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早川家での共同生活が始まって数日。パワーが「ニャーコ(猫)を悪魔に人質に取られている」とデンジを連れ出した。リムルも「顧問」として、そしてシエルさんの「退屈しのぎ」という進言に従って、こっそり後を追うことにした。
人里離れた廃屋。そこには、巨大な翼を持つコウモリの悪魔が待ち構えていた。
「約束通り人間を連れてきたぞ! ニャーコを返せ!」
パワーの叫びも虚しく、コウモリの悪魔はデンジを飲み込もうとする。本来ならここで絶望的な戦いが始まるはずだが……。
『報告。対象:コウモリの悪魔。およびその体内に捕らえられている個体:ニャーコの生存を確認。……マスター、この悪魔、非常に「うるさい」です。思考の邪魔ですので、0.2秒で片付けますか?』
(「待て待て、シエルさん。パワーにとってニャーコは大事な家族なんだ。傷つけずに助け出さないとな」)
『了解しました。……**【空間支配】**を起動。悪魔の胃袋の内容物のみを、指定座標へ転送します』
「ギェ……!? ゲボォッ!!」
コウモリの悪魔がいきなり苦しみ出し、何もしていないのに口からデンジと、そして無傷のニャーコを吐き出した。
「ニャ、ニャーコ!!」
パワーが駆け寄り、愛猫を抱きしめる。デンジも「なんだ!? 何が起きたんだ?」とキョトンとしている。
「おい、コウモリ。お前、今俺の大事な部下を食べようとしただろ?」
リムルがゆっくりと歩み寄る。
「貴様ぁ……! 何者だ! 人間の分際で……!」
コウモリの悪魔が超音波を放とうとした瞬間、シエルさんの冷徹な声が響く。
『解析完了。音波による破壊権能……マスターの「暴風之王(ヴェルドラ)」の劣化版にも及びません。……【暴食之王(ベルゼビュート)】、起動』
「え、ちょ、シエルさ……」
リムルが止める間もなく、リムルの背後に現れた巨大な「影」が、コウモリの悪魔を丸呑みにした。一瞬の出来事だった。廃屋には静寂が訪れる。
『報告。コウモリの悪魔を隔離・解析中。……結果。不味いです。魔素の質も低いため、エネルギーに変換する価値もありません。……あ、でも羽の一部は、テンペストの子供たちの「工作の材料」くらいにはなりそうです』
(「工作の材料って……。まあ、被害が出なかったからいいか」)
「……おぬし、何をしたんじゃ?」
パワーが震えながらリムルを見る。ニャーコを助けてもらった恩と、底知れない恐怖が混ざった複雑な表情だ。
「ん? ちょっと手品だよ。ほら、ニャーコも無事だろ? 帰って飯にしようぜ」
リムルがニコッと笑うと、背後からさらに不穏な影――ヒルの悪魔が「私の夫をどこへやったぁ!」と襲いかかってきた。
『……しつこいですね。マスター、不快指数が上昇しました。これより、このエリアの悪魔反応を**一括消去(デリート)**します』
(「あ、シエルさん怒ってる……。これ、俺が何もしなくても終わるな」)
シエルさんの並列演算により、ヒルの悪魔は姿を現した瞬間に「物理法則を無視した圧縮」を受け、小さな肉塊にすら残らず消滅した。
その頃、公安本部にて
監視カメラの映像を見ていたマキマは、ペンを止めた。
映像の中のリムルは、ただ歩いているだけに見える。だが、彼が通り過ぎた場所から、強力な悪魔の反応が次々と「消失」しているのだ。
「……死んだのではない。この世界から『存在』そのものが消されている……?」
マキマの瞳が、かつてないほど妖しく輝く。
「リムル君。君は、チェンソーよりも残酷で、チェンソーよりも優しい……何かなのかしらね」