いつもと違う風景の中を歩いている。
見慣れない道。
ふいに現れた分かれ道を曲がると……
小さな公園に出た。
街灯の下……
ベンチに座っている老人がいる。
近づいてみると、それは……
いつか見たことのある顔だった。
「……あなたですか?」
少し驚いて声をかけると、 老人はゆっくりとこちらを見た。
「やあ、また会ったね」
そう言って微笑みかける表情は、 やはり以前に見かけたときと同じように見えた。
「お元気そうですね」
「ああ、まぁな……」
言いながら、老人は笑った。
「今日はひとりかい?」
尋ねられて、僕はうなずく。
すると……
「座らないかね?」
不意にかけられた声の方を見ると、 そこには黒いローブを着た人物が立っていた。
顔はよく見えないけれど、どうやら男の人のようね。
「えぇ、ありがとうございます」
わたしはその人から少し離れた席へと腰掛けた。
そこは窓際のテーブルのひとつで、ちょうど月明かりがよく当たる位置にあったわ。
空を見上げると大きな満月が浮かんでいてとても綺麗だけど、今はそんなことを気にしている場合じゃないわよね。
「あのっ! 突然こんなことを聞くなんて失礼かもしれないですけど、ここって一体どこなんですか!?」
「ここは、夢幻回廊と呼ばれる場所だよ。キミ達人間の言葉で言えば『夢の中』ということになるだろうか」
「ゆ、め……?……」
ぼんやりとした意識のなか、 僕は目を覚ました。……見慣れない天井。
一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなる。
(そうだ!)
僕は慌てて飛び起きた。
まだ少し頭がぼうっとしているけれど、 そんなことを言ってはいられなかった。僕は急いでベッドから抜け出すと、 部屋のドアノブに手をかける。
けれども……それはガチャリという音と共に、 僕の手を拒んだ。……どうやら内側から鍵がかけられているらしい。
それに気づいた瞬間、 僕の頭の中は急速に覚醒していった。
ここはどこなのか……? 僕はどうしてここにいるのか……? 思い出せないことが多すぎる。
けれども、とりあえず今は考えている暇がない。
僕はすぐに別の手段を考えた。
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