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公安対魔特異4課の面々は、悪魔の反応があったホテルの一室に踏み込んだ。だが、そこは「永遠の悪魔」が支配する、8階から出られない無限ループの世界だった。
「おい……階段を降りても降りても8階に戻ってくるぞ!?」
新人のコベニがパニックになり、アキも焦りの色を隠せない。
だが、リムルだけは平然としていた。正確には、リムルの脳内の相棒が呆れていた。
『報告。この空間は、対象:永遠の悪魔の権能により、因果律の一部がループ構造に固定されています。……稚拙ですね。マスター、0.00001秒で解体しますか?』
(「待て待て、シエルさん。ここで一瞬で解決しちゃうと、アキたちが成長しないだろ? ほら、新人たちもいるし、少し様子を見ようぜ」)
『了解しました。……では、マスターが退屈しないよう、この**「永遠」を「快適」に書き換えます**』
リムルが「おーい、みんな落ち着けって」と声をかける間に、シエルさんの裏工作が始まった。
『ホテル内の全設備を完全掌握。断水および停電を解除。ついでに、水道からはテンペスト直送の「天然水」が、コンセントからは「純粋魔素エネルギー」が供給されるよう、接続先を胃袋に繋ぎ変えました』
「あ、あれ? 電気点いたぞ! 水も出る!」
デンジが蛇口をひねると、なぜか最高に美味い水が出てきてガブ飲みし始める。
パニックで泣き叫ぶコベニの前に、リムルがひょいとお菓子を差し出す。
「ほら、コベニちゃん。これ食べて落ち着きな。シエルさん特製の、精神安定効果のあるチョコだ」
『……正確には、脳内の過剰なドーパミンを抑制し、強制的にリラックスさせる術式を刻んだ魔鉱石菓子です。副作用はありません』
「あ、ありがとうございますぅ……(モグッ)……ふぇっ!? な、なんか、閉じ込められたのがどうでもよくなってきましたぁ……。お昼寝したいですぅ……」
コベニがその場でスヤスヤと眠り始めた。
空間そのものである永遠の悪魔が、業を煮やして叫ぶ。
「なぜだぁ! なぜ恐怖しない! 貴様ら、デンジを食わせろぉ!!」
『不快です。マスター、この悪魔の「心臓」に当たる座標を特定しました。……あえて倒さず、「空間の維持コスト」だけを3万倍に跳ね上げました。今頃、彼は存在を維持するだけで必死なはずです』
(「シエルさん、君、たまに性格悪いよね……」)
案の定、永遠の悪魔は「き、きつい……! なんだこの重圧は! 空間を維持するだけで死ぬ……! 頼む、帰ってくれぇぇ!!」と、自分から出口(階段)を差し出してきた。
「お、アキ! 階段が繋がったぞ!」
「……え、あ、ああ。……何なんだ、今回の任務は……」
アキは、一度も剣を抜くことなく解決しそうな状況に、デビルハンターとしてのプライドが複雑なことになっていた。
「あー、待て。せっかくの『永遠』なんだ。もう少しここでゆっくりしていこうぜ。シエルさんが、ホテルのスイートルームのベッドを最高級の羽毛に変えたらしいし」
「顧問、あんた何やってるんですか!?」
結局、リムル(シエル)のせいで、恐怖のデスゲームのはずが「公安4課・豪華ホテル親睦会」に早変わり。
最後は、飽きたシエルさんが**「解析完了。この悪魔の心臓を起点に、テンペストへの『常設転送門』を設置します」**と、永遠の悪魔を門(ゲート)の部品に改造して終わらせるのだった。
「……。中に入ったきり、一向に恐怖の悲鳴が聞こえてこないわね」
待機していたマキマは、ホテルの窓から見えるリムルが、楽しそうにデンジとトランプをしている姿を見て、静かに微笑んだ。
「シエル……。リムル君の中にいる『それ』。あなた、私と少しお話しましょうか」
マキマの視線が、リムルの影の中に潜むシエルさんの存在を、かすかに捉えたような気がした。