TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

──は?

サーフィーは驚いたような表情をして、そのピストルを握る。弾が入っていることを確認した。

──急所は狙えるだろう? 安心して撃て。

余裕そうに吉木は顎を引く。その場に2秒の沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは、一筋の銃声である。

バン、と撃ち抜いたように見えたが吉木は避けていた。特に、体を動かさず振り向くような体制になったのみだ。

吉木は表情を変えずに口を開いた。

──僕のとこには入れられないね、パローマのところに行って。けど術のみは教えて上げる。

淡々と言い放つと、パローマの連絡先を渡してその場を去った。たった2秒の間を許さなかったのである。


朝を迎えて、グルは重い瞼を開いた。 まだ吉木は眠っていて寝息を立てている。と、そこで良いことを思いついた。軽く仕返しをしてやろう。

グルはベッドから降りて、足音を立てずに机まで向かう。引き出しを出すとパソコンが入っていた。

それをすぐに開くと目を疑った。パスワードなしだ。見て下さいと言っているようなもの。勿論、メモのアプリから資料まで全て開き尽くした。

金銭の取引がないことと、パローマについてなど人物のことが多い。無論、グルについてのことも少しはあった。

「何してるの」

後ろから視線を感じて振り返る。起きたばかりだからか目がしょぼしょぼしていた。

グルはひやりとしてパソコンを閉じる。

「変なことしてないか見ただけだ」

平然として答えてベッドに入り直す。すぐに手元を掴まれてしまった。

「答えてよ、秘密情報見たんじゃないのかい? 僕は君を信用してるけど、流石に見られたら暗殺しないといけなくなる」

真剣な顔つきで言われ、グルは内心ドキッとした。しかし、秘密資料なんかに目を通した覚えはない。

正直に答えようと、見た資料名を淡々と述べる。吉木は驚いたように目を見開いたり、考える仕草を見せた。

「よりによって見られたくないものを見られてしまった……グル君の資料とパローマとか の資料でしょ?」

口を手で塞いで思い返す。グルも資料の中身を思い出して失笑した。

「ああ、よくあんな気色悪いものが入手できるな。パローマの入浴時間を計算するなんて変態としか言えない」

俺の睡眠時間が5秒ずつ擦り減っているのに気がつくとはな、と鼻で笑った。

吉木は恥ずかしそうにベッドに顔を埋めて小声の悲鳴を上げていた。グルはもっと叫びたいくらいだ。自分の情報が端から端まであり尽くしていてどこで撮ったのかさえ分からない写真で埋め尽くされているためだ。

そして、そこにはサーフィーの情報も載っていた。

「単刀直入に訊く。サーフィーの写真があったが、何故軍服なんだ?」

ふっと顔を上げて、吉木が人差し指を立てた。

「彼は米軍とかと色々あってね。今はアメリカだよ。ちなみに、僕たちの本部があるところがアメリカなんだ」

机に手を伸ばしパソコンを手に取ると、開いてパチパチと何かを打ち始めた。寝そべったままグルが覗き込んでみると蛇のマークがあることに気がつく。

そこにはスペイン人やアフガニスタンの人。様々な人種の人々が載っている。その中で一人日本人だった吉木には違和感があった。

「……お前は下っ端か」

グルが呟くと、吉木が顔をしかめた。

「真逆だよ。馬鹿にしてる?」

逆鱗に触れられたかのように殺気立っている。素早くグルの頭を殴ると、平然とした表情で続けた。

「この業界には段階があって上官的なものが僕〜。君には同じレベルになってもらうよ。てか同じレベルにする」

「迷惑だ」

頭をさすりながらグルは瞼を伏せた。体が鉛のように重い。殴られたからだろうか、と顔を上げてみると吉木は真顔でパソコンを閉じた。

「ねえ、気が変わったから一緒に仕事しない?」

悪戯でもするかのように言い、表情をふわりと緩めた。

──嫌な予感しかしない。

「仕事って、何の仕事だよ」

恐る恐る口を開いてみれば、返事がポンッと飛び出した。

「パローマを始末するんだよ」

特に感情は込められていない。グルは体が重くなり呼吸すらも嫌になった。心臓の音が耳を引き裂くようで、気がついたら放心状態となっている。吉木は爆発したように大声で笑った。

「大丈夫だよ。するのは僕じゃなくて君だからね。ほら、頑張らないと弟くんの命が無いよ〜?」

くっくと声を漏らしながらポケットを漁る。やがて細い注射器が出てきた。

「刺すだけにしてあげたよ。簡単でしょ」

何も言葉が出てこないグルの手を握って、それを持たせる。微かに呼吸のみが震えていた。

「冗談だよな?」

落ち着かせて訊いてみると、当然のように「これは仕事なんだから」と返ってくる。

グルは心底耐えられなかった。逃げてやろう、と心に決めて起き上がろうとするが手首を掴まれて捻じ伏せられる。

少しでも逃げるような行動を起こしたら掴まれる。なんなら、一歩前に出ただけで掴むのだ。

「離せっ、お前の頭にはついていけない」

抵抗しようと暴れるものの、吉木は微動だにしなかった。ライオンに押さえつけられているような感覚に体がうまく動かない。

そこで頭を働かせようとした。そこの注射器を吉木に射せばいい。距離が近いからすぐにでも……。

手を振り上げようとした途端に両手を掴まれて押し倒される。片腕が痛みでじんじんする。足はと言ったら絡んでいるがために動けない。

完全に固められたのだ。

「これは仕事なんだよ? 勿論、君が来たらタイから出るつもりだったんだよ。これからはアメリカに行こうよグル君。弟くんも居るんだから」

目が正気とは思えないほどにギラギラとしている。グルは抵抗しても無駄だと思い全身の力を抜いた。

「やらなかったら、やれなかったらどうする」

吉木は驚いたように目を見開いて、すぐにニッと目を細めた。

「僕がカバーしてあげるよ」

ああ、狂ってる。こいつと話は出来ない。通じない。グルはすぐに悟って焦りも不安も全て消え去った。

そして吉木に言い放つ。 「パローマはどこだ」と。


コトン。

パローマの目の前にワイングラスを置く。グルは愛想笑いさえもせずに「飲まないか」と誘った。

「いいけど珍しいねー。吉木はどこ行ったの」

軽く言いながら内向きにグラスを回す。グルは白ワインを注いでいた。

「アイツなら射的していた。俺も行きたかったが休んでろって。アイツこそ大怪我してるのにな」

吉木が大怪我していること以外は嘘だ。それなのにパローマは納得の色を見せてワインを口に注ぐ。舌で転がして味を確かめているように見えた。

「まぁ、アイツは前からあんなのだし。両足骨折しても仕事したがるような奴だよ」

懐かしそうに微笑みながらサングラスを外す。グルは心が曇天となりぐちゃぐちゃと意味のない思考を絡ませていた。

「はあ……高校の時から無茶をしていたからな。今でも変わらないのか」

声には感情もない。いつにしようか、とタイミングを考えているだけ。思考なんてものはゴミに過ぎなかった。

と、そこでグルはワイングラスをすべらせて落とした。

「すまない」

そう断って上半身をぐっと椅子の下まで下げる。同時にパローマの頸静脈に注射器を刺した。そしてぐっと薬を注入する。

「……っやってくれたね」

グラリと視界が揺れてパローマは倒れた。意識はまだある。

自分のしたことにゾッとしたグルはすぐにパローマに駆け寄るものの、突き放された。

「アンタは涼しい顔してなさい。浦に言われたんでしょ……元々決まってたんだよ……抵抗する気もないから……ウチの服さえも……触らないでね」

これは最後の言葉だった。

グルは拳に力を込めて吐き出したような返事をし、その場を去った。

loading

この作品はいかがでしたか?

71

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚