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ある日、僕は全知全能になった

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ある日、僕は全知全能になった

7 - 全知全能だってビビる時はある。

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2025年10月09日

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僕はそれから一週間ほど魔術の修練に熱中し、技術面に関してもそこそこの水準にまで至った。全知全能曰く、現代の魔術士でもこの実力に至るには大抵丸々数カ月はかかるらしい。

勿論、僕が一週間でここまで至ったのは僕の隠された才能とかではない。勿論、全知全能のお陰である。全知全能は僕に直接才能を付与したり、一瞬で熟練の技術を付与せずとも、僕にとって最適で最も的確なアドバイスを送ることが出来る。


「『灼火の炎熱を枝として、稲妻は駆け抜ける』」


いつも通りの山の麓の開けた場所で、僕は右手を右側に伸ばした。そこに、赤と青白い色の混じる魔法陣が浮かび上がる。


「『雷炎鞭《プラズマウィップ》』」


声送りという技術による二重詠唱で呪文を唱えると、その魔法陣からピリピリと青白い稲妻の走る魔力の炎で出来た鞭が現れた。僕はその鞭を掴み、しゅんしゅんとその場で振るった。炎の鞭からは煮え滾るような熱気が溢れているが、本領はそこではない。


「ハァッ!」


ビシリ、僕は地面にその鞭を叩き付けた。すると、凄まじい雷光が迸り、炎の鞭が直撃した場所に電撃が走った。人間ならば一瞬で焼け死んでしまうような電撃は、地面を罅割れさせて黒く焦げた跡を残すのみだった。

とは言え、この魔術の本領は魔力を自由に込められる所にある。炎の鞭へ流し込んだ魔力は電撃に変換出来る。直撃の瞬間に魔力を流し込めば、体内に浸透する魔力炎を通じて相手に直接電撃を叩き込むことが出来る。


……まぁ、だから何だって話だけどね!


別に僕は戦う相手も居ないし、全知全能で存在を知った魔術士やらに関わるつもりもない。この魔術はただの自己満足で、僕の趣味である。魔力とかも一応外に漏れないようにはしてるしね。


「さて、そろそろ帰ろ……」


音がして振り返ると、背後から蛇が僕の足元に忍び寄って来ていた。僕は心臓が止まるような思いをしながら、咄嗟に自分の部屋の中に転移した。


「ッ、ハァ、ハァ……」


驚いた。驚いた。僕はベッドの上に座り込み、高鳴っている心臓を抑え付けた。


蛇が出るなんて聞いていない。僕は確かに、あの場所は人気が無くて安全だと全知全能で知った……いや、違う。安全なのはあの日だけだったのか? 確かに、人が来ないかは毎回確認していたけど安全かどうかは最初しか確認していなかった気がする。

それか、蛇程度は危険に入らないという判断の下か? 確かに、全知全能の力があれば蛇に噛まれたところで何も起きていないようなものだ。小指をタンスで打つのと変わらないだろう。


「……良し」


僕は決めた。不測の事態に備えて一つシステムを作っておくことにした。命の危機に瀕した時、僕の身を護る球状のバリアが展開されて中に居る僕の身を安全な状態に保つ。バリアの展開時間は一応、十秒としている。

常に無敵とかにしないのは、何か起きても掠り傷すら負わなければ流石に怪しいからだ。それに、常に無敵だと何というか張り合いが無い。まぁ、実質無敵のバリア能力なんて作っておいて今更ではあるけどね。


まぁでも、あの場所はもう使わないようにしよう。蛇は嫌いじゃないけど、野生で出てくると普通に怖い。バリアはあるけど、命の危機にしか発動しないから蛇には普通に噛まれるだろうし。


……あの蛇、まさか魔術士の使い魔とかじゃないよな? そう考えた僕は直ぐに全知全能の力で確かめたが、どうやら普通の蛇だった。何なら毒も無い。


鞭はあの場に取り落としてしまったが、直ぐに消えるだろう。僕は家の中に誰も居ないことを確認すると、靴を脱いで玄関まで戻しに行った。







晩御飯の時間になると家族全員がリビングに集合しており、食卓を囲んでいた。今日はお父さんも居る。だが、日に日に隈が濃くなっている気がするのは僕の勘違いだろうか。全知全能の力で元気にしてあげようかとも思ったが、ちょっと怖かったのと明らかに不自然なのでやめておいた。やるとしても、もう少し迂遠な方法でやろう。


「治。そういえばアンタ、最近いっつも外で遊んでるわね」


「ん、まぁね」


僕は内心動揺しつつも、平然とした態度で頷いた。同時に、カレーを掬って口の中に放り込む。これで、数秒は喋れないから一応時間稼ぎになる。


「珍しいなぁ。治はいっつも家でゲームをしてるイメージだったけど」


お父さんが目を丸くしつつも、少し嬉しそうに言った。出不精とは言わないが、確かに家でゲームをしてばっかりの僕にしては珍しいだろう。


「ふっ、アンタはどうせゲーセンでしょ?」


「うん、ゲーセンも行くね」


笑いながら言ってきた姉に、僕は頷いた。ゲーセンやらカラオケやら、実際友達と遊びに行くのはそれくらいだが、毎日だと金を使い過ぎてて怪しまれるので僕はこう続けて話した。


「でも、最近は図書室で勉強も結構してるよ。家とか学校より落ち着くからさ」


「へぇ……アンタが?」


信じられないものを見るように姉が言う。実際、僕は勉強が大嫌いな人間である。興味を持ったことなら割と熱心に調べられるタイプだが、興味が無いものには幾ら赤点がチラつこうと勉強する気にはなれない。


「治も柚乃《ゆの》も勉強嫌いだったけど、遂に治はやる気出したんだ」


「言っとくけど、私は兄貴と違って授業は毎回ちゃんと聞いてるからね!」


態と妹と比較するように姉が言うと、妹は姉を睨み付けて怒った。


「それに、私はまだ高一だし。高二のお兄ちゃんとは違ってまだまだ時間があるから」


「ふふ、じゃあお兄ちゃんと同じ二年生になったら勉強するってこと?」


怒ったせいで兄貴呼びが元に戻った妹をからかうように姉が言うと、妹はより一層睨みを強めた後、口を閉じてそっぽを向いた。無視を決め込むことにしたらしい。


「美那《みな》。あんまりからかい過ぎたら怒るわよ」


「はいはい。ごめんね、お姉ちゃん言い過ぎちゃった」


「……知らない」


軽い調子で謝るもそっぽを向いたままの妹に、僕は自然に父と顔を見合わせていた。姉は妹が可愛いのか、からかい過ぎるところがある。その度に妹が怒り、母は叱っているのだが、僕とお父さんだけはじっと何も言わずに気配を消しているのだった。

ある日、僕は全知全能になった

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