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――翌日
寝たのは夜中の1時過ぎだというのに、4時には目が覚めてしまった。寝つきが悪く何度も目を覚ましていた。ベッドから起き出しても、落ち着かなかった。腹は減ってなかったけど、することも特になかったので朝食を作り始めた。メニューはフレンチトーストとベーコンエッグと納豆ご飯だった。和と洋が、入り交じっていて余りにも調和性がなくバランスの悪い朝食と思われるかもしれない。最初は俺もそう思っていた。でも今は、毎朝作って食べるほどに俺はこれが好きだ。だってこのメニューはマナの大好物だから。
そして朝食を終えると、掃除洗濯を済ませてからワイドショーを見ながら、コーヒーを飲んでくつろいでいた。それから近くの河原まで散歩に出掛けた。時刻は11時を回っていた。既にマナと世良さんの結婚式は始まってしまっていた。俺は――世界で1番大切な人の、幸せでな姿を見に行ってやることが出来なかった。笑顔で祝ってやることも出来なかった。そんなことを考えながら、川を流れる花びらをずっと目で追い続けていた。
プルルルル―――プルルルル―――
着信が鳴ったので、携帯を見ると見たこともない番号からだった。恐る恐る受話ボタンを押して電話に出てみた。
『もしもし――』
『圭太―――久しぶり』
『ゆっ、ゆずきなのか?』
『そうだよ、突然電話しちゃってゴメンね。それに突然圭太の前からいなくなって本当にごめんなさい』
『もう、謝らなくていいから。何か理由があったんだろ?』
『うん――』
『ならいいよ。それより元気でやってるのか?』『やってるよ』
『向こうの生活には慣れたか?』
『まぁまぁかな』
『そっか、良かった――電話してくるなんて何かあったのか?』
『圭太―――圭太が今1番一緒にいたいのは誰?』
『そんなの、ゆずっ――』
『圭太! 嬉しいけど、違うでしょ』
『ゆずきと一緒にいたいに決まってるだろ! 俺たち、まだ別れてないんだから』
『別れたよ』
『別れてない。俺は認めない』
『なら今、別れよう』
『何言ってんだよ! そんな簡単な問題じゃないだろ!』
『圭太、今さら別れる別れないの話をするつもりはないの。私たちは別れたの。今大事なのは止まってた時計の針を動かして、大切な時間を取り戻すってこと。たまには自分のために、我慢しないで素直になって幸せを掴んでみなよ。マナを幸せにしてあげられるのは圭太しかいないでしょ?』
『それは無理だろ――』
『そうかな? 圭太とマナが運命の相手なら、きっと運命は再び2人を引き合わせると思うの――『―――――もう会えないのか?』
『日本には帰るつもりはないの。1年に1回くらいは帰るかもしれないけど、圭太に会うつもりはないから』
ゆずきは通話中、ずっと鼻をすすっていた。涙を堪えていたのだろう。
『わかった、もう無理してキツイこと言わなくていいから。俺のために自分が傷つくことも恐れないでそんな言い方してくれてありがとな。俺はゆずきが好きだった。一緒にいて幸せだった。これはウソじゃないから』
『うん、私もだよ。それじゃあ――――さよなら』
『あぁ、じゃあな』
ゆずきとの通話を終えた俺は、溢れ出る涙を抑えようと空を仰いでいた。でも止められる訳などなく、涙は次から次へと溢れてを頬を伝って地面へと落ちた。