自室に戻ると、華はベッドに腰を下ろし、制服を脱いだ肩をぐるりと回した。
一日中慣れない緊張にさらされて、体はぐったりとしている。
けれど、心は妙に静かだった。
机の上に手帳を広げ、昼間に書き込んだ拙いメモを見返す。
「……お辞儀は浅く。電話はゆっくり。案内は確認」
声に出すと、自然と律の顔が浮かんだ。
厳しい言葉ばかりだったけれど、最後にかけてくれたあの一言は、なぜか耳に優しく残っている。
「律さん……」
小さくつぶやき、華は赤くなった頬を両手で覆った。
それがどんな感情なのか、まだ自分でははっきり分かっていなかった。
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