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教室のあちこちから“かわいい”とか“キレイ”という声が飛び交っていた。
それでも僕は転校生になど全く興味はなく、ただ外をぼんやり眺めていた。
「それじゃあ、自己紹介してもらおうか」
「はい」
「よろしく」
「みなさん、はじめまして…私は佐藤葵と言います。数週間前までアメリカのニューヨークに住んでいました。向こうには父の仕事の都合で、暮らしていたんですけど、訳あって、この街に引っ越して来ました。よろしくお願いします」
えっ!?
佐藤葵…‥
僕は、その名前を聴いた瞬間に自然と体が反応し、教壇に立っている彼女を見た。
やはり昨日公園で会った双子の姉の佐藤葵だった。
「佐藤の席は、そうだな…窓際の後ろから3番目の席に座ってもらおうか。今座ってる赤坂は前から黒板が見にくいって言ってたから1番前の席に移ってもらうけど、いいな赤坂?」
「はい、お気遣い感謝します」
黒縁メガネに髪型はおさげ、そして学級委員。
学年に数人はいる典型的なガリ勉女子だ。
席に着こうと横切る佐藤さんを、みんな憧れの眼差しで見つめていた。
そして松下に言われた席…つまり僕の隣の席に着くと、前と後ろの席の増田と船橋が彼女に声をかけていた。
しばらくして教室内が落ち着きを取り戻して来ると、隣の席から妙な視線を感じた。
振り向くと佐藤さんが僕の事を見ており、目が合うと微笑まれた。
「紺野瑛太さん…またお会いしましたね」
「佐藤さんは、双子だったんですね。そして双子のお姉さん…‥」
「妹の亜季から聞いたんですね」
「えぇ、明るくてハキハキしてて、すごい良い子ですね」
「そうですね…」
妹の亜季さんの話をした途端、声のトーンが下がったのを感じた。
「どうかしまっ‥」
「静かに! チョークが…‥」
彼女は、何故か僕が話すのを制止した。
そして、教壇にいる松下を見ると目が合った。
どうやら怒っているようで、眉間にシワをよせ険しい表情をしていた。なっ‥何だ?
それから朝のホームルームが終わり、トイレに行こうと松下の前を通り過ぎようとしていた。
「瑛太、お前運が良かったなぁ。もう少しで私のチョークの餌食になってたぞ」
チョークの餌食って…‥
そう言えば佐藤さんが、チョークが何とかって言ってた…。
「またまた、冗談キツいですよ。先生…‥」
「冗談なんかじゃねえよ」