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今年も俺は、藤川家の双子と花火大会に行く約束をしていた。夏のこのイベントに三人で行くことは、この数年来、毎年の恒例行事と化している。
藤川家に着いたのは、約束の時間よりやや早かった。今年も詩乃の可愛い浴衣姿を見られると思うと、胸がどきどきしてくる。まずはそれを落ち着かせねばと、俺は深呼吸を繰り返し、息を整えた。最後にもう一度大きく深呼吸をしてから、インターホンを押す。
しばらくして玄関が開き、ドアの向こうに浴衣姿の双子の姿が見えた。普段とは違った艶やかな姿に二人に見惚れてしまい、挨拶の言葉がおろそかになった。
「碧斗ったら、もしかして私たちに見とれてる?」
柚乃にからかわれて俺は我に返り、咳ばらいを一つして真面目な顔を作る。
「そんなんじゃないよ。ずいぶん化けたもんだな、って感心して見てただけさ」
「心にもないこと言っちゃって。素直じゃないんだから」
柚乃はくすくす笑いながら、俺の憎まれ口をさらりと流した。詩乃よりも先に玄関から出て来て、にやにやしながらこっそり俺に耳打ちする。
「今日の詩乃、一段と可愛いでしょ」
「うん」
うっかり頷いてしまい、はっとする。
「言ってあげたら?きっと喜ぶよ」
柚乃はにっと笑い、さっさと門の所まで行ってしまった。
詩乃が玄関のドアを閉めて俺の前に立つ。
「碧斗、お待たせ。行こっか」
俺はごくりと唾を飲み込んだ。柚乃の元へ向かおうとする詩乃を呼び止める。
「詩乃」
「ん?」
立ち止まった彼女は小首を傾げて振り返った。
俺を真っすぐに見る大きな瞳を見返した途端、頭の中が真っ白になって、中途半端な言い方をしてしまう。
「えぇと、可愛いな」
「え?」
柚乃は一瞬面食らった顔をしたが、すぐに嬉しそうに笑う。
「この浴衣のこと?やっぱり可愛いよね?お母さんが柚乃の浴衣と一緒に見立ててくれたんだ」
俺は詩乃のことを指して、可愛いと言ったつもりだった。
けれど彼女は、俺が褒めたのは浴衣だと勘違いしたようだ。
俺は自分の口下手を後悔しながら詩乃の後に続いたが、柚乃が意味ありげな笑みを浮かべていることに気がついた。
柚乃の傍に寄っていて、訊ねる。
「何か言いたいような顔してるな」
柚乃はふふっと笑う。
「別に。ま、頑張ってね」
それだけを言った後、柚乃はぱたぱたと小走りで詩乃の傍へ行き、肩を並べて歩き出した。
「言われなくても頑張りたいけどさ……」
俺はぼそりとつぶやいて、二人の後を追った。
歩道のない道を進み、俺たちはバス停に向かった。そこからシャトルバス乗り場の最寄りの停留所を目指す。
バス停に着いて、俺たちは少しの待ち時間をお喋りで潰した。ほぼ時間通りにやってきた路線バスに乗り込み、シャトルバス乗り場でも多少の待ち時間を過ごしてから、花火の打ち上げ会場にたどり着いた。
時計を見ると、打ち上げ開始までまだ間がある。
それならばと、双子たちがうきうきした様子で屋台やキッチンカーを眺め始めた。
俺は彼女たちを守る騎士でもあるかのように、二人にくっ付いて歩く。
戸崎と会ったのは、柚乃が気になる屋台を見つけて先に行ってしまった時だった。
彼は、ここに一人で来ていると言った。
俺にとっては、彼が誰だったかすぐには思い出せないような顔見知り以下だが、双子にとっては知り合いのようだ。こういうイベントごとに一人は味気ないだろうと気を回して、俺たちと一緒にどうかと彼を誘おうと考えた。
けれど、柚乃はそれを望んでいないようだった。俺たちが後を着いてきていないことに気がついて戻って来た彼女は、戸崎がそこにいると知った途端に困惑した顔となり、知り合いとは思えないほどよそよそしい態度で彼に接した。
「それじゃあ、戸崎さん、失礼します」
柚乃は無愛想に彼に頭を下げて、俺と詩乃を促してその場から離れた。
俺は双子の後ろを歩きながら、彼を誘わないで本当に良かったんだろうかと気にし続けていた。けれど、二人の華やかな浴衣姿に見とれる男たちの視線をけん制しているうちに、その気がかりに思う気持ちは薄れていった。
食べ物や飲み物を買い込んで、俺たちは河川敷に降りた。座るのにちょうど良さげな一角を見つけて、そこにレジャーシートを広げる。
花火の打ち上げが始まってしばらくたった頃、何気なく辺りを見渡した俺は、おやっと思った。戸崎がいたのだ。
家族連れや友人グループらがほとんどの中、彼は一人で夜空を見上げていた。俺が勝手にそう思っているだけかもしれなかったが、彼の立ち姿はどことなく憂いて見えた。
やっぱり気になって、戸崎に声をかけようと考える。
しかしそれを知った柚乃が、案の定、渋った。最終的には、この話を中断するかのように、ラムネが飲みたくなったなどと言い出して、屋台を目指して行ってしまった。ところが、途中で転んでしまう。
早く様子を見に行かなくてはと慌てる詩乃を止めて、俺は自分が行く、と立ち上がった。けれど、俺がそこへ行くよりも早く、柚乃の傍に駆け寄ったのは戸崎だった。
何か言葉を交わした後、二人は微妙に離れた状態で、屋台に向かって歩いて行った。
詩乃と二人になってしまい、俄かに自分の鼓動が気になり出したが、今それ以上に気になったのは、柚乃と戸崎の距離感だった。
「あの二人って、なんかあるのかな」
自分では心の中だけで言ったつもりだったが、実際には声に出していたようだ。それを聞きつけた詩乃に、どうしてそう思うのかと問われた。
俺は思ったことを素直に口にした。
それを聞き終えた詩乃は、俺の物言いを「淡々としている」と表現した。その意味を問う俺に彼女はこう答える。
「柚乃を取られちゃうかもしれない、とか思ったりしないのかな、って」
俺はきょとんとした。詩乃が何を言っているのか、分からない。しかし言葉を重ねていくにつれて、詩乃がとんでもない誤解をしていたことを知る。詩乃は、俺が柚乃を好きだと思っていたのだ。
ショックだったが、詩乃がそう思うことになった理由を聞いて納得した。これが柚乃の言っていた自業自得というやつかと、自分自身を恨めしく思いながら、俺は詩乃の勘違いを訂正した。
これは告白のチャンスだったのかもしれない。けれど、話の切り出し方に迷い、ぐずぐずしているうちに、詩乃は無邪気に「俺の好きな人」について質問を投げかけてきた。
それはお前だとはっきり言えない俺は、詩乃に問われるがままに答えていく中に、真実を紛れ込ませことしかできなかった。
まぁ
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ばたっちゅ
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#一次創作?二次創作?いやわからん!