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第31話 〚近づく影、揺れる予感〛
運動会練習が続く数日間。
校庭は、毎日同じ音で満ちていた。
笛。
掛け声。
土を踏みしめる音。
澪は、少しずつ慣れてきていた。
走ることも、
動くことも。
(……前より、動けてる)
そんな小さな変化を、
一番近くで見ていたのは――海翔だった。
「今日も、良かったな」
水筒を渡しながら、
自然に声をかける。
「フォーム、前より安定してる」
「……ほんと?」
「ああ。
努力してるの、ちゃんと分かる」
その言葉に、
澪は少しだけ笑った。
その瞬間――
胸の奥に、チクリとした痛み。
(……来る)
視界が、
一瞬だけ暗くなる。
――妄想(予知)。
夕方の校庭。
人の少ない場所。
澪の背後に、
影が伸びる。
名前を呼ぶ、低い声。
振り返る前に――
映像は、途切れた。
「……っ」
澪は、
思わず立ち止まる。
「澪?」
海翔が、
すぐに気づく。
「どうした?」
「……なんでもない」
嘘だった。
胸が、
落ち着かない。
その少し離れた場所で、
恒一は二人を見ていた。
澪に向ける視線。
そして、海翔を見る目。
そこにあったのは、
はっきりとした敵意。
(……また、近い)
(俺の場所を、奪う)
恒一は、
拳をぎゅっと握る。
その様子を、
えまが見逃さなかった。
「……あれ」
えまが、
小さく呟く。
「恒一、やばくない?」
しおりは、
視線を逸らさずに答える。
「……澪を見てる目じゃない」
「持っていかれそうな目」
みさとは、
不安そうに澪を見る。
「……言った方がいいよね」
三人は、
顔を見合わせる。
まだ、
確信はない。
でも――
嫌な予感だけは、
全員が同じだった。
その日の帰り道。
澪は、
夕焼けを見ながら歩いていた。
(さっきの予知……)
(あれ、いつ?)
答えは、
出ない。
ただ一つ、
はっきりしていること。
――このままじゃ、
何かが起きる。
そしてその影は、
もう、すぐそこまで来ていた。
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