Maple 第2話
家に帰ってからも、彼のシュートが頭から離れなかった。
バスケには実に沢山のシュートがあるので、あれが何と言う名前のシュートなのかはわからない。
それでもあの華麗なシュートは、私の頭を支配するには充分すぎた。
あんなに綺麗なシュートがキマるのだ。
私が見逃したダンクは、どれほどのものだったのだろう。
勉強している間も、ご飯を食べている間も、お風呂に入っている間も、私の頭の片隅には、常に彼のシュートシーンがあった。
寝る前ですらも、彼のことを考えていた。
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翌日、登校しながらも、やはり昨日のことが頭にこびり付いていた。
また今日も見に行こうかな、などと考えているうちに、ふと思った。
試合を見ているときは、遠くて顔がよく見えなかったが、なんだかどこかで見たことがあるような気がする。
気のせいだろうか。
あれこれ考えながら教室に入ると、思わずあっ、と声を出しそうになる。
思い出した。
昨日のあの彼は、うちのクラスの問題児、流川楓だったのだ。
いつでも、どこでも熟睡している彼が、あんなにすごいプレイをしていだなんて、とてもじゃないけど信じられない。
そんな私の驚きをよそに、彼はすやすやと寝息をたてていた。
動揺しながらも自分の席に着き、教科書を引っ張りだしながら、横目に彼を観察した。
私と彼の席はかなり離れているが、それでもしっかり見えるほど長いまつ毛。
切れ長の目。
透き通ったような肌。
誰が見ても目を奪われてしまうほど、整った顔立ちをしている。
あまりにスポーツマンらしくない顔立ちだが、ガッシリとした体格に手足の筋肉が、彼がバスケット選手であることを教えていた。
と、突然彼が起き上がり、こちらを見た。
あまりに急なことで、2,3秒硬直してしまったが、慌てて目をそらす。
まだ騒いでいる心臓を必死に押さえつけながら、知らん顔して教科書に目を落とした。
たった数秒目が合っただけだが、これがきっかけで彼に振り回されるようになってしまうなんて、このときは考えてもいなかった。
続く…
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