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ひたむきに、あなたへ

58 - 第3章 近づく鼓動 第58話

2025年09月08日

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午後、華は宴会場の備品を運ぶ手伝いを任されていた。

大きな箱を抱えて廊下を歩くが、ヒールに慣れない足元はふらつくばかり。


「よいしょ……もう少し……」


その瞬間、床の小さな段差に気づかず、つまずいた。

「きゃっ!」

体勢を崩して箱を落とし、膝を床にぶつけてしまう。


「桜坂さん!」

すぐさま駆け寄った律が、彼女の腕を支えた。


「だ、大丈夫です……」と笑みを作ろうとしたが、痛みに顔がゆがむ。

膝に薄く赤みが広がっていた。


律の眉間に深い皺が寄る。

「無理しないでください。応急処置をします」


その声は、いつものぶっきらぼうさとは違う、真剣な響きを帯びていた。

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