまま、その画面を盗み見た。
そこに映し出されていたのは、見覚えのない住所の文字列と、詳細な地図のナビゲーション画面。
(あれって……まさか、さっきの男の家……っ!?)
冬弥は天井の明かりを睨んでいたんじゃない。オレをめちゃくちゃにして、クローゼットに閉じ込めたあの男への激しい憎悪を、その胸の奥でどす黒く燃え上がらせていたんだ。
オレのせいで苛立っていたわけじゃないと分かって安堵した反面、見たこともないほど冷徹な相棒の横顔に、背筋がゾクリと震える。
「……、…彰人?眠れないのか?」
「……っ、いや、そんなんじゃねぇよ」
オレは慌てて目をそらし、布団を首元まで引き上げた。
あの冷徹な表情のまま、冬弥がスマホを隠しもせずに真っ直ぐオレを見つめてくる。
(クソ、完全に見てるのバレてたかよ……)
液晶の光に照らされた冬弥の瞳は、オレを心配するいつもの優しさに戻っているけれど、さっきの凄まじい怒りの余韻が部屋の空気にまだ生々しく残っている。
あの男の住所を調べて、お前は一体何をするつもりなんだよ。
またオレのせいで、お前が危ない目に遭うのだけは絶対に嫌だ。
「……お前こそ、何見てたんだよ。……なぁ、冬弥。もう終わったことなんだから、お前がそこまで抱え込むなよ」
オレは布団の中で冬弥の袖をぎゅっと握りしめ、縋るような、だけど止めるような瞳であいつの顔を見つめ返した。
「…警察に通報するだけだ。通報だけなら匿名でできる」
「……本当に、通報だけ、なんだな?」
冬弥の言葉を聞いて、オレは胸の奥で止まっていた息を、ようやく深く吐き出した。
お前が自分一人で、あの男のところへ殴り込みにでも行くんじゃないかって、本気で心臓が縮み上がるほど怖かったんだ。
(匿名での通報なら……オレが、あの灰色の狭い部屋に行かされることもねぇのか)
オレが警察を怖がって泣き叫んだから、お前はオレの心を最優先に守りながら、それでもあの男を絶対に野放しにしないための方法を、あの冷徹な顔で必死に考えてくれていたんだな。
どこまでも不器用で、だけど底なしに優しいオレの相棒。お前のその真っ直ぐな正義感とオレへの深い愛が、今度こそ完全に、オレの胸の奥に残っていた冷たい恐怖の残滓を溶かしきってくれた。
「……ありがとな、冬弥。オレのために、そこまで考えてくれて。……ほら、もうスマホ置けよ。明日は二人で、泥みたいに眠るんだろ」
オレは少しだけ照れくさそうに口元を緩めながら、布団の中で冬弥の手をしっかりと握りしめた。
煌々と明るい光が満ちるベッドの上で、繋いだ手の温もりを確かめ合う。
お前が隣にいてくれるなら、もうどんな過去の暗闇も、明日への不安も、オレを脅かすことはできない。
「もう遅いから早く寝ろ。余計に疲れが溜まる」
「…そう、だな。そうするわ」
冬弥は優しく微笑んでから、スマホを閉じた。冬弥の笑顔を見て、心は満たされているはずなのに、片隅ではさっきの冷徹な顔が浮かぶ。あの顔がオレに向けられたものじゃないのも、分かってる。分かっているけど、冬弥と繋いだ手が微かに震え出してしまう。
(…いつか、あの顔…オレにも向けられるのかな……。)
一瞬だけしてしまった、最低な考えを必死に振り払う。一度考え出したら、止まらなくなってしまうから。大丈夫、冬弥は隣で笑ってる。
「寝不足なの、クマでバレバレなんだからな。冬弥も早く寝ろよ」
冬弥はそうだったか、と悔しそうな顔を浮かべたあと、繋いた手に唇を寄せて目を閉じた。冬弥の愛おしい寝顔を見ていると、オレの方の意識も沈んでいくのが分かった。
「…おやすみ、とーや」
next…♡300
コメント
3件
てぇてぇ、てえてえですサカオさんっ~!!!! 彰人くんスマホ勝手に見ちゃうなんてもうほんとに可愛いな。それを不思議に思わない冬夜くん彰人のこと好きすぎるだろ好き。(真顔)
あいす@低浮上
13
956
暗理
717
2・5
124