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【ペナルティークエスト放置して発動しちゃう話】
〈ペナルティークエスト〉
誰かの体液を摂取せよ
「は?」
彼、水篠旬が今このような状況になっているのには訳がある
その日は忙しかった
上級ダンジョン3つをハシゴし、休む間もなく家に帰れば葵と母さんがお腹を空かせて待っていた
夕飯を作るため買い出しに出向き、影の交換スキルまで使用して速攻で家に帰ると夕飯を作り始める
作り終えた夕飯を美味しそうに食べる葵と少し申し訳なさそうにする母さんを微笑ましく見つめる
そんな光景を横目に一息つこうとソファに腰を下ろす
「プルルルル!!」
勢いよく着信音が鳴る
はぁ…と小さく溜息をつき、スマホを手に取る
電話に出ると、相手は犬飼だった
上級ダンジョンが出現してしまったが、現在大型ギルドは全て出払っており、仕方なく我進ギルド に攻略依頼が回ってきたのだ
旬は二つ返事で了承し、下ろしたばかりの腰を上げる
家族に一言伝え、椅子に掛けてあったフード付きローブを手に取り家を出る
すると、目の前にウィンドウが現れた
〈デイリークエスト未達成〉
残り4時間で日付が変わります
日付けが変わると、強制的にペナルティーゾーンに飛ばされます
(そういえばまだデイリークエストやってなかったな…まあいいか、帰ってきてから終わらせよう)
目的地がやや遠いため、カイセルを呼び出しその背中に飛び乗ると、指定されたダンジョンまで向かった
ゲートをくぐると
ピコンッ
〈ダンジョンに入室しました〉
と見慣れたウィンドウが現れる
このダンジョンのランク自体はA級
比較的高いが、レベルアップした旬の敵じゃない
すぐに片付くだろうと思っていた
しかし今の旬は疲れている
いくらS級と言えど、一日中休む間もなく 動いていては疲労も溜まる
影達の力も借りながらなんとかボスを倒しゲートを出る
なんだか今回はいつもより時間がかかった気がする
すごく疲れたし…
次の 瞬間、ものすごい疲労感が旬を襲い、そのまま地面に倒れ込む
疲労がピークに達したのだろう
幸いここはあまり人目につかない路地だったので誰の目にもとまることは無かった
睡魔に誘われるがまま目を閉じようとした
しかし旬は忘れていたのだ
デイリークエストをこなしていないことを
日付が変わり、目の前にウィンドウが出現する
ピコンッ
〈!デイリークエスト未達成!〉
ペナルティーゾーンに移動します
その瞬間、旬を白い光が包んだ
旬は眩して目を瞑る
数秒後には跡形もなくその場から消えていた
次に目を開けると、白いシーツの上だった
視線を上に上げると、目の前にペナルティークエストが表示されている
ここで漸く冒頭に戻る
(はぁ!?なんだよこれ!?誰かの体液って、いやそれよりも何処だここ?)
慌てて自分の状況を確認すると、ダンジョンから出た直後の服装で白いキングサイズのベットに座っていた
周りを見渡すと白い壁と沢山の人影が見える
どうやらデイリークエストを放置していたせいでペナルティークエストが発動してここに飛ばされたらしい
(全く…厄介なことになったな…)
ん?人影?
上体を起こし目を凝らす
よく見るとその人影はどれも見覚えのあるものばかりだった
「うおっ!なんだここ!?」
最初に声を上げたのは黒須だった
「煩いですね、少し静かにして頂けますか?」
「ああ”ぁ”ん?なんだとォ、」
「はいはいストーップ」
最上が文句を言い、黒須がキレて最上に掴みかかり、それを手馴れた様子で美濃部が制止する
「それにしても何処なんだここは?」
「白川さんっ!!」
白川が呟くと、後ろから呼ぶ声が聞こえる
白川が振り向くと、そこには焦った様子の犬飼とイラついたように目をギラつかせている道門がいた
「犬飼さん!これどういう状況ですか!?」
「分かりません。気づいたらここに飛ばされていました。そちらは?」
「我々も、ギルドの合同訓練をしていたところ気づいたらここに居ました」
「ハァ?何それ、そもそもここどこなんだよ! 」
犬飼の問に白川が答えると、道門が悪態をつく
旬だけじゃなく、みなこの状況に困惑しているようだ
旬が違う方に目をやれば、何やら図体のデカイ男と、黒い長髪の男が立っている
「なんなんだこれは?」
「さぁ?俺にも分からないな」
トーマスが周りを見ながら尋ねると、劉がフッと笑いながら返す
(スカベンジャーギルドのマスター、トーマスだよな?あれ
そしてその横に居るのって中国の七つ星ハンターの劉?)
困惑していることは確かだが、心做しかこの状況を楽しんでいるようにも見える
国家権力級が2人も…と思ったが、どうやら国家権力級はこの2人だけじゃないらしい
2人のさらに後方にはクリストファー・リードが壁にもたれかかっている
その近くにはDFNの抜剣ギルドマスター、リューが周りを見渡している
なんでこんなにも上級ハンターが揃ってるんだ?と思いつつ、視線を左にずらすと青い顔をした諸菱がこちらを見ている
ギョッとして慌てて視線を外すと
「水篠さぁ〜ん!!(泣)」
名前を呼びながらこちらに走ってくる
その大声にその場にいた全員が旬の存在に気付いて振り向き、またもや俺はギョッとする
トーマスが近寄ってきてくる
「Hey!久しぶりだなミスターミズシノ!カミッシーの短剣以来か?」
「あ、ああ、そうだな」
「ところでこれはどういう状況だ、何か知ってるんだろ?」
トーマスに問われ、旬は説明に困り口を噤む
そんな旬の様子をトーマスは不思議に思う
すると今度は白川達が旬に聞く
「水篠ハンター、どういうことですか?なぜ我々はここにいるのですか?」
白川の言葉に全員が旬に目を向ける
隅の方にいたクリストファーやリューまでもがこちらを見て、旬の説明を待っている
旬は仕方ないと諦め全てを話しだした
「犬飼さん、前に俺にしか見えないメッセージがあると言いましたよね?」
「はっ、はい!」
急に名前を呼ばれ慌てて返事をする
「あれと同じです。俺にはデイリークエストっていうのがあって、日付けが変わる前にそれをこなさないとペナルティーが発動するんで
す。」
「はぁ?アンタ頭おかしくなったんじゃないの?」
道門がキレ気味に言う
「それで、ペナルティーの内容はなんなんだ?」
遠くで眺めてたリューが言う
「それが、いつもは砂漠に送られてモンスターが沢山出てくるんですけど、どうも今回は違うらしく
て、、 」
皆がが静かになる
「その、、『誰かの体液を摂取する事』がクリア条件らしいです…」
沈黙が流れる
最初に沈黙を破ったのはトーマスだった
「なんだそれだけの事か!簡単じゃないか!つまりこの中の誰かがミズシノとセッ「黙れ」
劉がすかさずトーマスの口を塞ぐ
「なるほど、誰かが水篠ハンターとヤればいい、ということですか」
最上が呟く
「えっちょ待って!?俺が誰かと!?」
「しかし、誰がやるんだ?」
旬が動揺するが、その声は黒須に
掻き消される
「ちょっ」
「俺がやろう」
スっと手を挙げたのは、ここまで無言を貫いてきたクリストファーだ
「えっ何言っ」
「待て!何故お前がやるんだ!やるならこの中で1番強い俺だろ?」
「そんな簡単に水篠ハンターをアンタに渡すかよ」
トーマスがさも当たり前かのように、先程から言葉を遮られてばかりいる旬の腰に自身の腕を回そうとする
しかし劉がそれを許さないとでも言うかのようにトーマスを引き戻す
「なら僕がやりましょう」
「えっ!?美濃部ハンター?」
「おい剛、いくら長年の付き合いでも抜け駆けは許さない」
白川が美濃部の肩を掴み、髪を白く変化させていく
旬が困惑していると、右から気配を感じ、咄嗟に構える
すると目の前に隠密を解いた道門が現れる
「残念、みんなが争ってるうちに頂こうと思ったんだけどな〜」
「何してるんだ道門、お前だけは絶対にないから諦めろ」
道門の後ろから犬飼が現れ首根っこを掴み旬から遠ざける
「さっきからセックスとか誰が俺とヤるか、とか、、皆さんどうしたんですか?」
「そりゃあ、好きなやつと合法的にセックスできる絶好の機会だ」
「ご丁寧にベッドまで用意されてるんだ。このチャンスを逃す馬鹿がどこにいる?」
劉が言い放ち、それに黒須が続く
「はあっ!?好きなやつって、」
旬の顔が赤くなる
「恥ずかしがってる顔も可愛ですね」
いつの間にか近くに来ていた最上が旬の顔に触れる
旬が皆んなの方に目をやれば全員が殺気の籠った目で最上を見ている
ますます意味がわからなくて旬は混乱する
「ちょっと待ってください!!」
諸菱が、混乱する旬を最上から引
き剥がしながら叫ぶ
「さっきからセックスセックス言ってるけど、別にヤる必要なんてないじゃないですか!!誰かの体液なんだから血液やヨダレを水篠さんに飲ませてあげればいいんじゃないんですか?」
諸菱が言った瞬間、その場の魔力量が一気にました気がした
クリストファーが近づいてくる
「あのなァ坊ちゃんよぉ?かの水篠ハンターとセックスが出来るまたとないチャンスだ。ここにいる全員が前々から水篠ハンターを狙ってんだよ。そうやすやすと済ませられるわけねェだろうがよォ」
国家権力級のオーラを目の前で晒されてとうとう諸菱は気絶した
いや、寧ろD級の諸菱が上級ハンター相手によくやった方だと思う
犬飼が気絶した諸菱を引きずっていくのを横目に、旬は未だに困惑していた
(みんなが、俺を好き!?なんでだ、俺男だぞ?可愛げのある顔って訳でもないし、)
思考を巡らせていると、ふと顔が上を向く
劉に顎を掴まれたのだ
「水篠ハンター、あんな野蛮な熊は放っておいて、俺とヤろうじゃな
いか」
「誰が野蛮な熊だって?」
怒ったトーマスが劉に殴り掛かる
その手をすんでのところで受け止めた劉は反対の手で腰に差していた長剣を引き抜く
それを見て、トーマスも劉の手を振り払って距離を取り、拳を構え戦闘態勢に入る
が、こんな所で国家権力級同士に争われては周りはたまったもんじゃない
白川が止めに入る
「落ち着いてください。こんな所で国家権力級に争われては困りますよ。それよりも、まずはあちらを解決した方がいいんじゃないですか?」
白川が旬の方を見る
その目には欲を孕んだ色が混じっており、旬はヒュッと息を飲む
白川の言葉に、トーマスは不本意ながらも怒りを抑えて拳を下げ、それを見た劉も剣を腰にしまった
「結局、誰が水篠ハンターとヤるんだ?」
今にも旬に飛びかかりそうな最上を美濃部と2人がかりで押さえつけながら黒須が言う
「ちょっと待ってください!諸菱君が言うように、血や唾液ではダメなんですか?」
「そうですよ!!ただでさえ水篠さんは童貞処女でそういうことに鈍いのに、いきなりむさ苦しい男ハンターとセックスだなんて、!」
焦る旬の言葉に、いつの間にか目を覚ましていた諸菱が続く
「えっ、いや俺は鈍くは無いだろ」
「いえいえ、水篠さんは絶望的なまでに鈍いです!」
「そ、そんなに?」
キッパリと言い切る諸菱に、どこかショックを受ける旬
「実際、ここ居る方たち普段から水篠さんに猛烈にアプローチしているのに全然気づいていないじゃないですか!」
そう、この空間にいる諸菱以外全員が、旬を好いており、会う度にアプローチして来る
それはもう周りから見れば執拗いぐらいに
そういえば、、と旬は記憶を掘り起こす
まず初めに思い浮かぶものとしてはギルドマスター達だろうか
ギルマス達は車や家を提案してきたり、すれ違う度に肩や腰に触れてくる
特に最上なんかは大胆にホテルに誘ってくる
まあ、その度に他のギルマス達に押さえつけられているが
犬飼や道門は監視業のエキスパートな為、即座にSNSなどで旬の情報を入手したり、犬飼は課長の権力を使って一般人が入手出来ないような旬の情報まで握っている
道門は隠密を使い旬の後をつけスマホを構えている
所謂盗撮だ
旬は2人の奇行に気づいてはいるが、やはり鈍いため、「一種の職業病なのかな」とスルーしていた
トーマスなんかは1番分かりやすいだろう
会うと「Hello!!ミスターミズシノ!!今日も美しいな!」と豪快な笑顔でハグを要求してくる
旬はそれに応えるが、今思い返せばどうにもハグの時の手つきがいやらしい
まあもちろん鈍いので、「アメリカではこれが常識なのか」と旬はまたもやスルーしていた
最近は我進ギルドの事務所にまでアポ無しでやってくる
その度に彼の秘書のローラに釘を刺されてるのはまた別の話
アメリカの国家権力級が易々と国を離れていいわけが無い
劉はよく模擬戦に誘ってくるが、模擬戦の最中に少々体に触れてくる
劉は長剣、旬は短剣を使用しているので、あまり身体が接触することにはならないはずだ
それなのに何故か接触が多い
そしてその時の劉の長剣を握った手が中々に週の身体の際どい箇所を掠めていく
が、少し疑問に思うことはあっても、やはり鈍いのでこれまたスルーしていた
挙げていったらキリがないのでここは割愛させて頂こう
とまあこんな感じで今思い返してみればそれらしい言動が多々ある事に気づく
今までよくスルーしてたな俺…。
そこまで考えると、急に目の前に黒い影が立ち上る
影は徐々に形を変えていき、いつもの見慣れた人型になると、ベットに腰掛けている旬の前に跪いた
イグリットが影から出てきたのだ。
そして徐に旬の手を取り、手の甲に口付けをする
イグリットは影から出てくると必ずこの行為をするので旬からしてみれば普段からやってる事なので特に気にはならないが、どうも周りのハンター達は違ったらしい
手の甲に口付けをするのは忠誠という意味が込められてるので別に問題は無いが、今、この状況でその1連の動作を他のハンター達が目の当たりにすると…
気が向いたら続き出るかも
(期待しない方がいい)