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Maple 第1話
人だかりができていた。騒がしかった。
高校入学早々、喧嘩でも起きたのかと思った。
6時間目の体育の疲れが取り切れず、あくびを噛み殺しながら、おもしろ半分で人だかりに混じった。
皆夢中で体育館をのぞき込んでいる。
さっきまでいた体育館。
きつい授業を思い出し、少し気分が悪くなる。
室内からは、何やらボールの弾むような音と、キュッキュッと、何かが擦れる音が響いていた。
どうやら喧嘩ではないらしい。
ホッとしながらも、期待外れで少しガッカリしながらその場を離れようとしたとき、
ガコンッ!!
と、凄まじい音がして、皆から一気に歓声が上がる。
驚いて体育館を覗いてみると、背の高い男子生徒が、バスケットのコートにぶら下がっていた。
足元にバスケットボールが転がってくる。
「ダンク」の3文字が頭に浮かぶのに、さほど時間はかからなかった。
どうやらここに集まっている人達は、バスケ部の練習を見に来ていたらしい。
ダンクはバスケットの花形だ。
観客が最も喜ぶシュートで、最も迫力のあるシュートだと思う。
しかし実際に見たのは、これが初めてだった。
それもそのはず、私はバスケットに興味はなく、知識として知っている程度の一般人だ。
試合を見たこともない。
再び室内からドリブルの音が聞こえる。
私は、周りの人に押し出せれないように精一杯踏ん張りながら、試合の様子を見届けた。
奥のスコアボードには、1年VS2,3年の文字。
新入部員と先輩部員とで試合をしているようだ。
と、先程ダンクをキメた部員が猛スピードでドリブルしながら、ゴールに突っ込んでいった。
そして、自分より身長のあるディフェンスをものともせず、華麗にシュートをキメた。
1年の点数が加点される。
どうやら彼は1年生のようだ。
しかし、そんなことを気にする余裕がないくらい、私の頭の中では、先程の彼のシュートがループ再生されていた。
勢いのあるドリブル。
凄まじいジャンプ力。
綺麗なシュートフォーム。
バスケ初心者の私でも、思わずうっとりするような、美しいシュートだった。
また彼がゴールを決めたのだろう。
周りからは黄色い声援が溢れる。
これが私と、流川楓の出会いだった。
続く…
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