テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ーー夜 王宮 風の抜ける回廊
「はっ……くっ……!」
きりやんは腕を捕まれたまま、強引に引きずられていた
薄暗い回廊、手勢も少なく、援軍は望めない
(……誘拐未遂か…内部に裏切り者がいたなんて…)
冷静に分析しようとするも焦燥が滲む
脇腹に打撲。呼吸が荒い
(このまま連れ去られるわけには……)
相手は複数。剣を抜こうにも隙がない
その時ーー
「俺の王子さまになにしてんの……?」
風と共に、騎士が現れた
「…きんとき……っ」
目を疑うほどに鮮やかに
まるで月光を纏うように現れた彼は、一言もなく男達を切り捨てた
「くそッ邪魔すんなっ!!」
残りの者たちが剣を振るうが、きんときはひらりとかわし、逆に背後を取り一撃で卒倒させる
静寂が戻る
きんときは剣を納め、振り返る
「……なんでいんだよ…」
「一言目それ~?」
「………無事?」
「…うん……なんとか」
そう返したきりやんの声は少しだけ。でも確かに、震えていた
きんときの瞳が、真剣な光を湛えたまま、きりやんを見つめる
「怖かった?」
「……王子として…それを言うのは…」
「……違うだろ」
彼の声が優しく響いた
「”きりやん”として、怖かったんじゃねぇの?」
「……っ……」
「お前はいつも仮面を被ってる。でもさ…俺はもうそんなのはどうでもいい」
「泣きたい時は泣いて欲しいし、嬉しいんだったら笑顔で居て欲しい」
「王子でいるのが辛いならーー」
「俺がさらってやる」
その言葉が胸に突き刺さった
気づけば、ぐらりと視界が揺れていた
これまで張り詰めていたものが、ぷつりと切れたように
そしてーー
「きんとき……やっぱり俺を…連れ出して」
その一言が全てだった
その瞬間
唇が塞がれる
唇と唇が触れ合うだけの熱くて優しいキス
始めてだった
誰かに心を許すなんて
誰かの腕の中で安心するなんて
(これが…恋なんだろうか)
でも、それを認めるのはまだ怖くて
城の外の月夜の下
きりやんはきんときにお姫様抱っこなるものをされ、顔を赤く染めながらもそっぽを向いていた
きんときは当然のようにきりやんを常時凝視していた
「ねぇきりやん」
「……なに……」
「さっきの、俺の事好きなの確定ってことでいいよね♡」
「……は?誰が?」
「えー?だって”連れ出して♡”って言ったじゃん♡」
「お前が勝手に連れ出したんだろ!!///あと言い方きめぇよ!」
「え?うっそ!?好きって言ったじゃん~♡!」
「!い、言ってない!!!!」
「でも顔真っ赤♡」
「煩い煩い煩い!!///」
きりやんが思いっきりきんときの顔を押し出す
でも心の中では
(………少しぐらい……この男になら)
ほんの少しだけそんなことを思ってしまう自分がいた
コメント
2件
ちょっと照れ気味なやんさんが 可愛くて凄い好きです!! きんさんもめっちゃイケメン彼氏 みたいでカッコいいですね!!!!