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縁en
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#snjn
キキ
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モブ女子独白の学パロ
これになりたい人生だったのである意味夢小説です
この度、他家へ嫁ぐ運びとなり、身辺の整理をしていたら1枚の写真が出てきた。
高校時代のとある先輩の写真。一気にその記憶が甦る。
あれは初夏に差し掛かった頃の話だ。
当時、学年が1つ上の先輩に恋心を抱いていた。名前は吉田仁人という。
特別目立つような人ではなかったが、ひっそりと彼に憧れを持った女子はそれでも多かったと思う。
きっかけは、入学してから2ヶ月ほどの頃。
下校しようと玄関にいたところで突然1つ上の先輩に言い寄られる事態が発生した。元より異性に対して苦手意識を持っていた私はどう対処していいのか分からず、ただひたすらに縮こまるしかなかった。何も言えない私を相手は肯定と解釈したのか、ついに触れてこようとした時。
「この子、困ってんの分からない?」
ぐっと割り込んで自分の背に私を庇うように現れたのが吉田先輩だった。
呆れたように、責めるように冷たい声が静かに空間に響く。それに気圧されたのか、向こうの先輩はさっきまでの勢いはどこへ行ったのやら呆気なく引き下がった。
その姿が見えなくなってから1つ大きいため息を吐いた彼は「大丈夫?」とだけ声をかけて立ち去ろうとするから。慌てて「あっありがとうございます!」と言うと、顔だけ振り向いた彼は「気を付けて帰りなね」と柔らかい笑みを浮かべた。
その時は自分を助けてくれた人物が誰なのか分からなかったけれど、あとから2年の吉田先輩ということを知って。
正真正銘の、初恋だった。
そんな吉田先輩に『今日の放課後、校舎裏で待ってます』とだけ記した手紙を下駄箱に入れるという、実に古典的な方法で呼び出し、告白をしたのだ。
名前も書いていないような時代遅れのそれに、それでも無下にせず実直に来てくれた吉田先輩に自分の学年と名前を告げ、吉田先輩が好きです、と。一言だけ。
「ありがとう。でもごめんね、大切な人がいるんだ」
返事は分かっていた。吉田先輩に告白した子はみんなそう断られたと口を揃えて言っていたのだ。
中にはただの口実だと強がる人もいたけれど、本当に相手がいるんだなとあの時の吉田先輩を見て確信した。慈愛に満ちた目は確実にここにはいない誰かへと向けていたのだから。
それが分かった瞬間に泣きたくなった。でも吉田先輩に迷惑は掛けたくなくて「来てくれてありがとうございました」とお礼を告げてその場では我慢し、帰宅してから家の自室で失恋の痛みを噛み締めた。
それから少し経った頃だ。
授業中に具合が悪くなり先生から許可を貰って一階にある保健室に向かっていた。授業中のため、しんと静まり返った廊下。階段に差し掛かる手前にある無人のはずの教室から小さな声が聞こえた。
その声は吉田先輩のもので、あの真面目な人がどうしてこんな時間にこんな所にと、疑問と興味が湧いて出た。
そっとドアの窓から覗くと後ろ姿でも分かる吉田先輩の姿があって、そのすぐ左隣にはもう一人。時折、吉田先輩の方に顔を向けることによってその人が佐野先輩だと認識できた。
佐野先輩は私の2つ上、そして吉田先輩の1つ上の学年の人だ。クラスメイトの子たちが佐野先輩にキャアキャアと熱を上げているため存在は知っているけれど、学年の違う吉田先輩と交流があるのかと少し不思議に思う。
確か、もう引退したけどサッカー部の部長を務めていて、学校の行事ごとになるといつも中心にいて目立つような人。
そんな佐野先輩が、どうして吉田先輩と一緒にいるんだろうか。
僅かに開いていたドアから2人の声が漏れるが鮮明には聞こえない。たまに、少し掠れた低い声色で「仁人」と耳に入ってくる初めて聞いた佐野先輩の声。
元々は具合が悪くて出てきたはずなのにずっとここから動けないでいた。どれくらいの時間が経ったんだろう、5分、いや20分も30分も居たような気に陥る。どうしてか2人から目が離せない。
相変わらず吉田先輩も佐野先輩も背を向けたままでこちらには気付いていない様子だ。
そうやってぼうっと2人の姿を眺めていたら次の瞬間の出来事に「あ!」と声が出そうになった。咄嗟に手で口を覆ったので辺りに響くことはなかったけれど、バクバクと動く心臓の音が五月蝿く耳についた。
未だに続くそれに、混乱が生じた。佐野先輩の手が吉田先輩の肩に触れたと思ったら、吉田先輩に重なるように佐野先輩が顔をくっつけている。
なんだろう、これ。
頭が何も回らなくて呆然と目の前の光景を享受していた。
でも、吉田先輩に重なったことでこちらに正面を向けた佐野先輩とついに目が合ってしまい、その目に圧倒されて漸く、どれくらい立ち尽くしていたか分からなかったこの場から離れることができた 。
あの直後のことだけは未だに何も覚えていない。あれからあの教室の前を通ることはなかったので先輩たちを見ることもなかったし、気付いたら佐野先輩も吉田先輩も、そして自分自身も卒業を迎えた。
そうしてすっかり忘却の彼方へと流れて今の今まで忘れていたのだ。
あの2人は今、どうしているんだろう。
少し色褪せた写真を一撫でして、不要の袋へと落とした。
さようなら。どうか、お幸せに。
end
コメント
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うわあ、すごく切なくて綺麗なお話でしたね…(じんわり) 「大切な人がいるんだ」って断る吉田先輩の優しさも、その相手が佐野先輩だったんだなって分かるラストも、すべてが報われる感じがして胸がぎゅっとなりました。しかも語り手が「さようなら。どうか、お幸せに。」と手放す場面、すごく大人だなあって。誰かを本気で好きになった人の強さが滲んでて、ずっと余韻が残りそうです。素敵な作品をありがとうございます🌷