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夜の漢江公園、噴水に阻まれて彼女に辿り着けないもどかしさが映像のように浮かびました。ひまわりを握りしめて全力疾走する文也さん、大型犬みたいな上目遣いは反則級ですね。スタバのコンセントの話がここで繋がるとは。「仕留める」発言に藤子さんが眉をひそめるけど、実はもう心がほどけているのが伝わってきて、ニヤニヤしながら読んじゃいました。二人らしい距離感、好きです。
:・.。. .。.:・
【ソウル漢江《ハンガン》公園】
. .。.:・
夜の漢江公園はソウル市内とは思えないほどの豊かな緑、と夜の噴水と、イルミネーションが綺麗な所だった
沢山のカップルがレジャーシートなどを引いて、夜のピクニックを楽しんでいた
ハァ・・・「藤子ちゃんどこいったんだよ・・・」
文也は、入国時に二人でレンタルした、スマートフォンに差し替える韓国用シムカードのGPS機能を使って、藤子を追って漢江《ハンガン》公園まで来ていた
画面に映るGPS上だと、この先あと500メートルほどに藤子がいるはずだ、彼女を探している間、千回の言い訳を思いついた、しかし、どんなに言い訳をしても、彼女に嘘をついていた事は確かだ
素直に彼女に許しを請いたかった、彼女が許してくれるなら、何でもするつもりだ
名物の巨大噴水が音楽に合わせて噴水ショーをくり広げている、とても美しく、周りはそれを見に来ているカップルだらけだ
そしてよく見ると、カップルの多くの女性は、決まって小さな花束を持っている。明洞にいた時も気づいたが、韓国は小さくてリーズナブルな花束を売る屋台が沢山ある。韓国の男性はデートの時に必ず花束を買って女性にプレゼントするので、屋台の花屋が儲かるのだ
公園に沢山ある花屋のうち、ひとつの屋台に文也は歩み寄った
ピンク色のユリや青い小花が儚げに風に揺れている、かすみ草やガーベラなど、様々な花が屋台から溢れ出しそうに鮮やかに売られている
ふと日本では、あまり見かけないガーベラほどの大きさの、それは見事な黄色をした、ひまわりに目が行った
「アニョンハセヨ!」
花屋の屋台の前に立っていた老婆が、ツルツルの真っ白な肌に、小豆ほどの目を向けて文也に微笑みかける、文也は胸ポケットからウォン紙幣を束で老婆に渡した
「このヒマワリを全部くれ!大事な人に渡すんだ!」
老婆は札束を見て、黄ばんだ歯をむき出しにしてニッと笑い、瑞々しく、よく開いた小ぶりのひまわりと、かすみ草のアレンジ花束を作って文也に渡した
文也はヒマワリの花束を握りしめ再び藤子を探し夜の漢江公園を全力疾走した
気温は昼間と比べて若干涼しいが、それでもじっとしていても汗ばむ気温だ、ダンガリーシャツを脱いで腰に巻き、白のタンクトップになった、彼女の行方を一生懸命探しながら、文也は深く反省していた
今回の事は完全に自分が悪い、彼女はただ自分の事を思ってしてくれたことなのに、あの時やっぱり嘘をつくんじゃなかった、彼女は許してくれるだろうか・・・
すると300メートル先のベンチに、ポツンと座っている彼女を見つけた
―ああっ!良かった!彼女は無事だ―
「藤子ちゃんっっ!!」
文也が叫ぶと藤子がこっちを見た、文也が藤子に駆け寄ろうとした時、いきなり目の前の噴水が2メートルほど勢いよく噴き上がった
「くそっ!」
なのでその噴水がおさまるまで藤子の所に行けず、文也はその場で佇んだまま苛立った
―お願い藤子ちゃん、逃げないで―
やっと噴水がおさまって、ベンチを見ると彼女はまだそこにいた
「ここにいたの?探したよ!藤子ちゃん!」
文也は藤子の傍へ歩み寄った、反応のないその顔はほとんど無表情だ、文也は不安な気持ちで彼女の横顔を見ていた
「藤子ちゃん・・・」
「どうしてあんな嘘をついたの?」
彼女は静かに文也の方を見ないで、まっすぐ前を向いたまま言った
「嘘をついて本当にごめんなさいっっ!!」
文也はそう言って深々を頭を下げ、両手に持ったヒマワリを指し出した、藤子は驚いた、男性がこんなに素直になって自分の非を認めて謝罪するなんて・・・
信二だったら、たとえ彼が9割悪くても、あれやこれや言い訳して素直に謝らないだろう、それにこの素敵なひまわり・・・いつ買ったんだろう・・・藤子は以前から韓国に来て、いつか素敵な男性に花束をプレゼントして貰えるのが夢だった、でもこんな形で夢が叶うとは思っていなかった
藤子は差し出された花束をそっと受け取った、鼻の近くに持っていき、スっと匂いを嗅ぐ・・・新鮮な甘い植物の匂いがした、横目でチラリと文也を見ると、明らかに申し訳なさそうな情けない顔をしている、小さく小首をかしげてまるで大型犬が主人にするように上目使いで「きゅ~ん」とじっと見ている
彼を見たらあれやこれや言ってやろうと思っていたのに・・・もう、本当に可愛いんだから・・・彼を相手にいつまでも怒っていられない・・・それにあの時の彼を思い出した、殺される勢いでレーザーマシンを蹴り飛ばしていた
駄目だ・・・思い出したら笑いそうになったけど、わざと怒った顔を続けた
「敏感肌でもなんでもないのに・・・本気であの施術を受けようと思っていたの?」
「それで君と一緒にいられるなら・・・」
彼が身を乗り出した、その体は藤子と数センチしか離れていなかった
「本当にバカね、どうしてそこまでするの?」
すっと藤子がベンチの横にずれた、座れと言っている、すかさず文也が彼女の横に座る
「最初から話した方がいいか?あの時スタバで君のテーブルのコンセントを間違えて使った時」
「本当に最初じゃない!」
藤子は思わず噴き出した
「君が僕に喉スプレーを渡してヒーローのように去って行った後・・・僕はスタバの店員に訊いたんだ「彼女は誰だ」ってねそれと受付の女の子達にも聞いた、酷い声だ、ありゃ」
藤子は思わず「プッ」と笑ってしまった、たしかに受付嬢の彼女達と世間話をするのは勇気のいる事だ
「そして教えてくれたよ、君が神崎広告代理店のやり手のコピーライターだって、そこで僕は一晩中なんとかして君に近づけないかずっと考えていたんだ、そしてせっかく近づけたと思ったら、君は何かに傷ついていて、また離れようとした、あの時は何も考えていなかったんだ、君と一緒にいたくて「肌悩みがある」と咄嗟についた嘘なんだ」
彼は小さく首を振った
「そのためには、韓国で施術を受けるなんて簡単だと思ったんだ、体を張ることは慣れていた、しかしあのレーザーはさすがに怯んだ、ごめんよ、嘘をついて!でも本当に色々考えたんだ!!君を仕留めるにはどうすればいいか!!」
藤子は眉をしかめた
「仕留めるなんて・・・なんだか猫がくわえて来た得体の知れない獲物みたいな言い方ね!!」
「ああっごめん、とにかく君を捕まえたかったんだ」
文也がショックを受けた顔をした