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「……そう、そうなの。実は、お笑いが好きで。……日比谷くんは、その、期待の新星っていうか」
私の口から出た言葉は、自分でも引くほどしどろもどろだった。
部下たちの視線が、まるで珍獣を見るような目に変わる。あの「氷の女王」と呼ばれた桜川栞が、地下芸人の追っかけをしていたなんて、明日の社内ニュースのトップを飾るに違いない。
「へぇー! 桜川さんが推してる芸人さんなら、絶対売れますよ!」
「日比谷さんって言うんですね。後でSNSフォローしなきゃ!」
無邪気にはしゃぐ部下たちを前に、私は引きつった笑顔を張り付かせるしかなかった。
光はといえば、トレイを脇に抱え、満足そうに私を眺めている。
その目は明らかに、私の「弱み」を突いて楽しんでいた。
「いやー、光栄っすね。そこまで言ってもらえるなら、今度『特別サービス』しなきゃですね」
光はそう言って、伝票の裏にサラサラと何かを書くと、それを私の目の前に置いた。