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#おんりー
ゼオ氏
165
202
#おおはらMEN
ドズル社好き
107
#おんおら
ドズル社好き
1,226
「おんりー、おはよー!」
朝。
いつもなら、通話に入った瞬間に聞こえてくる声。
「……おはよ、おらふくん」
昨日と同じ声。昨日と同じ挨拶。
なのに、おんりーは、ほんの少しだけ違和感を覚えた。
「今日、何する?」
「んー、俺ちょっと用事あるから、先に別のことしといてええよ!」
「……あ、そっか」
「ごめんなー! またあとで!」
通話が切れた。
おんりーは、しばらく画面を見つめていた。
昨日までは、そんなことなかった。
何をするにも「おんりー、一緒にやろ!」と声をかけてきたのに。
今日は、先に別のことをしていてほしいらしい。
——忙しいだけだ。
そう思おうとした。
おらふくんにも予定はある。いつも自分を優先してくれるわけじゃない。
分かっている。
分かっているのに。
「……昨日、なんか変なこと言ったかな」
ぽつりと呟いた声は、誰にも届かなかった。
昨日の帰り道。
好きな人がいると答えた自分。
その人が優しい人で、一緒にいると楽しくて、気づいたらその人のことばかり考えてしまうと話した自分。
おらふくんは、応援していると言ってくれた。
それは、つまり。
自分の恋を応援してくれるということ。
自分の好きな人が、おらふくんではないと思っているということ。
……それでいい。
そう答えたのは、自分なのだから。
「……ばかだな、俺」
おんりーはヘッドセットを机に置いた。
好きだと言えなかった。
そのくせ、相手の態度が少し変わっただけで、こんなにも気にしている。
自分勝手だ。
分かっている。
それでも、寂しかった。
2.聞きたくなかった言葉。
その日の夕方。
仲間たちとの通話に、おらふくんの声が響いていた。
「えー! それめっちゃええやん!」
どうやら、誰かが最近の出来事を話しているらしい。
おんりーは作業をしながら、何気なく耳を傾けていた。
「今度、ふたりでご飯行くことになってん!」
「おおー! ええなあ!」
おらふくんの声は明るい。
楽しそうで、いつも通りだった。
「おらふくんは最近どうなん?」
誰かが尋ねた。
「俺? 俺は……」
少しの間。
「……まあ、いろいろ?」
笑い声が起きた。
「なんやそれー!」
「いやいや、ほんまにいろいろやって!」
おらふくんは笑っていた。
おんりーは、無意識に手を止めた。
誰かと出かけるのだろうか。
ふたりで。
ご飯を食べに。
それが友達同士の普通の予定だということくらい、分かっている。
自分だって、友達とふたりで出かけることはある。
なのに。
胸の奥が、嫌な音を立てた。
——おらふくんにも、好きな人がいるのかな。
考えた瞬間、心臓が冷たくなった。
もしそうなら。
自分は、何をしているのだろう。
叶うかどうかも分からない気持ちを抱えて、相手の些細な言葉に期待して。
おらふくんが優しいから。
おらふくんが、自分を大切にしてくれるから。
勝手に、特別だと思っていただけなのかもしれない。
「……おんりー?」
名前を呼ばれて、はっとする。
「え?」
「さっきから静かやけど、どしたん?」
おらふくんだった。
「……なんでもないよ」
「ほんま?」
「うん。作業してただけ」
「そっか!」
明るい声。
それから、おらふくんは何事もなかったように、別の話題へ移っていった。
おんりーは、再び画面に向き直る。
いつも通りに。
いつも通りにしなければ。
これ以上、気持ちを知られないように。
3.おらふくんの誤解。
一方、おらふくんもまた、同じように悩んでいた。
——好きな人がおる。
おんりーが言った、その言葉。
何度思い返しても、胸の奥が落ち着かなかった。
相手は優しい人で、一緒にいると楽しくて、気づけばその人のことばかり考えている。
そんなふうに話していた。
おんりーが、あんな顔をする相手。
きっと、自分の知らない誰かなのだろう。
そう思うと、どうしようもなく苦しかった。
「……はあ」
椅子の背もたれに体を預ける。
告白なんて、できるわけがない。
もし気持ちを伝えて、今までの関係が終わってしまったら。
一緒にゲームをすることも、何気ない話をすることも、気軽に名前を呼んでもらうことも。
全部、失ってしまうかもしれない。
それだけは、嫌だった。
だから、少し距離を置こうと思った。
今までみたいに一緒にいれば、期待してしまう。
おんりーが笑ってくれるたび、自分のことを好きなのかもしれないと思ってしまう。
そんなの、あまりにも都合がよすぎる。
相手には好きな人がいるのに。
「……ちゃんと、応援せなあかんよな」
口にしてみても、気持ちはまったく追いつかなかった。
応援したいわけじゃない。
できることなら、その好きな人が自分だったらいいのに。
おんりーが誰かを好きだと言うなら、その誰かになりたい。
おんりーが一緒にいたいと思う相手になりたい。
でも、そんなことを願う資格なんて、自分にはない気がした。
「……俺、何してんねやろ」
おらふくんはスマートフォンを手に取った。
おんりーとのメッセージ画面を開く。
『今日、なんかあった?』
打ち込んで、消した。
『明日、一緒にゲームせえへん?』
それも、消した。
最後には、何も送れなかった。
画面を閉じる。
好きだと言うこともできず。
忘れることもできず。
ただ、相棒という場所に留まっている。
それが今の自分にできる、精いっぱいだった。
4.「俺じゃ、あかんのかな」
数日後。
ふたりは、久しぶりに一緒にゲームをしていた。
「おんりー、そっちお願い!」
「分かった」
「さすが! 頼りになるわー!」
「はいはい」
いつものやり取り。
いつものテンポ。
なのに、以前のように自然に笑えない。
おんりーは気づいていた。
おらふくんが、少しずつ自分から離れていることに。
前なら、作業が終わったあとも雑談をしていた。
ゲームをしていない日でも、何かあれば連絡をくれた。
けれど最近は、用事が終わるとすぐに通話を切る。
メッセージの返事も、以前より少なくなった。
嫌われたのだろうか。
それとも、単に忙しいだけなのだろうか。
聞きたい。
でも、聞けない。
「……おらふくん」
「んー?」
「最近、忙しい?」
おらふくんの手が、一瞬止まった。
「……え?」
「いや、なんか。前より一緒にやる時間、減ったなって」
言ってから、しまったと思った。
こんなの。
一緒にいたいと言っているようなものじゃないか。
おらふくんは少し黙ってから、笑った。
「……あー、まあ、ちょっとな!」
「……そっか」
「ごめんな? また時間できたら誘うわ!」
その言葉に、おんりーは小さく頷いた。
「……うん」
また、誘う。
その言葉が、やけに遠く聞こえた。
本当は、そんな返事が欲しかったわけじゃない。
忙しくても、一緒にいたいと言ってほしかった。
自分から離れないでほしかった。
でも、それを望む理由を、おんりーは持っていない。
恋人でもない。
特別な約束をしたわけでもない。
ただの相棒なのだから。
「……ごめん、俺、ちょっと用事思い出した」
「えっ、あ、うん!」
おんりーは通話を切った。
切った瞬間、部屋の静けさが耳に痛いほど広がった。
「……なんで」
どうして、こんなに苦しいのだろう。
好きだと言えないのは、自分も同じなのに。
おらふくんだけが悪いわけじゃない。
それでも。
「……もうちょっと、一緒にいたかったな」
小さな声が、静かな部屋に落ちた。
5.届かなかったメッセージ。
その夜。
おらふくんのスマートフォンに、通知が届いた。
おんりーからだった。
『今日ありがと。楽しかった』
短いメッセージ。
いつも通りの、何気ない言葉。
おらふくんは、それを見つめた。
楽しかった。
本当に?
最近、少し距離を置いている自分と一緒にいても。
それでも、おんりーは楽しかったと言ってくれる。
優しいから。
きっと、そうなのだ。
誰にでも気を遣える人だから。
自分が傷つかないように、わざわざ言葉を選んでくれたのかもしれない。
「……ほんま、優しいなあ」
嬉しいのに、苦しかった。
『俺も楽しかった! またやろな!』
そう返す。
送信したあと、画面を閉じようとして。
指が止まった。
本当は、もうひとつ伝えたいことがあった。
『今度、ふたりで出かけへん?』
もう一度、誘いたかった。
前に約束した日が、楽しかったから。
おんりーが笑ってくれたことが、嬉しかったから。
もっと一緒にいたかったから。
けれど。
——好きな人がいる。
あの言葉が、頭をよぎる。
自分が誘うことで、困らせてしまうかもしれない。
相手の恋を邪魔することになるかもしれない。
結局、おらふくんは何も送らなかった。
一方、おんりーはスマートフォンを握りしめていた。
『またやろな!』
その言葉を、何度も読み返す。
また。
その言葉があるだけで、嬉しくなってしまう。
でも、そこには何も書かれていない。
会いたいとも。
もっと一緒にいたいとも。
好きだとも。
「……俺じゃ、だめなのかな」
また自分でも、驚くほど小さな声だった。
おんりーは、スマートフォンを胸元に引き寄せた。
本当は、聞いてみたかった。
自分のことを、どう思っているのか。
相棒としてだけなのか。
それとも。
ほんの少しでも、特別だと思ってくれているのか。
でも、聞けなかった。
もし、ただの相棒だと言われたら。
きっと、今までみたいには笑えなくなる。
だから、今日も言えない。
『好きだよ』
たった四文字の言葉を。
6.次に会う日。
数日後。
おらふくんから、久しぶりにメッセージが届いた。
『おんりー、今週どっか空いてる?』
おんりーは、画面を見つめた。
心臓が跳ねる。
『空いてるよ』
すぐに返したかった。
でも、少しだけ考えてから送信した。
しばらくして、返事が届く。
『よかった! ちょっと相談したいことあってさ』
相談。
その言葉に、おんりーは少しだけ不安になった。
何の相談だろう。
仕事のこと?
ゲームのこと?
それとも。
——好きな人のこと?
考えたくないのに、頭から離れない。
『分かった。いつにする?』
『土曜とかどう?』
『大丈夫』
『じゃあ、また時間決めよ!』
そこで、やり取りは終わった。
おんりーは、スマートフォンを伏せた。
会える。
それだけで、嬉しかった。
どんな話をされるのか分からない。
もしかしたら、好きな人の相談かもしれない。
そうなったら、笑って聞けるだろうか。
ちゃんと、応援できるだろうか。
「……できるわけ、ないだろ」
思わず漏れた本音に、自分で苦笑した。
それでも、会いたい。
会って、声を聞きたい。
笑っている顔を見たい。
好きだから。
どうしようもなく、好きだから。
そして、おらふくんもまた、同じ土曜日を待っていた。
伝えたいことがある。
本当は、相談なんかじゃない。
ただ、もう少しだけ一緒にいたい。
もう少しだけ、近くにいたい。
そして、いつか。
いつか、言えたらいい。
——好きやねん。
ふたりはまだ知らない。
次に会う日が、今まで隠してきた気持ちを、ほんの少しだけ動かすことになるなんて。
——第2話・終。
次回予告
第3話「その手、離したくない」
待ち合わせの帰り道、突然の雨。
ひとつの傘に入ることになったふたりは、いつもより近い距離で歩くことになる。
おらふくんの肩が濡れていることに気づいたおんりーが、思わず手を伸ばす。
その瞬間、おらふくんが口にしかけた言葉は——。
「……なあ、おんりー。俺のこと、どう思ってる?」
コメント
1件
はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!もう!!!!😭💔💔💔💔 お互い好きなのに「好きな人がいる」って誤解しあって、距離置こうとするところが切なすぎて胸が痛いよ……!!「俺じゃ、あかんのかな」と「俺じゃ、だめなのかな」が重なるシーン、頭抱えたわ。おらふくんが誘いたいのに送信ボタン押せないところも、おんりーが「好きだよ」の四文字を言えないところも、どっちもどっちなのにすれ違ってもうダメだ……😭💦 次回予告の「なあ、おんりー。俺のこと、どう思ってる?」で心臓飛び出た!土曜日が待ち遠しすぎる…応援しかできないけど全力で見守るぞ……!!