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初デート()を終えた二人は、次のダンジョン探索の準備・買い出しを終え、翌朝を迎えた。
昨日二人が帰った時、カーラに根掘り葉掘り聞かれたのは言うまでもないだろう。
『凄く綺麗ですよ!』『高かったでしょ!?』『き、金貨45枚…』
と、見るからに高級な服を着ているミルキィはカーラに揶揄われた。
いつもの冒険者活動の服に身を包んだミルキィとレビンは、予定通りダンジョンへ向かっている。
「水が出せる魔導具っていくらぐらいするんだろうね?」
「サリーさんに聞いてみるしかないんじゃないの?もしくはカレンさんか」
あれからというもの、レビンは魔導具が気になって仕方ないようだ。
「でも、おそらく私達には手が出ない値段よ?」
「そうなの?」
「カレンさんの魔法講義の時にも少し触れていたけど、魔導具は大した事がないものでも金貨100枚は下らないみたいよ」
ミルキィからもたらされた情報に、レビンは項垂れることしか出来なかった。
ダンジョンに入り気を取り直したレビンは、別の事をミルキィと話し合うことにした。
もちろんダンジョン内であるため、考え込まない程度の会話に終始する。
同じ過ちは繰り返さない。
というより、アランに小突かれたくないだけかもしれない。
「ミルキィは今レベル87だよね?」
「そうね。信じられないけど事実よ」
改めて自身のレベルを確認したミルキィは聞いた事がないレベルに未だ慣れない。
「…」
「何よ?」
確認したレビンが黙り込んだ為、ミルキィは魔力探査を行いながらも尋ねた。
「…レベルが99になったら次は100なのかな?」
「?それはそうなんじゃない?」
何を当たり前な。とミルキィは返すがレビンが数を数えられないとは微塵も思っていない。
「レベル100…三桁なんて聞いたことある?」
「…ないわね」
「僕もない。というか、読んでた冒険録にも出てこないし、ギルドでも聞いたことがない」
「つまり?」
「99がレベルの限界かなって。まだわかんないけど」
レビンは他の人のレベルをチェックしているわけではない。
しかし、ギルドの依頼ボードに貼り出されている依頼書にも、レベルの指定があるものも多い。
レビンが確認したその中の最大レベルでさえ、50というものだった。
レビンが確認する依頼書は塩漬依頼が殆どの為、確信は持てないが余っている依頼より高いレベルが求められる依頼は少なそうではある。
50レベルが巷に溢れていない、又は少ないから依頼が残っていると考えていた。
「今回の目標はレベル99から上があるのか?の検証もあるから頑張ろうね」
「多分、それはすぐわかりそうね」
ミルキィの言葉にレビンも頷いて答えた。
雪山エリアにつけばすぐにわかることだろう。
最近ではレビンのレベルの上がる早さより、ミルキィのレベルドレインの方が遅いのだ。
前回のダンジョン探索でもミルキィのレベルアップによる酔い・・覚まし待ちで、かなりの時間をゆっくりと過ごしていた。
「どう?まだ高揚感はある?」
レベルドレイン後、暫く経ってからレビンはミルキィへと聞く。
「もう大丈夫よ。これでレベル92ね」
「うん。この調子だとすぐだね」
この雪山エリアのいい所は、寒さによりレベルアップの高揚感がすぐ冷めるところも含まれていた。
そして、ミルキィのレベルドレインも今回の探索で5回目。
後7回のレベルドレインでレベル99になる。その次の1回で、レベル三桁が存在するのかがわかる。
ちなみにレビンのレベルは、現在レベル14(105)であった。
(僕のレベルは実際のレベルが低いからなのか、上がり続けているんだよね。
高揚感もあるし、ホントに僅かだけど強くなっている感覚もあるから…あがっているはず)
レビンはその事をまだミルキィに伝える気はない。
レベル99を超えられなかった場合、ミルキィがまた足手纏いになると悩むかもしれないからだ。
ミルキィへと渡すレベルは確保している為、魔物との戦闘は一旦中止にして、前回同様に雪山での雪中キャンプの準備に取り掛かった。
「よし。こんなもんかな」
「上出来よ。だんだん慣れてきたんじゃないの?」
二人の目の前にはかまくら…とは名ばかりの立派な雪の洞窟が鎮座していた。これも偏に、人外の領域に踏み込んだ二人ならではのもの。
「後は水を掛けて固めれば崩れないね」
入り口は二人が屈んでやっと通れるサイズだが、中は広々としていた。
入り口のところにキッチン()を作り、奥には居住区、さらに奥には荷物置き場を作った。
「こういうところでレベルの恩恵を感じるね」
「なんか間違っている気がしないでもないけど…頷いてしまうわ」
レベルアップによるフィジカルを使い、瞬く間に作り上げてしまった。
そして前回よりも大きくなっていた。
慣れると人はどこででも快適さを求めてしまうのかもしれない。
「居住区には草原エリアで刈った草を敷き詰めたし、これで快適だね!」
「ええ。料理も捗りそうだわ」
二人は快適になった雪山エリアを満喫していた。
「どうかな?」
雪原に佇むレビンが、不安そうに幼馴染を見つめる。
その慈愛の籠った視線に幼馴染は柔らかく微笑み返す。
「大丈夫よ。無事に上がったわ」
そう答えたミルキィはレビンにレベル99のタグを見せた。
「ふぅ。とりあえずは後一回だね。もちろんミルキィの身体に影響がないなら、これからも僕の血を吸ってもらうけど」
「ふふ。大丈夫よ。今更拒絶反応なんて出ないわ。それにママにも言われたけど、美味しい不味いはあっても血に拒否反応が出るヴァンパイアなんて聞いたこともないわ」
それでもレビンは心配なのである。
(レベルが吸えるのはミルキィだけなんだ…何も起こらないといいんだけど…)
もちろん幼馴染にその事は告げない。解決策も、それ以前にまだ問題は起きていないのだ。
無駄になるかもしれない不安を煽るような事はしない。
どこまでも幼馴染ファーストな二人なのである。
「僕のレベルも上がり辛くなってるし、今日はこの辺にして休もう?」
「そうね。近くに魔物はいないみたいだし賛成よ」
魔力探知で生き物の魔力を探したミルキィはレビンにそう伝えると、キャンプ地へ向け足を動かした。
雪の家へと帰ってきた二人は仲良く夕食を食べた。
夕食といってもダンジョン内では常に時間は一定である為、二人にとってはと注釈がつくが。
「これから目標の一つだったレベル100に向かうんだけど……」
レビンはレベル100になれるか気になるが、それ以上にただの幼馴染として以上の感情を持っているミルキィが心配だった。その感情に名前はない。
「大丈夫よ。体調に問題はないわ。もちろん吸血衝動もないけど、それはいつものことだから。ね?」
迷子の子供のような表情のレビンに、まるで聖母のような慈しみを持って安心を与えるミルキィ。
「うん。もし何か異変を感じたらすぐにやめてね?」
「わかっているわ。私に何かあっても相談できる人がいないものね。ごめんね?」
ミルキィはハーフと言えどヴァンパイアである。
もし病気になっても、治癒師に見せていいものかもわからない。
「それこそ今更だよ。ミルキィに何かあっても僕が必ず助けるから!」
普段であればこのようなくさいレビンの言葉に顔を赤くするミルキィだったが、レビンのこの言葉は長い付き合いの幼馴染として当たり前にあったものだからかなのか、自然と腑に落ちた。
困ったことがあればいつも二人で解決してきた。
悲しいことがあればいつも二人で泣きあった。
嬉しい事は二人で。
シュッ
カプッ
レビンに歯を立てられないミルキィの為に、いつものようにナイフを使い吸血させた。
ドサッ
「!?ミルキィッ!?」
吸血後、倒れたミルキィに呼びかけるレビン。
しかし、ミルキィが目覚める事はなかった。
レベル
レビン:12→10→15→14→16→15→17→16→17→16→
18→17→18→17→18→17→18→17→19→18→19→18→22(121)
ミルキィ:87→99→???