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2件

かわいすぎやろぉぉぉぉ!怯えてるの可愛すぎる苦しんでるのもぜーんぶ可愛い、大人の太宰さんに戻っても可愛いよぉー♡(((((((
最終話です。一応完結させました(笑
カチリ、と。その金属音は、太宰の人生のすべての選択肢を切り落とす断頭台の音だった。
「ひ……あ……、あぁあぁああ!!」
太宰は狂ったように首に手をかけ、銀の冷たさを引き剥がそうと爪を立てた。けれど、大人用に作られたその重厚な首輪は、七歳の細い首の上で、残酷なほどの余裕を持って、けれど「絶対に外れない」という拒絶を突きつけてくる。
「やだ、外して! 中也、外してよぉ!! おねがい、なんでもする、なんでもするからぁ!!」
プライドも、知略も、何もかもを投げ捨てた、惨めで無様な泣き叫び。 太宰は中也の足元に縋り付き、その靴を濡らすほど涙を流した。これほどまでに心を剥き出しにし、恐怖を露わにした太宰治など、中也以外は誰も知らないだろう。
「……なんでもする、か。いい言葉だ」
中也は床に跪き、パニックで過呼吸を起こしている太宰を、優しく、慈しむように抱き上げた。 太宰は中也の肩越しに、鏡に映った自分の姿を見た。 白い肌、赤い傷痕、そして首元に鈍く光る重厚な銀。 それはもはや、人間としての尊厳を奪われた、中也専用の「愛玩動物」そのものだった。
「……ひっ、……ぅ、……ぁ……」
泣き叫ぶ体力すら尽き、太宰の意識が遠のいていく。 恐怖が閾値を超え、脳が防衛本能として、太宰から「大人の理性」を強制的に奪い去っていく。
「太宰。……手前はもう、何も考えなくていい」
中也の指が、銀の首輪を愛おしそうに撫でる。 中也の瞳に宿る、歪んだ勝利の光。 太宰は、その光に射抜かれながら、最後の一滴の自意識が溶けていくのを感じた。
「……ちゅう……や……」
掠れた声。それはもう、中也を拒絶する「太宰治」の声ではなかった。 ただ、自分を支配する絶対的な主の名を呼ぶ、震える雛の声。 中也は満足げに目を細め、太宰の額に深い接吻を落とした。
「ああ。……いい子だ、太宰」
箱庭の扉は、今、完全に閉ざされた。 二度と開くことのない、美しく狂った檻の中で、二人の「共依存」は永遠に完成したのだ。
特異点の終わりは、予兆もなく訪れた。
数ヶ月の間、中也のセーフハウスという名の密室で、太宰は「雛」として飼い殺されてきた。 恐怖とパニックの果てに、太宰の心は摩耗し、やがて平坦な絶望へと沈んでいった。ひらがなの演技も、大人としての虚勢も、銀の首輪が発する冷たさの前にすべて消え失せた。
そしてある朝。 ミシミシと骨が軋む音と共に、太宰の肉体は本来の時間を無理やり取り戻し始めた。
「……っ、が、ぁ……ッ!!」
激痛。 成長痛を何百倍にも濃縮したような苦しみに、太宰はベッドの上でのたうち回る。 手足が伸び、衣服が弾け飛ぶ。 だが、その成長を、無慈悲な鉄の輪が遮った。
「カッ……、ゲホッ、……あ……」
首。 大人になった太宰の首を、幼児化の時に嵌められたあの銀の首輪が、容赦なく締め上げる。気道が圧迫され、視界がチカチカと火花を散らす。 太宰は、かつての機敏さなど欠片も残っていない震える指で、食い込む銀輪を剥がそうとした。
そこへ、部屋の扉が開く。 入ってきた中也は、全裸で、首に銀を食い込ませて喘ぐ「大人の太宰」を見て、愉快そうに喉を鳴らした。
「……ハッ。やっと戻ったか、太宰」
「……ちゅ、や……外、し……て……っ」
太宰は涙を流し、かつての相棒に手を伸ばした。 だが、中也はその手を握るのではなく、首輪に繋がれた鎖を、グイと自分の方へ引き寄せた。
「嫌だね。大人になっても、俺の腕の中から出さねぇっつったろ?」
中也は、苦しげに喘ぐ太宰の顔を覗き込み、愛おしそうにその頬を撫でた。 その瞳には、かつての戦友への敬意など微塵もない。 あるのは、完全に自分を屈服させた所有物への、歪んだ愛着だけだ。
さらに、数ヶ月が過ぎた。
そこには、もはや「自殺志願者」でも「天才」でもない、ただの肉の塊があった。
部屋の隅、柔らかなクッションの上に座らされた太宰は、うつろな瞳で虚空を見つめている。 大人に戻った彼の首には、いまだにあの銀の首輪が、皮膚の一部であるかのように馴染んでいる。 何度も逃げ出そうとし、そのたびに中也によって精神と肉体の境界を壊された太宰には、もう抵抗する意志など残っていなかった。
「太宰。飯だ。……ほら、口開けろ」
中也が帰宅し、食事を運んでくる。 太宰は、中也の声にだけは敏感に反応した。 ビクリと肩を揺らし、感情の消えた瞳をゆっくりと中也に向ける。
「……あ、……ぁ、」
太宰は自ら、中也の指に顔を擦り寄せた。 首輪に繋がれたまま、無抵抗に、人形のように。 中也の独占欲に気づかなかったかつての自分を呪うことさえ、今の太宰にはもうできない。
「いい子だ。お前は本当に、俺がいねぇと何もできねぇな」
中也は、完全に空っぽになった太宰を抱きしめる。 太宰は、自分を締め付けるその腕の強さに、微かな安らぎさえ感じていた。 これこそが自分の望んだ「依存」の果てだと、壊れた脳が囁き続ける。
外の世界では、太宰治は「行方不明」のままだろう。 けれど、この密室の中だけで、彼は中也の所有物として、永遠に、幸福に、枯れ続けていく。
透明な檻の中。 二人の共依存は、誰も触れられない地獄の底で、完璧な完成を迎えた。